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2018年10月30日18:14
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横山華山
東京ステーションギャラリーで開催中の“横山華山”に行きました。
↓公式ＨＰ
http://
チケットは新聞屋さんからの貰い物。新聞屋さん、いつもいつも有難う。
キャッチコピーは「見ればわかる」。確かに見れば、この人の凄さが分かる。何を描いても、抜群に上手いんだ。何でも描けたし、何でも描いた。風俗、美人画、風景画、動物画等々。昭和初期頃までは知られた絵師だったのに、今は忘れられてしまった。原因として、彼の優品が海外に多く行ってしまったコト。どの流派にも属さなかったので分類出来ず消えちゃったというのがあるらしい。
私は、それプラス「何でも描けたから」消えちゃったんじゃ…と思う。サルまんの竹熊氏が石原豪人の画集を作ろうと思ったけど、ホモ雑誌から少年誌、ＳＭ雑誌、中間小説、婦人雑誌まで、もうありとあらゆる物に描けて、そして描いたから「纏まりがなくて作れなかった。」と言っていたのと同じように。
私は古書店にあった古い美術雑誌で彼の絵を見つけた。最初蕭白の絵だと思った。名前を見たら“横山華山”。誰だコイツ？そこで気になって調べたら虎でお馴染み岸駒の弟子。なのに蕭白っぽい絵を描いていてずっと気になっていた。いつか彼の展示をやるだろうと思うも、全然そんな気配がなく、やっと今回、初回顧展が。本当に忘れられてたんだな…。
横山華山（1781／4〜1837）江戸後期に京都で活躍。彼は横山家の養子なのだが、横山家が蕭白のパトロンだったらしく、蕭白と交流があった。自身は前述通り岸駒の弟子だが、呉春に私淑。蕭白も彼の絵の軸に。彼の没後も彼の息子の横山華渓や中島華陽が画風を受け継ぎ“横山派”というものがあったらしい。
『関羽騎馬図』華山が18か21歳くらいの作品。岸駒の画風がある。美しく彩色された馬に乗り薙刀を持つ関羽。馬の鞍や甲冑や薙刀の飾りの細かさな。そして関羽の髭の描き方の繊細さ。もう、この時点で完成されちゃってる。
『海巌松景図』わぁ〜、蕭白〜と思ったら違った(^_^;)。華山の蕭白風の山水画。左に切りたつ岩山と民家。海の雄大さ、中央上には月。小舟に乗る人の姿も見える。左に“皇都”と書いてあるのは、地方の人の注文だかららしい。他にも数点蕭白風山水があった。そして、蕭白から横山家に届いた手紙も展示してあった。『屏風押し絵が出来上がった』というお知らせの手紙らしい。これが交流の証拠だね。
『蝦蟇仙人図』これは蕭白の物と華山の物が並べて展示してあった。華山が蕭白の絵を写したのだろう。大胆さの蕭白。繊細で上品な華山。そんな違いがある。蕭白は上げてる左腕がやや不自然だが、それで大胆さや奇妙さが出ている。衣の動きも蕭白の方が力強く大胆。華山は仙人の表情も柔らかく、蕭白のような狂気はない。腕の動きも自然だが、迫力にはやや欠ける。言い方を変えれば上品。絵自体の違いもあって、華山の仙人は桃の実を後ろ手に持ち右足を上げ、ダンスしてるみたい。蝦蟇は華山の方がリアル。蕭白の方が漫画っぽい。
『唐子図屏風』遊ぶ唐子達。闘鶏を観たり、亀を川に放そうとしてたり、泥鰌を捕まえて、唐子「わー！」って顔で喜んだり。花篭持ったり、花が欲しくて喧嘩したり。猫をムンズと抱きかかえる子、猫、なすすべなく足ダラ〜ン（笑）。こういう表現リアルで上手いなぁ。猫は紐がついててそれを引っ張ってる子もいる。犬も連れてるが、犬は自由！左上には鶴も飛び、鳳凰も描かれる。まず、唐子の表情が皆生き生きしてる！そして、動物うまっ！篭の目も細かく描く。西洋風の陰影が唐子の顔についている。金屏風なので、裕福なパトロンがいたってコトよね？
