ラクサンポ３３０

私の名前は川口民雄。子どものころから、周囲から浮いていた。学校の成績は低空飛行で、お情けで卒業させてもらった。小学校低学年のころからごく普通に生きられないと堪忍した。なんでみんなと同じことができないのだろうか。学校時代の運動会、学芸会、展示会、修学旅行で、周囲のクラスメートと同じ行動をとるのに、非常に神経を使った。仕事をいくつか渡り歩き、発達障害を支援するNPOで働いている。大人になって、検査を受け、結果で、読み書きはかなり厳しいことがわかった。発達障害当事者は別に努力して、普通に見せようとしても、無理である。例え給与は低くとも、暮らしていければ、文句はない。この仕事は自分に向いているようだ。発達障害トラブルシューティングが仕事になった。
ファミレス店内、貸し切り部屋に川口が入ってくる。すでに数人の元サクラの生徒が、来ていて騒がしい。佐々木稔と森井淳子が受付をしている。

川口
「やあやあ、皆さん、久しぶりだね。元気だった」

参加者男1
「えー、本当に来たぞ。先生の顔を見るとサクラを思い出すよ」

川口
「先生って、言うの、俺、好かないな。もう、君たちと教師と生徒の関係はないからな」

参加者女1
「そんな他人事にしないで欲しいわ。今日はサクラの思い出話をするんだから、固いこと言わない」

川口
「そうか。ありがとう。それなら、俺もサクラに居たときと、同じにするよ」

佐々木
「川口さんというより、おれたちにとっては先生だからな」

川口
「都合のいい時は先生。悪い時は呼び捨てか。そんなもんだ。俺をそうだから」

佐々木
「それでいいだんよ」

並木が来た。
森井
「お待ちしていました。懐かしいですね」

並木
「しばらくぶりですね。みんな元気だった」

参加者女2
「元気だから、ここへ来れたんですよ」

並木
「御免、御免。つい予備校講師時代の上から目線で言ってしまったわ」