mixiユーザー(id:14438782)

2022年04月03日10:27

101 view

『鎌倉殿の13人』第12回「亀の前事件」

 冒頭の北条家の面々がそろって阿野全成と真衣の婚礼について話している会食のシーンで、小栗旬は本当にもぐもぐ食べているけど、大泉洋は口に入れている仕草だけで実際には食べてはいないっぽい。それ以外は箸もつけてもない感じ。食事のシーンは撮り直したり、まとめて撮ったりするので意外と按配が難しいらしいけど、小栗旬なのにイケてない雰囲気を出すために、いろいろ工夫を凝らしているのだなと思った。

 その後、大江広元ら中央から下向してきて幕府に仕えた人たちのお披露目があったけど、あの当時に京都から鎌倉にやってくるのは、霞が関から途上国に顧問として招かれるようなものだろうか。やり甲斐はありそうだけど、政策どころの話じゃない可能性もあるし、それを受け入れて来た彼らの事情は気になる。いずれにせよ、大江広元はおそらく今後のキーパーソンの一人なので、目が離せない。この回でも、なにかあるたびに彼のアップのカットがインサートされていたし、最後はなにか意味ありげに頼朝に言おうとしていた。

 佐藤二朗の比企義員がずっと出てこなかったのが不思議だったけど、今となっては急に出しゃばってくる感じがほしくて、あえて出してなかったのかもしれない。比企は頼朝以来の乳母人脈で鎌倉に食いこんできたので、それまでの武闘派と軋轢は想像できる。実際、上総広常に食ってかかられていた。義員は矢に自分の名前を書き入れていたけど、そこに負い目があるという描写だったかもしれない。

 血縁関係と生産や政治の単位が切り離されていない社会では、子どもが経済的および政治的資産を引き継ぐことになるから、その子を誰が産むのか、ひいては誰が為政者と性的関係を結ぶかが、きわめて重要なイシューとして浮かび上がってくる。
 今回の亀の前の事件については、そうした事情を背景にしているので、単に女癖の悪さといった問題にとどまらない。さらに、そこへ関わる人間の打算や下心やよかれと思って施した拙い対策が、ことをどんどん大きくしてやがては収拾のつかない事態を招く様子が活写されていた。
 状況をコントロールできると思っていじくりまわしているうちに、実は手に負えなくなっているというのはよくある話で、いまウクライナで起こっていることの一端もそう言えると思う。第一次世界大戦も第二次世界大戦もそうだし、20世紀初頭の日本の中国侵略もそのパターンに収まるはずである。

 さらに牧宗親や牧の方(宮沢りえ)が、自分たちの軽率さを棚に上げて、もともとは頼朝の浮気性が招いたことだとねじ込んでいたけれど、そういう小賢しさも、よく見られる光景といえる。
 ちなみに悪だくみをしてほくそ笑んでいる宮沢りえはなかなかいい。『太平記』の可憐でちょっとふっくらしていたころと比較すると、「いろいろあったもんなあ」と感慨深い。

 今回、結果として実際に起きたのは牧宗親の髻を切られただけではあった。現代人には解釈が難しいシーンだったけれど、演じるのに手練れの俳優がそろっていたので、そこで作られた雰囲気からそれが彼らにとって重大な意味を持つことは伝わってきた。
 結局、この騒動はなぜかキレだした北条時政に一同が唖然となって、有耶無耶になるが、これからの内部抗争においては、本当に命のやりとりになってくる。このエピソードはこれから起こることを事前に細かく解説して、本番への下準備を徐々に整えている過程ともいえる。

 最後に頼朝演じる大泉洋は呆れたような困惑したような表情で、「なんとかせえ」と義時に丸投げしていたけれど、今回も比企尼に甘える様子や、牧宗親や義経を追求する時の権幕、焼けた亀の屋敷を目にして呆然とする様子など、いろんな面を見せながらそれぞれ説得力があって、複雑で捉えがたい性格が伝わってくる。

 ラストは上総広常がかくまっている亀の前のことを「ああいう女は苦手だ」と言っていたけど、結局、取りこまれてしまいそうに見えた。政子には「顔がうすい」と言われていて、江口のりこなので本当にそうなのだけど、そういう女が妙にだらしなくて男をとっかえひっかえくわえこむ感じは、それなりにリアリティがあってキツいけれど目が離せない。

1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2022年04月>
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

最近の日記