華山は人物表現が得意。西洋風にも関心があった。
『鼻つまみ図』サックリ描いた感じ。坊さんが坊さんの鼻をつまんでる。つままれた方は手を上げ「お手上げ」ポーズのよう。
『四睡図』豊干禅師と寒山拾得、虎の四者が眠り込む姿。禅の境地を表したものらしいが、寒山がバカボンパパみたいな顔なんだ（笑）。豊干は大欠伸でリラックス。これもざくっと描いた感。
『飲中八仙人図襖』八人の酒仙の絵。馬上の賀知章は酩酊して馬から落ちそう。それを必死で引っ張る人がいる。布袋の軸に乾杯する仙人。大きな花器みたいなので酒飲む仙人。即興で書を書いてる人も。それを座って観てるのが仙人かな？その書を並べてる人もいる。乾かしてるの？皆凄く楽しそう。人物には呉春の影響があるらしい。金砂子使ってるから、結構値が張るよね。
花鳥画
『雪中烏図』雪の中、枝にとまる二羽の烏。背景には薄墨を使ってる。ざくっとした粗い筆致で枝を描く。恰好良い。烏もザクザク感がある。濃い墨の使い方の上手さな。烏が丸くなってるのは寒いから？
『虎図押絵貼屏風』観た瞬間思わず「虎、うんまっ！」って言ってしまった（笑）。いや、この人、岸駒の弟子！月次の虎（十二か月の虎）を一扇ずつに配置。懸崖は蕭白風。虎はやっぱり迫力の岸駒かな？雪中で振り向く虎。松に登る虎。月に吠える虎。この月虎だけ、墨絵風で淡い桃色が舌に使ってあった（この墨絵風がアクセントになってたから、計算したんだろう）。滝を睨む虎。水飲み虎。この水飲み虎は仕草はちょっと猫っぽい。一扇に振り返る母虎で、もう一扇に２匹の子虎なのかな？繋がってるように見えたので。子虎は川で遊んでるようにもビビってるようにも見える。振り返る虎の頭上には蝙蝠の姿。梅に虎。良く見ると、下にお乳飲んでる子虎がいて可愛い。日論と松を背景に足を舐める虎。これも仕草は猫っぽい。虎の毛並の描き方や水や岩も上手い。これ、暫く観てた。素晴らしかった。
『桃錦雉・蕣花猫図』二幅の軸。猫図。左上に蔓が伸び青い花が咲く朝顔。その下に灰猫＆白多目の虎猫。トラは寝て、灰は足を上げている。雉は、右上から下へ桃の花が咲く枝。錦雉がとまる。錦雉の朱が鮮やか。上に伸びる蔓、下へ垂れる枝でアクセント（動き）をつけてるらしい。明治天皇の御遺物として下賜された物。朝顔の葉の濃淡が、ちょっと雅邦っぽいかな？
『福禄寿盃』小さな朱塗りの杯。松、鹿、蝙蝠とおめでたづくしが描かれている。３�僂�らいしかない小さな蝙蝠がリアルに描かれていて驚く。単眼鏡で観ないと分からん！
『三猿図』見ざる、聞かざる、言わざるの猿。聞かざるの猿がムンクの叫びのような表情（笑）。これは版画。
次は風俗や祭礼図。
『四季版画風俗図巻』着色され綺麗。万歳やったり踊ったり七夕してる子供達がいたり。七福神は餅つきしてる。布袋と恵比須は餅をつく。弁天はお正月に飾る餅飾りを作ってる。餅をもう食べてる神様も。踊ってる人達は、左端の老婆がツボ。もう、ノッリノリで踊ってる（笑）。楽器も奏でて楽しそう。
『天明火災絵巻』左から炎が来ている。障子や襖が吹っ飛び黒い煙が風となり吹く。逃げ惑う人々。持ってる傘はオチョコになっている。着物を被り逃げる人。川に大慌てで飛び込む人々。皆家財道具を持って逃げ惑っている。散乱する三味線や鉄瓶も。天明８年正月。団栗橋より出火し、鴨川を越え京都市中を焼きつくした。天明の大火を描く肉筆画は本図のみらしい。思わず単眼鏡で観ながら「下の方えらいコトになってる…。」と呟いたら、横のお兄さんが「本当だ…」と言っていた。『本願寺火災図』も火災の絵。寺の瓦が落ちる描写が凄い。掛け軸持って逃げる僧侶の姿も。
『百鬼夜行図』これは可愛い。酒宴する妖怪達。お歯黒べったりがいて、ろくろ首がいて、豆腐小僧や火車等もいる。牛っぽい妖怪は困り顔だ。短冊状の縦長の紙を上手く使い下から上にフワ〜ンと白い幽霊が浮かぶ。背景は薄墨。夜なのだろう。朱が使われアクセントに。酒宴が楽しそうでね。妖怪は怖くないね。
