mixiユーザー(id:12923117)

2023年06月22日15:09

210 view

『怪物』感想

〜大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っている。そんなある日、学校でケンカが起きる。それはよくある子ども同士のケンカのように見えたが、当人たちの主張は食い違い、それが次第に社会やメディアをも巻き込んだ大事へと発展していく。そしてある嵐の朝、子どもたちがこつ然と姿を消してしまう〜<映画.comさんより>

フォト


1回目観た時「これ、私、感想書けるんだろか・・・」ってなりました。
そういう時は大抵、また観に行けばなんとかなるんですが、今作に関しては、2回観ても掴めない不安があって、しばらく迷う日々。でも、モヤモヤを解消すべく、2回目観て来ました。

うん、行って良かった。なんとか掴めた。細やかな描写を拾い集めると、なんとか、自分なりに分かった気がしてきました。

危険・警告かなり内容に触れています。未見の方はご注意下さい。

まず冒頭。放火の犯人らしき人物が出てくる。なんで1回目では気づかなかったんだ、私。

3つのパートで構成されている作品。
湊の母親。担任の保利先生。湊と星川くん。

シングルマザーの湊の母親は、湊が結婚して家庭をもつまで、しっかりと息子を守りたい。
保利は、誤植を見つけることがたまらなく好き。恋人がいる。
湊は、幾度かこの台詞を言う「生まれ変わった?」「生まれ変わりたい」
星川くんは・・・学校では宇宙人と呼ばれ、いじめられている。

事故で亡くなった湊の父親はラガーマンだった。
「男らしくあれ」「男らしく仲直りだ」
でも、自分はそんな父みたいにはなれない。

湊は、いじめられる星川くんを守ってあげたいが、そうすると自分がいじめの標的になる。
2人でいる時は、楽しく遊んでいるのに、自分の中で隠されていた(自分でもよくわからない)感情があわや表に出てくると、逆に星川くんに冷たくしてしまう。

最近事故で孫を亡くした(轢いてしまった?)校長先生と湊がそれぞれ、ホルンとトロンボーンを吹くシーン。
校長先生「誰かにしか手に入らないものは幸せって言わない。誰でも手に入るものを幸せって言うの」
保利に「真実はどうでもいい」と言っていた校長。
嘘つきたちの懺悔は、象の叫び声の如く。

で、その音が鳴っているのを、正面玄関あたりで、1人の男子児童が気づき、同じ時、保利も屋上で耳にする。
このあたりも、上手かった。

※予告編
https://youtu.be/S3XB1sFhQiA

一番感動した演出は、秘密基地の列車が、嵐の中、泥に埋まってたシーン。
母親と保利が来た時、雨粒で窓の泥が少しずつ跳ねていて。
カメラは室内視線で、少しずつ外が見えて、キラキラと明るくなっていく。
それが、湊と星川くんの心に見えて、泣きそうでした。

是枝作品で何度か観た、あちらとこちらで並行に歩いていくっていうシーンも一応あったけど、かなり短かった。

その他気づいたところ
・飴もしっかり伏線があったね。
・その飴の保利の恋人のこの台詞「シングルマザーはモンスターペアレントになりやすい」が引っかかる。
・母親が学校に車で行き→バックして停車するをわざわざ2回描写。
・場面転換で使われる水路からの水の放流がいい。放火の消火的ニュアンスも?
・片方ずつ履くスニーカー
・猫の声が聞こえるとマンホールに耳をあてる星川くん。「ドッキリだよ」とその場では言うものの、後で見つけていた死体はおそらくその時の猫?そして、その猫は、星川くんの分身だったのかも?だからちゃんと火葬してあげたかった。
・星川くんが図工の時間にいじめられていた時、それまでも少し登場していた女子生徒が絵の具用の雑巾を湊に投げる。それは「星川くんを助けなさいよ!」という心からだ。その子は、ボーイズラブの漫画(小説?)を読んでいたので、2人の気持ちがわかっていたんだと思う。
・保利の金魚鉢の底で傾いていた金魚は、後半、お風呂場でぐったりしていた星川くんに重なる。
・星川くんの父親の家の庭での水やりの荒さ=DV
・星川くんの「品種改良」の作文。最初は間違いを正していた保利だったが、文章の先頭列が、湊と星川くんの2人の名前になっていることに気づく。
(2人から先生へのチャレンジ→気づけた先生拍手
・「怪物だ〜れだ」のゲームで、湊くんの額にナマケモノがあった時。
星川くんが「傷つけられても、何もなかったフリができます」っていうヒントを出して、湊が「ボクは星川くんですか?」って言うとこ・・・泣けた。
・星川くんが2回着ていた茶色っぽいパーカーのロゴが「WORKING CLASS」
これはどう考えても、是枝監督からケン・ローチ監督への何気なメッセージ!

分からなかったのは、最初の方で、湊の母親がコンビニに行くって出かけて、その時に、湊が勉強してて、消しゴムを床に落とすんだけど、持って帰ってきたら、まだその消しゴムを拾ってなかったっていうとこ。ん、どういうこと?

「怪物だ〜れだ」
私自身が思ったのは、自分の中の弱さ。
自分を守るため、誰かを守るため、立場を守るため、世間体を気にするあまり、ついてしまう嘘。
また他者への想像力や思いやりの欠如。
う〜ん、こう書いていても、ちょっと完全にはピンときてないな。

終盤「出発の時が来た」
この時にかかる坂本龍一さんの曲が素晴らしかった。

ラストシーン、線路へと続く道。以前は立ち入り禁止と書かれていた柵があった。
だが、最後に2人が、緑の中、笑顔で走ってきた時には、その柵は無かった。
やっと自由になれた・・・。

2回観て本当に良かった。いかに脚本が巧妙に作られているかがわかった。
カンヌで脚本賞を受賞したのも、納得。
審査員たち、1回観ただけで、この脚本の素晴らしさが理解できたっていうのが、凄い。
是枝監督の演出も素晴らしかったが、いつもの’考えさせてくれる間’が今作ではあまり感じられなかったのがやや残念。

好きかどうかは別として、綿密に考え抜かれ、とことん細部までのこだわりが感じられた見事な作品でした。4つ☆

書き終わってから見つけた記事。くっ、悔しい、ここまでは読めなかった人差し指(下)
https://news.yahoo.co.jp/articles/c7cd2a46d8e36d32d64238d62da8d9f7fd33127f?source=sns&dv=pc&mid=other&date=20230621&ctg=ent&bt=tw_up
6 14

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2023年06月>
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 

最近の日記