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2023年07月08日16:05

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ソングの哲学

ボブ・ディランが書いた初のエッセイ『ソングの哲学』を、けっこう前に読み終わったけどやっと感想。

様々な音楽に精通していて記憶力が高いディランが66の曲を選んで、解説し想いを自由に馳せている本です。
ディランのことだから、さぞやマニアックで聞いたこともないフォークソングが中心かと予想してましたが、どちらかと言うとディランが若い頃にラジオで聴いたような曲がチョイスされていました。ポップス、ジャズ、ロック、カントリー、ブルーズ、R&B、ソウルなどなど多岐に渡りますが、以外にもフォークはピート・シガーの一曲だけ。(もっともマニアックなのは変わりなく7割ぐらい聴いたことない曲だぜ)。

選曲も語り口もディランがDJをやっていたラジオ番組『テーマ・タイム・ラジオ・アワー』を思わせます。ラジオの方がユーモアがあって、エッセイの方が狂気とポエジーを強く感じる。
怖ろしいのは名曲の言外にあるその曲が成り立つ下部構造への分析と洞察で、社会や文化、宗教、経済、政治、犯罪、戦争、恋愛、人間関係への考察は唸らされる。
例えばジミー・リードはエレクトリック・ギターを弾いてるシカゴ畑のブルーズマンだけど、全然シティ・ブルーズじゃなくてカントリー・ブルーズが本質だ、といった指摘はさすがとしか言い様がない。
(もっとも言いがかりでは?うがち過ぎでは?と首を傾げる部分もありますが、そこも含めて名人芸なのね)。

ドキッとしたのはエドウィン・スターの『黒い戦争』の解題で、プロテストソングを歌っていた若い頃のように戦争への怒りをぶちまけていて『戦争の親玉』を書いたディランは健在だな、と嬉しく思ったのですがその一文はこんな風に結ばれている。
「戦争犯罪人の顔を見たければ、鏡の前に立てばよい」。
ディランの名曲『ライク・ア・ローリング・ストーン』は没落した特権階級のミス・ロンリーを6分以上にわたってこき下ろしている歌詞なのですが、聴いているまたは一緒に歌っているうちに、ミス・ロンリーとは自分のことだ、と気づく。
『戦争の親玉』は武器商人や軍需産業を辛辣に批判している曲なのですが、この曲に関してそんな風に考えたことはなかったな。『戦争の親玉』は自分かもしれない。

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