『宝船図』力強い筆致で宝船を真正面から描いた物。宝船の絵は沢山あるも、真正面から描くのは稀。正月の試豪（書初め）らしい。この年の３月16日に華山は亡くなる。絶筆に近い絵らしいが、絵を観る限りは元気そう。米俵、酒樽が船に乗る。
『賀茂競馬図屏風』上賀茂神社で二頭の馬の速さを競い五穀豊穣を祈願する催し。鳥居の輪郭線が太い（解説にはフェルトペンで描いたようとあった）。馬を観てる人の列がズラーーーーーーッ。気が遠くなるくらい人が描かれている。何人描いたの？小さいのに人々に顔が描いてあるのにも驚く。手前には馬を囲み楽しげな人々。偉い人に挨拶してる馬上の人。木の葉の描き方がサササという感じで風を感じる。金砂子も使ってあり、結構凝ってる。
華山さんて、金を使ってるし、発色の良い絵具使ってるし（高い絵具だと思う）、やっぱり裕福な人からの注文多かったんだろうな。当時は有名な上手い絵師だったのがコレでも分かる。お金持ち、下手な人に絵を頼まないでしょ？
『ちょうちょう踊図屏風』これは、小澤華獄の作品。弟子だね。天保10年春。京都に住む人々が思い思いに仮装し、昼夜を問わず踊り狂い収束するまで１か月要したコトがあったらしい。「ちょうちょう」「ちょいちょい」と掛け声をかけたので、ちょうちょう踊。仮装が面白い。大根、犬、天狗、石灯籠、傘、しゃもじグルグルのコスプレは何？籾を分けるザルや鈴、布で作った龍で仮装する人、蝸牛の仮装してる人は、何故にこの仮想をやろうと思ったの？斬新過ぎる！蝸牛の殻は笠で作ってあるっぽい。柄杓を持った蛙、赤い頭巾を被った人々。ようは、昔のハロウィンだね（笑）。
『地獄祭礼図巻下絵』これは川辺華挙の作品で下絵。地獄の祭礼。山鉾があり、曳手や随行人の中には獄卒もいる。この図は三途の川から始まるらしい。亡者（？）から何か貰ってる獄卒もいる。踊ったりお囃子もあって地獄なのに楽しそう(^_^;)。因みに下絵はあれど、完成図は確認されてないらしい。師匠譲りの細密描写だったよ。
『祇園祭礼図巻』今回の目玉がコレ。上下全部観られる。江戸後期。祇園祭の全貌を上下巻約30ｍに渡り克明に描いた物。巡行以外の行事や祭で賑わう人々の姿まで事細かに正確に描いた唯一の物らしい。
とにかく、スゲエ。この人、何？って思う。
上巻の展示。
まず、稚児社参と祇園社。駕籠に乗り、祇園社（八坂神社）に挨拶に行く稚児。朱の着物の稚児の姿、周りには随行の人々。立派な祇園社に到着。
宵山。駒形提灯が灯る。連なる家々。これは墨絵。夜の表情なのだろう。家宝の屏風を展示する人達の姿とそれを観に来た人々。人は沢山。
山鉾。例外もあるが、大抵は大型の物を鉾、車輪のない小型の物が山なんだそうな。船鉾、岩戸鉾、放下鉾。飾りや周りの布の模様や絵まで細かく描いてある。
孟宗山には人形も乗る。霰天神山には、上に神社と鳥居も乗っている。
綾鉾は1834年に小型の鉾に改造された。その姿で描かれているので、この絵が1834年以降に描かれたと分かる。
山伏山には、山伏の人形が乗っている。
月鉾。四つ辻で山鉾の向きを直角に変える辻廻しをしてる。皆で縄を引っ張る姿。役人が監視してるらしく、荷物持った子供（かな？）に「まだ危ないから来ないで。」と言ってる姿も。
木賊山には、木賊が植えてあった。これ、本物なの？
蟷螂山は、デカイカマキリ（蟷螂）がてっぺんにいる。
太子山は山を置いて、人々が小休止。汗を拭く人、頬杖ついて「疲れたー」の顔の人も。
四条傘鉾は本当に傘のような形。傍で大道芸をやってる人の姿も。
長刀鉾。この鉾が先頭。これを追うように船鉾（最後尾）から上巻は描かれている。茶道具を運ぶ人がいるのだが、竈みたいな物まで運んでるよ。大勢の人が長刀鉾を引く。扇を持ち先導する人の姿も。布の龍や鳳凰の絵まで凄く細かく描かれる。
