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2014年11月25日22:16

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今年も選んでみました

  順位を決めるということに意味があるか、と問われれば、今の自分にとって満足のいくものはこういう状態だった、ということになる。毎年書いていることだが、この順位はもしかしたら後日変更するかもしれない。ただ、今の自分にとって見るべき価値のあった作品を並べるということは、映画に対して正直であり、自分に対して厳しくあるべきであり、作り手の皆さんに精一杯の敬意を表することである。

 昨年の12月から今年の11月公開作品の中から選び出した邦画10本。

 2014年度ベストテン

 1  渇き。

 初めて見た時のどうしようもない不愉快さ。その後に湧き上がる切なさと純な美しさ。愛情を暴力でしか表現できない男は滑稽なほどに周囲の人々を傷つけ、それ以上に自分を傷つける。正義も悪も蹴散らし粉砕する役所広司は等身大のゴジラか。・・・役所さんにはこの役と「蜩の記」の二作で主演男優賞もお贈りしたい。どちらかしか見ていない人はもったいない。うまい魚は身を食べるだけではなく皮の方も食べなければ真価はわからないというのに。

 2  TOKYO TRIBE

 もしかしたらこちらを1位にするべきかもしれないと、いまだに悩みながら(笑)日本映画のみならず世界を見据えたエンタテインメントが誕生した。作品の世界観やキャラクターには目新しいものはないが、ラップミュージカルバトルアクションSFコメディというジャンルによって映画は古い酒を新しい革袋に入れることができた。贅沢なキャスト、スケールの大きなセット、生のアクション、自分が観たい映画を作れる数少ない監督、それが園子温だ。というわけで最優秀監督賞。

 3  円卓 こっこ、ひと夏のイマジン

 主演の芦田愛菜のみならず、周りの子供たちのすばらしいこと。大人の社会と適度な距離感を保ちながら大阪の町で呼吸している姿はエネルギッシュだ。言葉とイマジネーションというテーマの深さに少女こっこの苦悩がかぶさる。悩め、少女よ。社会や人生の不条理は悩むことでしか解決できない。

 4  日々ロック

 油断した。まさか泣かせに来るとは。それを卑怯だとかあざといとか薄っぺらいというかもしれないが、相変わらず邦画界に蔓延する「難病純愛もの」「死んでもそばにいますよもの(笑)」と比べれば、歌うことしかできない馬鹿の物語は限りなく愛おしく、その過剰な演技は滑稽を通り越して切ない。

 5  福福荘の福ちゃん

 なぜ女芸人が独身男の役を、という疑問を一気に吹き飛ばすオープニング(「ピンチヒッターだ」)に爆笑!優しく誠実な男福ちゃんを描くためには男優ではだめなのだ。今年度最も強くてたくましい男の中の男、福ちゃんを演じた大島美幸さんに本当は主演男優賞をお贈りしたいが、やむを得ず主演女優賞。

 6  0,5ミリ

 3時間を超える作品を寸分の狂いなく演出しきる安藤桃子監督の才能に脱帽。坂田師匠の神のような演技に脱帽。安藤サクラの全身から出る聖女性とエロスに脱帽。

 7 そこのみにて光輝く

 社会の底辺で蠢く男女の切ないばかりの物語の中で、菅田将暉さんのキラキラした瞳が違和感を持つほどに魅力的。菅田さんの瞳の輝きに助演男優賞。

 8  紙の月

 テレビ版の方がよかったという意見も多いが、メディアの違いを比べても仕方がない。宮沢りえの、「お金を使えば使うほど輝いてくる」演技はゾクゾクする。小林聡美さんのお局役はこれくらいできても驚かないほどにハマり役過ぎて最高。ということで小林さんに助演女優賞。

 9  大人ドロップ

 やたら露出の多くなった3人、池松壮亮、橋本愛、前野朋哉。これからの日本映画を支えていくであろう彼らの活躍は本当に楽しみ。しかも仕事を選んでいるところがうれしい。若さを演じられる時期は本当に短く、その一瞬の記憶に立ち会えることが映画を見る喜びでもある。

 10  私の男

 二階堂ふみの体当たりの演技はここまできたか。流氷のきしむ音、滴る血の雨の音、印象的な音を重ねながら息をひそめて愛し合う男と女の美しさ。隠れて生きているはずの彼女がなぜ一流企業に就職できたかなど、原作の持つ矛盾が気になってしまうのが残念だったな。

 ほかに
「白ゆき姫殺人事件」「祖谷物語 おくのひと」「野のなななのか」「WOOD JOB 神去なあなあ日常」「1/11 じゅういちぶんのいち」「小川町セレナーデ」「銀の匙」「小さいおうち」「東京難民」「ぼくたちの家族」「サンブンノイチ」「るろうに剣心 伝説の最後編」
 など順不同。

 脚本賞は「白ゆき姫殺人事件」で原作を超えた脚色をしてくれた林民夫さん。「永遠の0」とあわせて。

 技術賞は「渇き。」のざらついた画面と緩急自在なカメラワークで疾走感を楽しませてくれた阿藤正一さん。

 特別大賞は純粋に感動させてくれたドキュメンタリー「夢は牛のお医者さん」。

 素敵な映画をありがとうございました!
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