mixiユーザー(id:429476)

2013年04月06日16:07

23 view

知られざるプライベートコレクション ジャパン・ビューティー 描かれた日本美人 前期

ニューオータニ美術館で開催中の『プライベートコレクション ジャパン・ビューティー 描かれた日本美人 前期』に行きました。チケットは毎度お馴染み新聞屋さんからの貰い物。
フォト

↓以下、ニューオータニ美術館HP
http://www.newotani.co.jp/group/museum/exhibition/201303_beauty/index.html

私、あまり、物事・・・特に表現モノに関しては、人に勧めたりはしないのですが(個人の趣味があります故)、コレは良かった!!人に勧めたくなる美術展。前期展示が良かったので、後期展示も行こうかな?と思っております。
上村松園などメジャーどころもあるんですが、私が嬉しかったのは、大正デカダンの画家たちの絵!いや、分かってるんですよ。分かってるんです。大正デカダンの絵って、ようは、大正時代に咲いた徒花です。耽美、頽廃、エロティック、グロテスク。こういう絵は、時代と密接にへばりついていて、忘れられてしまう。それでも私は、どうしたって、こういう画家たちの、大正的耽美頽廃美に彩られた極彩色の悪夢のような絵が好きです。
甲斐庄楠音(私の大好きな画家)に、橘小夢に、島成園に・・・。ついでに、高畠華宵まであるのですよっ。あぁ、目くるめくかな、大正デカダンス。
他にも、美しい美人画目白押しでした。流行の美人画のタイプも分かって面白いよ。

では、暫し、美女と旅するデカダン耽美旅。ご一緒に。檀蜜も吃驚なエロイお姉さんもいるよっ!

私ゃ、知らなかったのですが。何でも、明治大正〜戦前の、朝比奈文庫が持ってる、纏まった形では公開されたことのなかった美人画を紹介・・って言う趣旨だったようです。

まずは、高畠華宵がご機嫌伺い。『梅花娘』。可愛い〜。私の大好きな華宵さんの絵ですね。私は、華宵さんは挿絵の方が好みなのだケド、こうして観ると日本画も良いものですね。
梅を見上げる少女。島田に結いあげた髪に、紫の花丸模様の振袖。三和土の上には、鼻緒が赤い黒下駄が置いてある。粋ですな。少女は何処かおすまし顔。

三木翠山 『蛍狩』。空色の着物を着た女性が無心に蛍を追っている。手には団扇。着物が肌蹴、素足が見えているのが、なかなかに色っぽい。でも、本人は無邪気なんだな。

吉川観方 『七夕の宵』。母と子供。母は座り、手には百人一首の教科書を持っている。藍色の着物を着て、松に雁の絵柄の扇子も持っている。子供はその横に寝転がり、筆を持ち、字を書いてるようだ。子供のそばには硯。お母さんが子供に百人一首を教えているのかも。
この吉川さんは、戦後風俗資料展の開催や、映画の時代考証などで活躍した方だそうな。

池田蕉園 『まつむし』。少女漫画チックな顔なんだぁ〜。縁側の柱にすがり、手に扇を持った少女。顔は憂い顔で物思いにふけっている様子。恋人を待っているのかも知れない。池田さんは1901年に水野年方に入門。松園と並ぶ女性作家として注目されるも、早逝。挿絵の仕事も多くやっていて、夢二に影響を与えた画家なんだって。物思いにふける少女の絵が得意だったらしく、この辺り、夢二が気に入った理由かも。
隣りにライバル(なのかな?)の上村松園の『夏の美人』の絵が飾ってあった。比べてみると、松園の方が、スッキリした絵柄なのね。潔癖って言う言葉が正しいかも知れない。

島御風 『時雨』。傘をさすモスグリーンの着物の美女。下駄には爪掛がかかっていて、顔はちょっと嫌そうにしかめている。そのちょっと嫌そうな顔が、まぁ、なかなかにエロイ(笑)。おそらく、雨降りの外出が嫌なんだろう。島は妹の日本画家の島成園の進めでこの絵を描いたんだそうな。そしたら文展に入選。包装紙の図案(今で言うグラフィックデザイナーだね)や、新聞小説の挿絵などを手掛けたらしい。本業はグラフィックデザイナーだったみたいだケド、日本画も上手かったってコトみたい。