『祇園祭鉾調巻（祇園祭礼図巻下絵）』ある意味、完成品より感動した山鉾巡行（上巻）の下絵。本画と下絵の両方が残るのは例をみないらしい。下絵がもう、既に細かくて作品。懸装品や金工品、御神体等の詳細が欄外にビッシリ書き込まれている。華山が細かく取材していたのがこれで分かる。布の模様（絵）の説明もあったり、天神山には“正面朱鳥居両脇（布の説明だと思う）”とあったり、放下鉾には胴幕の説明が“細かくし〜”とあったり。岩戸山には人形の着物の色の指定まで書いていた（“白”等とある）。写真がないから、ここまで細かく書かないと再現出来ないんだな。又、文章が几帳面なんだ。
祇園祭礼図巻の下巻。こちらは先頭の橋弁慶山から最後尾の船鉾に向かって順に描かれる。ようは上巻と逆。
橋弁慶山。牛若丸と弁慶の五條橋の人形が乗っている。
鯉山。デカイ鯉がいる。水も出てるが、この水は本物？
鷹山 懸装品が破損し、今まで資料がなく直せず休んでいたが、この図には鳳凰の姿等、細部にわたり詳細が描かれており、これを参考に復興予定らしい。おおう！良かった。
神輿還幸の大行列。本当に大行列。疲れ顔の人々の姿も。ほら貝を吹く山伏姿の人や、ふざけていて「オイオイ」と注意されてる人、神輿を担ぐ大勢の人。草鞋の紐を直してる人までいて細かいっ！「こっち、こっちー」と手を振る人。父親に肩車してもらってる子供。先導する飾りの棒を放って遊んでる人もいるのだが、コレ、ダメだろう(^_^;)。
御旅所 神輿三基は四条寺町御旅所へ一週間留まり祇園社へ帰る。
四条河原納涼。ここには、露天も沢山並んでる。西瓜を売ってたり、西瓜を切ったり、人形芝居を観ていたり。瓢箪売ったり、寿司や酒肴を売ってる店もある。そして、ちょうちょう踊りにいたような風車ぐるぐるみたいなコスプレの人も。頭皮マッサージを受けてる人もいた。川床もあるので、涼むのに丁度良くて大賑わい。京都の夏は暑いもんねぇ〜。
祇園練物。仮装姿の芸妓達が練り歩く。練物の番付を持ってる人も。番付を一つでも上げようと贔屓の芸妓を応援する旦那達。今で言うＡＫＢの総選挙だな。年２度やる仮装のテーマは毎年異なるそうな。今回は牛若丸の仮装してる人がいるから、義経とかか？
すげえカラフルなみっちみちの絵を観た後に、最後に山水。ホッとする。華山の山水は現地を訪れて手がけた物もある。最晩年には南画風を体得。
山水が現代っぽくて、雅邦の絵っぽかったり、大観っぽい富士山の絵もあったり。
私は『瀑布図』が１番好きだった。勢いよく落ちる滝を筆の線で表す。下の水しぶきの激しさも良い。
『花洛一覧図』京都を俯瞰的に捉えた鳥瞰図。鴨川が左右に流れる。画中中ほど左に二条城。右下に東寺。色んな版があるらしく、焼失した広台寺大仏殿が描かれている物もある。これも細かい。これは木版画。
『天橋立・富士三保松原図屏風』右隻に天橋立。左隻に富士山。並べると地続きに見える。実際は地続きのワケはないケドね。“真景”とあるので、実際現地に赴き作画した。でも、絵は蕭白風に描いた。ちょっとおどろ感が岩や山にあるかも。右隻には細かく建物も描かれる。左隻は中央少し左に富士山。湖を行く船も。金砂子も使っている。
最後に山水持って来るの良かったなぁ。祭で終わったらチカチカしちゃってた(^_^;)。
何を描いても上手い横山華山さん。やっぱり色々描き過ぎて上手すぎて忘れられたんじゃないのかなぁ？
お土産に絵葉書３枚と、蕭白＆華山の蝦蟇仙人クリアファイルを買った。唐子も可愛かったケド、クリアファイルばっかりあってもなぁ。マステも綺麗だったケド、マステばっかりあってもなぁ…。
これを逃すと、暫く華山展はないと思うので、これを機会に行ってみるのも一興かと。「見ればわかる」のは確かだから。でも、混んでるかも〜(^_^;)。
おまけ。
階段のところの照明器具や煉瓦壁。
