〜父から受け継いだ仕立て屋で、極上のカフタンを制作する職人のハリム。昔ながらの手仕事にこだわる夫を支えるのは、接客担当の妻ミナだ。25年間連れ添った2人に子どもはいなかった。積み上がる注文をさばくために、2人はユーセフと名乗る若い男を助手に雇う。余命わずかなミナは、芸術家肌の夫を1人残すことが気がかりだったが、筋がよく、ハリムの美意識に共鳴するユーセフの登場に嫉妬心を抱いてしまう。湧き出る感情をなだめるように、ミナは夫に甘えるようになった。ミナ、ハリム、そしてユーセフ。3人の苦悩が語られるとき、真実の愛が芽生え、運命の糸で結ばれる〜<公式HPより>
原題は『Le Bleu du caftan』、英題は『The Blue Caftan』で、ともに「青いカフタン」という意味。
フランス・モロッコ・ベルギー・デンマーク合作。
監督は『モロッコ、彼女たちの朝』のマリヤム・トゥザニ。
仕立て屋さんの話ということで、やはり私が期待するのは、仕立てていく過程での心理描写。
例えば、パン屋さんが舞台なら、生地をこねたり、発酵させたり、焼いたりって、愛の描写に使える工程が盛りだくさん(笑)
ゆえに、仕立て屋でもと期待。さあ、どうだった?
仕立て屋ハリムはミシンは使わない。すべて手作業だ。
さばききれない注文に、2人はユーセフという職人を雇うことにする。
ハリムがしばし通う大衆浴場。そこでは個室を望む。そして、ある男性をそこに招き入れ・・・。
ハリムはミナと結婚はしていたものの、実はバイセクシャルだった。
夫婦に子供がいないのも、そのためか?
ミナはその事に気づいていた。(結婚前から?それとも結婚してからわかった?)
ミナはハリムとユーセフが次第に親密になっていくのも察し始めていた。
同性愛はイスラム社会では違法。
カフタン生地の裁断をユーセフに教えるハリム。
生地の裁断=断ち切れない想い。
あと、ユーセフが、より糸を何度も作っていて、そこも良かった。
もろ、3人の感情(糸)のより合わせよね。
もっと、こんなシーンがあってもよかったな。
ミナは乳がんを患っていて、手術で切除はしたものの・・・どうやら癌が再発した模様。
食も細くなり、大好きな蜜柑を食べるのが精いっぱいに。
男たちの背中。ミナの痩せ細っていく背中。
ミナは死期が近いのを悟り、自分の気持ちに折り合いをつけなければと思い始める。
※予告編
https://youtu.be/V-zvNy4KCfM
ミナ「恐れず愛しなさい」
エンディングが、驚きのシーンとなっています。この監督、攻めてる!
戒律に逆らい、愛に従う。大好きだったあなたに敬意をこめて・・・。
そのシーンに込めた監督の想いに、感動しつつも、そんなことやって大丈夫?と、ちょっとこっちが心配になってしまったという。
伝統を守りつつも、個人の想いを尊重したい(すべき)ところでは、変えてもいいのでは?っていうことかな。
で、そこで終わるかと思ったけど、その後に、もう1つシーンがあって、気持ちが安らいだ。
短いそのシーンがあるのと無いのでは大違いだった。
淡々としているので、その世界に浸れないと、退屈に感じるかも。
性別や宗教をも超えた、人間同士の信頼が見事に描かれています。3.7☆
ログインしてコメントを確認・投稿する