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2022年02月11日06:58

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ある夏の日

ある夏の日。

久々に日没前の終業
帰りの車で窓を開けると
不意に流れ込んできた
ヒグラシの声

知らぬ間に訪れていた夏

夏の詩人は罪深い
なけなしの心さえ
奪いにやってくる

命の終わりの
精一杯の恋の歌

甘い文句に誘われて
引きこもった心が
声の方へと駆けてゆく

待ち人 旅人
出会い 別れ

蝉時雨降り注ぐ林間は
まるで駅の雑踏のよう

命のバトンを繋ぐ
乗り継ぎ駅は
発車の準備で忙しく

列車には沢山の荷物が
積み込まれてゆく

荷物の中身はきっと
希望なのだろう

多くの者が
幸福と繁栄を求めて
上りターミナルを
目指している


でも、やっぱり…
ふと我に返る


わたしは最終駅でいい
ローカル線下りの最終駅

乗り継ぐことも
乗り捨てることもない
最果ての最終駅でいい

自分が最後 自分で最後

すべて ここで
終わり

別に 拗ねても
いじけてもない

ましてや
滅びの門は広く 命の門は狭く
だなんて

なにが正解なんて
わからない

けれど
一緒に行くのも
なにか違うと思う

強いて言うなら
趣味の違い

それぞれに違う景色が
待っていて
それぞれがきっといい
景色自慢はもううんざり

人にうんざりするのも嫌
いつも人恋しいままでいたい

大地の匂いを嗅ぎ
空を仰いで
自然が奏でる音楽を聴き
もっとシンプルに考えたい


…というふうなことを、
むかし彼女が言っていた。

こうしてぼくは
フラれたけれど

今でもときどき
彼女のことを
思い出す

何処にいたって 誰といたって
遠くの彼女より近くの他人
なのだけど

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