上村松園 『桜可里の図』。私、松園の絵って、そんなに好きではないのですが、コレは良かった。可愛い。金の波濤文様の幔幕を上げて、その中から顔を覗かせる少女。その少女は、桜吹雪にうっとり見とれたのか、金の扇子を取り落している。少女が着ている梅に鶯の着物が春らしくて、とても良い。桜の花弁の表現も繊細で、流石は松園ですね。

紺谷光俊 『桜狩之図』。もう1点桜狩の絵をば。菅笠を右手に持ち左手には桜の花を持ち、無造作に肩に担いでいる。海老茶の着物が粋。どうやら江戸初期の遊女を描いた絵らしいのだが、顔が妙に白っぽくて生々しく、この辺り、デカダン風味だよね・・と。松園と並んで飾ってあるのだが、比べてみると、同じ桜狩りの題材でも、作家によって、こうも違うのか・・と良く分かる。

三木翠山 『紅化粧』。右手に手鏡を持ち、髪の結い方を気にする美女。新婚の新妻らしい。襟足が見えて、その襟元に、緋色の襦袢が少し見えるチラリズム。とても色っぽく艶めかしい。ちょっと部屋をのぞき見したような、ドキドキ感があるよね。

さて。美人画の絵の題材。芸妓が大層人気だったとか。で、この頃女流画家も増えるんだが。何でも、お金持ちのお嬢さんなどが、華道や茶道、香道をたしなみ、師匠になるような人まで出て来た。で、稽古事に絵画を学ぶ女性も増え、それで女性画家も増えたんだそうな。最初は教養の一環だった・・ってコトだね。

島成園 『舞妓』。舞妓さんも人気画題だったみたい。大正デカダンスの趣き。櫛、笄、簪をてんこ盛りにした髪。大輪の牡丹があしらわれた帯。浮世絵版画の文様が描かれた黒字の着物。顔は妖艶に微笑んでいる。なんでも成園は、徳川末期の妖艶な女性像を好んで描いたとか。うわぁ〜おキスマーク、これぞ、大正デカダンス。大正が見せた夢幻耽美世界。
この方、女性なんだよね。今いたら、私と友達になれたと思うぞ(笑)。

そして・・・。。出たあぁぁ〜!!甲斐庄楠音。まず、殆ど人は「誰、その人?」で、この名前を正しく読める人は少ないと思います。これで“かいのしょう ただおと”と読みます。大正デカダンの絵と言うと、私は、真っ先にこの人の描いた絵を思い出す。
楠音は、男性です。ただし、『肉体的性別』が。この人の内面は、女性なんですね。今で言うとオネエってコトかな?ちょっと違うかな。デカダン色の強いオネエ・・みたいな。この人、おそらく、自分が女性になりたかったのです。女装して彼氏と撮った写真が沢山残っていたりするんだよ。で、女装した自分をモデルに、絵を描いたりもしていた。ナルシストでもあったってコトだね。この辺り、大正デカダンっぽい〜って思う。で、描く絵が気持ち悪いんだ!(ごめん、楠音) でも見ちゃうの。気持ち悪い、でも見ちゃう。この感覚。初めて美術館で見て、この感覚を不思議に思った私は、彼のコトを調べたのでありました。その時点で、私は既に楠音の魔に憑りつかれていたのでしょう。女になりたかったのに、自分は女ではなく、そのなりたかった女の絵を描く楠音。描いた時には、きっと、楠音は、その絵の中に、自分がズルリと入っていたはずだ。

