ラクサンポ３１１

私の名前は川口民雄。子どものころから、周囲から浮いていた。学校の成績は低空飛行で、お情けで卒業させてもらった。小学校低学年のころからごく普通に生きられないと堪忍した。なんでみんなと同じことができないのだろうか。学校時代の運動会、学芸会、展示会、修学旅行で、周囲のクラスメートと同じ行動をとるのに、非常に神経を使った。仕事をいくつか渡り歩き、発達障害を支援するNPOで働いている。大人になって、検査を受け、検査の結果で、読み書きはかなり厳しいことがわかった。発達障害当事者は別に努力して、普通に見せようとしても、無理である。例え給与は低くとも、暮らしていければ、文句はない。この仕事は自分に向いているようだ。発達障害トラブルシューティングが仕事になった。川口が元同僚、並木女史とzoomで話合っている。
川口
「お疲れさまです。今日は相談があるんだ」

並木
「お疲れさんです。先週、依頼した教材作成外注の話ですか」

川口
「人が足りないので、だれか紹介してくれって、先週、聞いたんで。問い合わせなんだ。具体的にどんな内容か、聞きたくて。今、担当している相談者にバイトを紹介しようと思ったんだ」

並木
「そんな難しい内容でないの。音声教材を聴いて、間違いをチェックして欲しいわけ。だれか、心当たりが有るんですか」

川口
「発達障害の当事者で、一人で介護をしながら、仕事を探している男性だけど。そろそろ生活が厳しくなっている。助けられないかなと思っているんだ」

並木
「困っているで、ぜひお願いしたいなあ。文系は国語、社会の教材を聴いて、訂正場所を探す。理系は算数と理科のバーチャル画面を見て、やはり内容チェックをする仕事、できれば、年内に終わらせたいの」

川口
「今週中に、相談者へ話をふってみるよ。空振りだったら、御免なさい」

並木
「他にも、募集しているから、そっちもあるし。川さんの報告を待っています。これで退出します」　

川口
「ありがとう。こちらも退出します」