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2009年10月18日18:59

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ベルギー幻想美術館

Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の『ベルギー幻想美術館』に行きました。

今回の絵画展。姫路市立美術館からお借りしたモノだそうですが、日本にこんなに沢山ベルギー象徴派の絵があるって私、知りませんでした。
何でも、姫路市とベルギーのシャルルロワ市が姉妹都市の為、それが収集のきっかけになったとか。

ベルギー象徴派。もう、面白さん大集合ですね。妹を愛しすぎた極度のシスコン(クノップフ)、母親に溺愛され過ぎた為、歪んだ女性のイメージを植えつけられてしまった男(デルヴォー)、レスビアンをやたら絵画のテーマに入れる、エロティシズムの画家(ロップス)、幼児性愛者(所謂、ペドフィリアね)の男(フレデリック)。乱れた生活が嫌で、スーツを着て絵を描く男(マグリット)、怒れる仮面の画家(アンソール)・・・そんな面白さんが大集合の絵画展。で、そんな人たちが描く絵が面白くないワケないんだな、コレが。

でも、あんまり人はいなかったなぁ〜。平日に行ったからかも知れない。結構狙い目の美術展かも。

では、気になった絵をつらつら紹介〜。

ヴィクトリア・ドグーヴ・ド・ヌンク『夜の中庭あるいは陰謀』。
夜。中世風の中庭・・だろうか?に黒い服の婦人が3人。いや。マントを着た男性かも知れない。3人は何か密談をしているように絵の中心に固まっている。遠近法が少し狂っているらしく、不安定な感じがして、それも不思議さに拍車をかける。
彼女・・・あるいは彼らは何かの陰謀を企んでいるのだろうか?

ジャン・デルヴィル『ジャン・デルヴィル夫人の肖像』。
青い絵の具で描かれた美しい夫人像。妻の安らかな横顔だ。
デルヴィルは、ブルイーヌという青色の顔料のみで絵を描いたりしていたらしく、コレもその1枚。神智学に由来して、青は信仰の色・・・なのだそうな。デルヴィルは、その信仰心から、真っ青に塗った部屋で瞑想していたそうだよ。

フェルナン・クノップフ『ヴェネツィアの思い出』。
美しい夫人像。パステルで描かれたホワホワした感じも良い。
クノップフは妹をモデルにするコトが多いケド、コレは妹さんではないらしい。ヴェネツィアで出会った女性でしょうか?

同じく、クノップフ『ブリュージュにて 聖ヨハネ施療院』。
水面に建物が映っている。どうやらこの建物は、聖ヨハネ施療院と言うらしい。今は使われていない施設らしいのだが。建物は上の半面までみっちり描かれていて、圧迫感があり、全体的に茶色の雰囲気も何処か『死』の匂いがする。
久しぶりに、こんなに死の匂いがする風景画を見ました。物凄く好みの絵です。ポストカードあったから買っちゃった。

ジョルジュ・ミンヌ『墓所に立てる三人の聖女』。茶色の彫刻。おそらく、聖書に出てくる3人のマリアの像だと思われる。しかし、ベールを深く被り、俯く3人は何処か不気味だ。

レオン・フレデリック『春の寓意』。三連祭壇画のような作り。中央に聖母子像。その横に幼き洗礼者ヨハネがいる。三連の左右には天使。バラの花で出来た縄(?)を持ち、聖母を祝福しているようだ。鳩もいるケド、コレは神の象徴だよね。
白い服を着たマリアが美しい。明るい感じで、聖母子と言うより、タイトル通り、春の寓意なのだろうな。フレデリックには幼児性愛趣味があったそうで、その趣味が、赤子のキリストや幼き洗礼者ヨハネに出ているんじゃないかってコトらしい。

フェリシアン・ロップスは版画や木炭画がかなり来ていました。ロップスは、ボードレールと交流があったらしいよ。デカダンでフェチっぽい絵も多い。全裸にガーターベルトのみをしている婦人像などもあります。この辺り、フェチっぽいかな・・と。
『誘惑』は、男女の絡みの絵なのだケド、その横に描かれている、羽の生えたチンコが面白い。さしずめ、チンコの天使でしょうか?アモルもいるので、コレは性愛の象徴だな。

同じくロップス『スフィンクス』は、スフィンクスに絡む女の絵。女の後ろには、現代風の服を着た悪魔がいる。悪魔は悪徳の象徴かも知れない。
ロップスは、レスビアン的テーマの絵も良く描くけど、スフィンクスも女性なので、コレもレスビアニズムがテーマなのでは?というコトらしい。