旧東京駅のレリーフ等の展示が会場外にあった。撮影ＯＫ。
↓公式ＨＰ
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チケットは新聞屋さんからの貰い物。新聞屋さん、いつもいつも有難う。
キャッチコピーは「見ればわかる」。確かに見れば、この人の凄さが分かる。何を描いても、抜群に上手いんだ。何でも描けたし、何でも描いた。風俗、美人画、風景画、動物画等々。昭和初期頃までは知られた絵師だったのに、今は忘れられてしまった。原因として、彼の優品が海外に多く行ってしまったコト。どの流派にも属さなかったので分類出来ず消えちゃったというのがあるらしい。
私は、それプラス「何でも描けたから」消えちゃったんじゃ…と思う。サルまんの竹熊氏が石原豪人の画集を作ろうと思ったけど、ホモ雑誌から少年誌、ＳＭ雑誌、中間小説、婦人雑誌まで、もうありとあらゆる物に描けて、そして描いたから「纏まりがなくて作れなかった。」と言っていたのと同じように。
私は古書店にあった古い美術雑誌で彼の絵を見つけた。最初蕭白の絵だと思った。名前を見たら“横山華山”。誰だコイツ？そこで気になって調べたら虎でお馴染み岸駒の弟子。なのに蕭白っぽい絵を描いていてずっと気になっていた。いつか彼の展示をやるだろうと思うも、全然そんな気配がなく、やっと今回、初回顧展が。本当に忘れられてたんだな…。
横山華山（1781／4〜1837）江戸後期に京都で活躍。彼は横山家の養子なのだが、横山家が蕭白のパトロンだったらしく、蕭白と交流があった。自身は前述通り岸駒の弟子だが、呉春に私淑。蕭白も彼の絵の軸に。彼の没後も彼の息子の横山華渓や中島華陽が画風を受け継ぎ“横山派”というものがあったらしい。
『関羽騎馬図』華山が18か21歳くらいの作品。岸駒の画風がある。美しく彩色された馬に乗り薙刀を持つ関羽。馬の鞍や甲冑や薙刀の飾りの細かさな。そして関羽の髭の描き方の繊細さ。もう、この時点で完成されちゃってる。
『海巌松景図』わぁ〜、蕭白〜と思ったら違った(^_^;)。華山の蕭白風の山水画。左に切りたつ岩山と民家。海の雄大さ、中央上には月。小舟に乗る人の姿も見える。左に“皇都”と書いてあるのは、地方の人の注文だかららしい。他にも数点蕭白風山水があった。そして、蕭白から横山家に届いた手紙も展示してあった。『屏風押し絵が出来上がった』というお知らせの手紙らしい。これが交流の証拠だね。
『蝦蟇仙人図』これは蕭白の物と華山の物が並べて展示してあった。華山が蕭白の絵を写したのだろう。大胆さの蕭白。繊細で上品な華山。そんな違いがある。蕭白は上げてる左腕がやや不自然だが、それで大胆さや奇妙さが出ている。衣の動きも蕭白の方が力強く大胆。華山は仙人の表情も柔らかく、蕭白のような狂気はない。腕の動きも自然だが、迫力にはやや欠ける。言い方を変えれば上品。絵自体の違いもあって、華山の仙人は桃の実を後ろ手に持ち右足を上げ、ダンスしてるみたい。蝦蟇は華山の方がリアル。蕭白の方が漫画っぽい。
『唐子図屏風』遊ぶ唐子達。闘鶏を観たり、亀を川に放そうとしてたり、泥鰌を捕まえて、唐子「わー！」って顔で喜んだり。花篭持ったり、花が欲しくて喧嘩したり。猫をムンズと抱きかかえる子、猫、なすすべなく足ダラ〜ン（笑）。こういう表現リアルで上手いなぁ。猫は紐がついててそれを引っ張ってる子もいる。犬も連れてるが、犬は自由！左上には鶴も飛び、鳳凰も描かれる。まず、唐子の表情が皆生き生きしてる！そして、動物うまっ！篭の目も細かく描く。西洋風の陰影が唐子の顔についている。金屏風なので、裕福なパトロンがいたってコトよね？
華山は人物表現が得意。西洋風にも関心があった。
『鼻つまみ図』サックリ描いた感じ。坊さんが坊さんの鼻をつまんでる。つままれた方は手を上げ「お手上げ」ポーズのよう。