でも、今回展示してあった『娘道成寺』は、晩年の作らしく、濃艶なデカダンさは消えている。それでもやっぱりおかしいよ。道成寺の衣装を着た娘。金の烏帽子に緋色の着物。振り返っているその顔は、白塗りで、やはり、ちょっとグロテスクだ。何かに驚いているのか、吃驚している顔にも見える。
楠音は、映画監督・溝口健二氏の映画の衣装や、風俗考証もしていました。ここも私にはポイント高し!の点なんだ。溝口健二って言ったらねぇ〜。耽美幻想を思い出すよねぇ〜うふふふふ〜。同時に赤江瀑(耽美幻想文学者)の小説も思い出す。
楠音の画集が求龍堂から出ていて、買おうかどうしようかまだ迷ってんだよね・・・。

井江耕宗 『海水浴』。海。手ぬぐい鉢巻で遠泳する少年。手前には、明治〜昭和初期に流行したシマウマ水着(ストライプ柄の体操着みたいな水着)を来た少女。児童雑誌では、こういう挿絵を良く見るケド、この掛け軸って・・・(^_^;)。床の間に掛けづらくないか、コレ?井江は、挿絵画家としても活躍していたそうなので、それでこの絵を描いたのかも知れない。

日本女性は慎み深いコトが美徳とされていたケド、生身の女性として葛藤する題材も人気になった。井原西鶴の文学などの葛藤する女性が画題として人気だったみたい。又、モガ(モダンガール)のだいとうなどもあり、化粧する女性の姿は、女性のプライベートを垣間見るような感じもあって、これまた人気の画題だったそうな。化粧は西洋絵画でも人気の画題だもんな。のそき見気質が皆あるんだろうね。

栗原玉葉 『朝妻桜』。寛永の吉原遊女の朝妻。クリスチャンだった彼女は、当時のキリスト教迫害により捕えられた。朝妻は「桜が開花してから処刑されたい。」と願いでて、その願いは聞き入れられる。桜が咲きハラハラと散る中、儚げに佇み俯く朝妻。黒地に龍と牡丹の柄の着物。赤い鹿の子帯。そして、首からはロザリオがかかっている。おそらく、朝妻はこれから処刑されるのだろう。この絵は、展覧会のポスターに使われていました。(前述の写真のやつね)
玉葉自身、長崎出身で、熱心なクリスチャンだったそうです。その関係もあって、この画題を選んだのかも。

橘小夢 『お染』。濃厚な色気のある娘。流し目をして、着物の裾からは素足が覗く。手を組んで頬にあて、品(しな)をつくっているようにも見える。小夢さんは、妖艶で頽廃的な画題を多く描き、『日本のビアズリー』と呼ばれていたとか。確かに、顔の表情とか、ちょっとビアズリーっぽいかも。最初は、夢二に憧れ、夢二っぽい絵を描いていたそうな。品を作ってるのはその影響かも。

増原宗一 『いれずみ』 浴槽に入る刺青を入れた美女。長い髪をほどき、湯船に入っている。背中に赤い炎の刺青が見える。不動明王が描かれているんだろうか?妖艶な美女はニヤリと挑発的に笑っているようにも見える。宗一は、小夢同様、耽美的で怪異な美人画を作成していたそうな。あぁ、大正デカダンよ〜。

寺島紫明 『夕粧』。やっと松園と並ぶ一般的知名度の高いメジャー画家登場ですな(笑)。手鏡を拭く女性。藤色の着物。透ける様な白い肌。色っぽいし美しい。今までのデカダン画家たちとは違って、清潔感がありますね。やっぱり。

非常に濃密な空間で、デカダン美女に囲まれてウハウハでございました。

お土産は、ポストカード5枚。他にも、夢二の絵があったりします。
大正耽美頽廃美がお好きな方(それは、私です!)、美女に囲まれたい方、珍しい美人画が見たい方は、行ってみるのも一興かと思います。
前期は4月21日まで。後期は4月23日〜5月26日までです。

ホテルニューオータニから外に出ると、弁慶濠に桜が!
フォト

あまりに美しかったので、写真に撮ったケド、せわしなく働く東京のビジネスマンやOLは、少しも立ち止まらず、チラ見すらしていなかった。てか「ここで何写真撮ってんの?」って顔をされた。
桜くらい、見ようよ〜。桜に妖艶な美女!う〜〜〜ん。デカダンっ!
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2013年04月>
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930