余談だが・・・。私、ロップスの絵を見ると、ど〜〜〜しても、丸尾末広氏の絵を思い出しちゃうんだ。今回来てた『サテュロスを抱く裸の若い女性(パンへの賛美)』は、全裸の女性が、サテュロス像となまめかしく絡んでいる絵だけれど、丸尾さんも、少年がお墓と絡んだり、そういう絵を描くよね?それでどうも、丸尾さんの絵を思い出すらしい。
このエロスとタナトスを一緒くたに描く部分において。
墓石とセックスするとか、石像とセックスするって、凄くエロティックではあるケド、同時に凄くタナトス的だと思いません?そういう部分が共通するかなぁ〜って。
でも、丸尾さんは象徴主義の絵は好きらしいケド、特にロップスについては何も言ってないんだよなぁ〜。でも、丸尾さんの絵には、ロップス丸パクリっぽい構図とかあるんだよ(^_^;)。

ジェームス・アンソール。アンソールはリトグラフがかなり来ていた。そしてやっぱり、アンソールの絵は面白い!
『天使と大天使を鞭打つ悪魔』とか、凄くパンキッシュな絵。タコのようなモノはいるし、魚のお化けっぽいのもいるし、正直、どれが、悪魔か天使か分からん!(笑)

同じくアンソール。『キリストの生涯』という連作が来ていたのだが、その名の通り、キリストの生涯を描いたモノなのだが・・・。『聖家族』がスゲエ!どう見ても、魔物!(爆笑)聖家族になんてちっとも見えない。皆化け物です。こういう発想力はアンソールだよなぁ〜。
後期の絵は美しいケド・・・やっぱりパンチはないんだは。

マグリットも来ています。想定外の組み合わせをする“デペイズマン”という技法(画法かな?)で描いているそうな。
“マグリットの捨てた子たち”という連作が来ていたのだが、それの『困難な航海』が面白かった。白い棒状のモノ・・・ビルボケという西洋剣玉らしいのだが、それが白目の目玉オヤジみたいなんだよ(^_^;)。何だろう、この不思議ヴィジュアル。

逆人魚(上半身が魚で下半身が人。つまり半漁人ね)もいて、面白いシリーズでした。

さて、ポール・デルヴォー。私が大好きな画家です。
デルヴォーの描く女性は全員目がデカくて、マネキンみたい。どうやら、遊園地で見た、裸体の婦人人体模型が、デルヴォーの記憶にあり、それが絵の元になってるみたい。
デルヴォーは、お母さんから「女は男を堕落させる悪魔だ。」と教えられる。それは、当時流行していた性病から、子供を守る為だったらしいのだが、それを言われ過ぎ、又、母親に溺愛され過ぎて、女性観がちょっと歪んでしまったようなのです。しかし、それが絵には非常〜に神秘的な良さを残しているのです。

『女帝』。美しいケド、威風堂々とした女性像。物凄く強そうだ。デルヴォーのお母さんのイメージなのかも知れない。

『見者』。今回、私が1番気に入った絵。全裸の美少女が画面中央にいて、こちら(鑑賞者側)を見ています。背景には月。そして神殿のような建物。美少女は美しい目をしているケド、どこか虚無的にも見えるし、見ていると、こちらの気持ちを見透かされてるような気分にもなってくる。そんな不思議〜な絵なのです。

『ささやき』 絹織物で、デルヴォが原画を描いている。6人の美女がいるのだが、角度によって、光り方が違うので見ていて面白い。

クロード・スパークの『鏡の国』のための連作も良かった。というか、私、このスパークさんの書いた物語自体が気に入ってしまった。

妻の死を悼んだ男性。死んだ妻の剥製を作る為、友人に依頼。妻の剥製が出来上がる。出来上がりは完璧だった。が、妻はいつまでも若く美しいまま、自分は年老いて行く。それに怒った男性は、台所の包丁で、妻(の剥製)を細切れにしてしまう・・・という話。どう考えても、私の好みの話である(笑)。

『海は近い』。今回の目玉絵画がコレだったみたい。
画面右にベットに寝る裸婦。神殿のようなところにいる。その横に青いドレスの美女。画面左には古代ローマ風の髪型の女性。その女性は、後姿の白いドレスの女性を引き止めているようだ。空には月。背景には海も見える。
これぞ、幻想絵画!みたいな絵でございます。
因みに、寝ている裸婦は、前述の遊園地で見た、人体模型の裸婦らしい。

美しいケド、どこか寂しげで、そしてやはり神秘的な絵。座って暫くボーッと眺めておりました。
デルヴォーの絵は、やっぱり好きだな。

お土産は、ポストカード6枚。

10月25日までやっているので、象徴主義の絵がお好きな方は行ってみて下さいませ。
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