『四睡図』豊干禅師と寒山拾得、虎の四者が眠り込む姿。禅の境地を表したものらしいが、寒山がバカボンパパみたいな顔なんだ（笑）。豊干は大欠伸でリラックス。これもざくっと描いた感。
『飲中八仙人図襖』八人の酒仙の絵。馬上の賀知章は酩酊して馬から落ちそう。それを必死で引っ張る人がいる。布袋の軸に乾杯する仙人。大きな花器みたいなので酒飲む仙人。即興で書を書いてる人も。それを座って観てるのが仙人かな？その書を並べてる人もいる。乾かしてるの？皆凄く楽しそう。人物には呉春の影響があるらしい。金砂子使ってるから、結構値が張るよね。
花鳥画
『雪中烏図』雪の中、枝にとまる二羽の烏。背景には薄墨を使ってる。ざくっとした粗い筆致で枝を描く。恰好良い。烏もザクザク感がある。濃い墨の使い方の上手さな。烏が丸くなってるのは寒いから？
『虎図押絵貼屏風』観た瞬間思わず「虎、うんまっ！」って言ってしまった（笑）。いや、この人、岸駒の弟子！月次の虎（十二か月の虎）を一扇ずつに配置。懸崖は蕭白風。虎はやっぱり迫力の岸駒かな？雪中で振り向く虎。松に登る虎。月に吠える虎。この月虎だけ、墨絵風で淡い桃色が舌に使ってあった（この墨絵風がアクセントになってたから、計算したんだろう）。滝を睨む虎。水飲み虎。この水飲み虎は仕草はちょっと猫っぽい。一扇に振り返る母虎で、もう一扇に２匹の子虎なのかな？繋がってるように見えたので。子虎は川で遊んでるようにもビビってるようにも見える。振り返る虎の頭上には蝙蝠の姿。梅に虎。良く見ると、下にお乳飲んでる子虎がいて可愛い。日論と松を背景に足を舐める虎。これも仕草は猫っぽい。虎の毛並の描き方や水や岩も上手い。これ、暫く観てた。素晴らしかった。
『桃錦雉・蕣花猫図』二幅の軸。猫図。左上に蔓が伸び青い花が咲く朝顔。その下に灰猫＆白多目の虎猫。トラは寝て、灰は足を上げている。雉は、右上から下へ桃の花が咲く枝。錦雉がとまる。錦雉の朱が鮮やか。上に伸びる蔓、下へ垂れる枝でアクセント（動き）をつけてるらしい。明治天皇の御遺物として下賜された物。朝顔の葉の濃淡が、ちょっと雅邦っぽいかな？
『福禄寿盃』小さな朱塗りの杯。松、鹿、蝙蝠とおめでたづくしが描かれている。３�僂�らいしかない小さな蝙蝠がリアルに描かれていて驚く。単眼鏡で観ないと分からん！
『三猿図』見ざる、聞かざる、言わざるの猿。聞かざるの猿がムンクの叫びのような表情（笑）。これは版画。
次は風俗や祭礼図。
『四季版画風俗図巻』着色され綺麗。万歳やったり踊ったり七夕してる子供達がいたり。七福神は餅つきしてる。布袋と恵比須は餅をつく。弁天はお正月に飾る餅飾りを作ってる。餅をもう食べてる神様も。踊ってる人達は、左端の老婆がツボ。もう、ノッリノリで踊ってる（笑）。楽器も奏でて楽しそう。
『天明火災絵巻』左から炎が来ている。障子や襖が吹っ飛び黒い煙が風となり吹く。逃げ惑う人々。持ってる傘はオチョコになっている。着物を被り逃げる人。川に大慌てで飛び込む人々。皆家財道具を持って逃げ惑っている。散乱する三味線や鉄瓶も。天明８年正月。団栗橋より出火し、鴨川を越え京都市中を焼きつくした。天明の大火を描く肉筆画は本図のみらしい。思わず単眼鏡で観ながら「下の方えらいコトになってる…。」と呟いたら、横のお兄さんが「本当だ…」と言っていた。『本願寺火災図』も火災の絵。寺の瓦が落ちる描写が凄い。掛け軸持って逃げる僧侶の姿も。
『百鬼夜行図』これは可愛い。酒宴する妖怪達。お歯黒べったりがいて、ろくろ首がいて、豆腐小僧や火車等もいる。牛っぽい妖怪は困り顔だ。短冊状の縦長の紙を上手く使い下から上にフワ〜ンと白い幽霊が浮かぶ。背景は薄墨。夜なのだろう。朱が使われアクセントに。酒宴が楽しそうでね。妖怪は怖くないね。
