mixiユーザー(id:5456296)

2020年07月24日17:41

8 view

日本は海を守る独立機関創設を 東海大学教授・山田吉彦

 下記は、2020.7.23 付の 正論 です。

                記

 平成7年、「海の日」は、海の恩恵に感謝し、海洋国である日本の繁栄を願い制定された。以来、25年がたつが、日本を取り巻く海の情勢は、厳しさを増すばかりだ。北方領土返還交渉は遅々として進まず、竹島は奪われたまま韓国による支配体制が確立されている。北朝鮮の暴走は止まらず、軍事的脅威に対する備えを怠ることはできない。そして、日本の周辺海域には、中国の警備船や調査船が徘徊(はいかい)し、中国の海洋侵略は、許容範囲をはるかに超えている。尖閣諸島では、まさに最後の一線を越えようとしているのだ。

 ≪自由の港、香港も脅かされ≫

 海洋の危機は、日本の周辺海域だけにとどまらない。わが国と諸外国とを結ぶシーレーンでは、南シナ海の人工島しかり、中国の海洋侵出の横暴がまかり通り、国際秩序は崩壊している。

 中国は、国際社会が、新型コロナウイルスへの対応に追われる隙を突き、海洋支配を迅速に進めているのだ。特にアジアの海洋安全保障情勢は、極めて危機的な様相を呈している。

 その動きは、アジア経済の中枢である香港に対する支配の強化に表れている。中国政府にとって、香港国家安全維持法は、香港における民主化阻止だけでなく、アジアにおける海洋支配を通じ、一帯一路による「中華思想」の完成の布石でもあるのだ。

 香港は、英国から中国に返還された時には、世界一のコンテナ取扱量を誇っていた。しかし、中国は、そのコンテナ埠頭(ふとう)の機能を隣接する深センに移し、今や深センは世界3位となり、香港は世界7位にまで後退している。

 英中間で、返還時に50年間維持すると合意された一国二制度により、香港は自由主義の港として維持されるはずだったが、もはや中国に取り込まれてしまった。香港国家安全維持法は、中国共産党の意に反する思想を持つ者を処罰の対象とする。この法は、国籍を問わず香港の港を利用する船舶や乗員にも適用される。

 また香港籍船も中国による制約を受けることになる。中国は、世界4位の船籍を保有する香港を取り込むことで、世界全体の14・7%の船籍を保有し、海運世界に多大な影響力を持つ国になるのだ。

 ≪海洋大国、日本への期待≫

 また、港別コンテナ取扱量の世界ランキングでは、上位10港の中に1位の上海をはじめ中国の港が7カ所入っている。南シナ海の沿岸で最大の香港の港が、中国に支配されるとなると、南シナ海の通航船の多くが、中国の港に出入りすることで影響下に置かれる。「中国の港を使う船は、中国が守る」という論調で、米国の行う「航行の自由作戦」も大義を失うことにつながるのだ。

 このような中国の海洋侵出に危機感を持った米国のポンペオ国務長官は、中国による南シナ海のほぼ全域にわたる海洋権益の主張を「完全に違法だ」として、中国が国際的な規範を逸脱して動き出したことを糾弾した。さらに、「中国が南シナ海を自らの海洋帝国として扱うのを、世界は許さない」と述べ、海洋秩序の維持に向けて対決姿勢を明確に打ち出し、南シナ海における中国の人工島建設等の侵出を認めない仲裁裁判所の判断の順守を求めた。

 しかし、米国は仲裁裁判の根拠である国連海洋法条約を批准していない。また、米国が支援するフィリピンのドゥテルテ大統領は、仲裁裁判所の決定を棚上げし、中国との海洋資源の共同開発を進める可能性に言及している。米国といえども域外国が、南シナ海情勢を把握することは難しい。

 アジアの問題は当事者であるアジアの国々で解決に向け動かなければならない。とはいえ、ASEAN諸国と中国の間で話し合われていた「南シナ海行動規範」の議論は、宙に浮いたままだ。その間に、香港情勢が一変し、中国側はさらに強気になっている。アジア各国は、海洋大国である日本の安全保障への貢献を期待している。

 日本政府は平成19年に海洋基本法を制定した。その第3条では、「(海洋)安全の確保のための取組が積極的に推進されなければならない」と規定している。法の下、政府は動く必要があるのだ。

 ≪海守ることは国家存続に≫

 自民党の外交部会などは香港国家安全維持法を非難する決議をまとめた。同党の「日本の尊厳と国益を護る会」は、尖閣諸島が危機的な状況にあり早急に対処する必要を訴えている。その内容は、決して紛争を助長するものではなく、国家としての最低限の管理を求めるものだ。しかし、政府の対応は曖昧であり、特に中国対応については国民の懐疑心は募る。

 わが国は、海を守らなければ、国家が存続できないことを認識し海洋を基軸におき外交、防衛、経済、環境など一元化し運用する独立機関を創設すべきである。他国の圧力に屈することなく、将来の国家を見据えた政策を立案し、海洋国家としての指針を国民に対し示さなければならない。今、政府が動かなければ、国民に後悔を強いることになろう。(やまだ よしひこ)

 https://special.sankei.com/f/seiron/article/20200723/0001.html
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する