『宝船図』力強い筆致で宝船を真正面から描いた物。宝船の絵は沢山あるも、真正面から描くのは稀。正月の試豪（書初め）らしい。この年の３月16日に華山は亡くなる。絶筆に近い絵らしいが、絵を観る限りは元気そう。米俵、酒樽が船に乗る。
『賀茂競馬図屏風』上賀茂神社で二頭の馬の速さを競い五穀豊穣を祈願する催し。鳥居の輪郭線が太い（解説にはフェルトペンで描いたようとあった）。馬を観てる人の列がズラーーーーーーッ。気が遠くなるくらい人が描かれている。何人描いたの？小さいのに人々に顔が描いてあるのにも驚く。手前には馬を囲み楽しげな人々。偉い人に挨拶してる馬上の人。木の葉の描き方がサササという感じで風を感じる。金砂子も使ってあり、結構凝ってる。
華山さんて、金を使ってるし、発色の良い絵具使ってるし（高い絵具だと思う）、やっぱり裕福な人からの注文多かったんだろうな。当時は有名な上手い絵師だったのがコレでも分かる。お金持ち、下手な人に絵を頼まないでしょ？
『ちょうちょう踊図屏風』これは、小澤華獄の作品。弟子だね。天保10年春。京都に住む人々が思い思いに仮装し、昼夜を問わず踊り狂い収束するまで１か月要したコトがあったらしい。「ちょうちょう」「ちょいちょい」と掛け声をかけたので、ちょうちょう踊。仮装が面白い。大根、犬、天狗、石灯籠、傘、しゃもじグルグルのコスプレは何？籾を分けるザルや鈴、布で作った龍で仮装する人、蝸牛の仮装してる人は、何故にこの仮想をやろうと思ったの？斬新過ぎる！蝸牛の殻は笠で作ってあるっぽい。柄杓を持った蛙、赤い頭巾を被った人々。ようは、昔のハロウィンだね（笑）。
『地獄祭礼図巻下絵』これは川辺華挙の作品で下絵。地獄の祭礼。山鉾があり、曳手や随行人の中には獄卒もいる。この図は三途の川から始まるらしい。亡者（？）から何か貰ってる獄卒もいる。踊ったりお囃子もあって地獄なのに楽しそう(^_^;)。因みに下絵はあれど、完成図は確認されてないらしい。師匠譲りの細密描写だったよ。
『祇園祭礼図巻』今回の目玉がコレ。上下全部観られる。江戸後期。祇園祭の全貌を上下巻約30ｍに渡り克明に描いた物。巡行以外の行事や祭で賑わう人々の姿まで事細かに正確に描いた唯一の物らしい。
とにかく、スゲエ。この人、何？って思う。
上巻の展示。
まず、稚児社参と祇園社。駕籠に乗り、祇園社（八坂神社）に挨拶に行く稚児。朱の着物の稚児の姿、周りには随行の人々。立派な祇園社に到着。
宵山。駒形提灯が灯る。連なる家々。これは墨絵。夜の表情なのだろう。家宝の屏風を展示する人達の姿とそれを観に来た人々。人は沢山。
山鉾。例外もあるが、大抵は大型の物を鉾、車輪のない小型の物が山なんだそうな。船鉾、岩戸鉾、放下鉾。飾りや周りの布の模様や絵まで細かく描いてある。
孟宗山には人形も乗る。霰天神山には、上に神社と鳥居も乗っている。
綾鉾は1834年に小型の鉾に改造された。その姿で描かれているので、この絵が1834年以降に描かれたと分かる。
山伏山には、山伏の人形が乗っている。
月鉾。四つ辻で山鉾の向きを直角に変える辻廻しをしてる。皆で縄を引っ張る姿。役人が監視してるらしく、荷物持った子供（かな？）に「まだ危ないから来ないで。」と言ってる姿も。
木賊山には、木賊が植えてあった。これ、本物なの？
蟷螂山は、デカイカマキリ（蟷螂）がてっぺんにいる。
太子山は山を置いて、人々が小休止。汗を拭く人、頬杖ついて「疲れたー」の顔の人も。
四条傘鉾は本当に傘のような形。傍で大道芸をやってる人の姿も。
長刀鉾。この鉾が先頭。これを追うように船鉾（最後尾）から上巻は描かれている。茶道具を運ぶ人がいるのだが、竈みたいな物まで運んでるよ。大勢の人が長刀鉾を引く。扇を持ち先導する人の姿も。布の龍や鳳凰の絵まで凄く細かく描かれる。
『祇園祭鉾調巻（祇園祭礼図巻下絵）』ある意味、完成品より感動した山鉾巡行（上巻）の下絵。本画と下絵の両方が残るのは例をみないらしい。下絵がもう、既に細かくて作品。懸装品や金工品、御神体等の詳細が欄外にビッシリ書き込まれている。華山が細かく取材していたのがこれで分かる。布の模様（絵）の説明もあったり、天神山には“正面朱鳥居両脇（布の説明だと思う）”とあったり、放下鉾には胴幕の説明が“細かくし〜”とあったり。岩戸山には人形の着物の色の指定まで書いていた（“白”等とある）。写真がないから、ここまで細かく書かないと再現出来ないんだな。又、文章が几帳面なんだ。
祇園祭礼図巻の下巻。こちらは先頭の橋弁慶山から最後尾の船鉾に向かって順に描かれる。ようは上巻と逆。
橋弁慶山。牛若丸と弁慶の五條橋の人形が乗っている。
鯉山。デカイ鯉がいる。水も出てるが、この水は本物？
鷹山 懸装品が破損し、今まで資料がなく直せず休んでいたが、この図には鳳凰の姿等、細部にわたり詳細が描かれており、これを参考に復興予定らしい。おおう！良かった。
神輿還幸の大行列。本当に大行列。疲れ顔の人々の姿も。ほら貝を吹く山伏姿の人や、ふざけていて「オイオイ」と注意されてる人、神輿を担ぐ大勢の人。草鞋の紐を直してる人までいて細かいっ！「こっち、こっちー」と手を振る人。父親に肩車してもらってる子供。先導する飾りの棒を放って遊んでる人もいるのだが、コレ、ダメだろう(^_^;)。
御旅所 神輿三基は四条寺町御旅所へ一週間留まり祇園社へ帰る。
四条河原納涼。ここには、露天も沢山並んでる。西瓜を売ってたり、西瓜を切ったり、人形芝居を観ていたり。瓢箪売ったり、寿司や酒肴を売ってる店もある。そして、ちょうちょう踊りにいたような風車ぐるぐるみたいなコスプレの人も。頭皮マッサージを受けてる人もいた。川床もあるので、涼むのに丁度良くて大賑わい。京都の夏は暑いもんねぇ〜。
祇園練物。仮装姿の芸妓達が練り歩く。練物の番付を持ってる人も。番付を一つでも上げようと贔屓の芸妓を応援する旦那達。今で言うＡＫＢの総選挙だな。年２度やる仮装のテーマは毎年異なるそうな。今回は牛若丸の仮装してる人がいるから、義経とかか？
すげえカラフルなみっちみちの絵を観た後に、最後に山水。ホッとする。華山の山水は現地を訪れて手がけた物もある。最晩年には南画風を体得。
山水が現代っぽくて、雅邦の絵っぽかったり、大観っぽい富士山の絵もあったり。
私は『瀑布図』が１番好きだった。勢いよく落ちる滝を筆の線で表す。下の水しぶきの激しさも良い。
『花洛一覧図』京都を俯瞰的に捉えた鳥瞰図。鴨川が左右に流れる。画中中ほど左に二条城。右下に東寺。色んな版があるらしく、焼失した広台寺大仏殿が描かれている物もある。これも細かい。これは木版画。
『天橋立・富士三保松原図屏風』右隻に天橋立。左隻に富士山。並べると地続きに見える。実際は地続きのワケはないケドね。“真景”とあるので、実際現地に赴き作画した。でも、絵は蕭白風に描いた。ちょっとおどろ感が岩や山にあるかも。右隻には細かく建物も描かれる。左隻は中央少し左に富士山。湖を行く船も。金砂子も使っている。
最後に山水持って来るの良かったなぁ。祭で終わったらチカチカしちゃってた(^_^;)。
何を描いても上手い横山華山さん。やっぱり色々描き過ぎて上手すぎて忘れられたんじゃないのかなぁ？
お土産に絵葉書３枚と、蕭白＆華山の蝦蟇仙人クリアファイルを買った。唐子も可愛かったケド、クリアファイルばっかりあってもなぁ。マステも綺麗だったケド、マステばっかりあってもなぁ…。
これを逃すと、暫く華山展はないと思うので、これを機会に行ってみるのも一興かと。「見ればわかる」のは確かだから。でも、混んでるかも〜(^_^;)。
おまけ。
階段のところの照明器具や煉瓦壁。
旧東京駅のレリーフ等の展示が会場外にあった。撮影ＯＫ。
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