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2018年10月25日17:29

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カール・ラーション スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家

損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の“カール・ラーション スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家”に行きました。チケットは新聞屋さんからの貰い物。新聞屋さん、いつもいつも有難う。
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公式HP↓
https://www.sjnk-museum.org/program/current/5469.html

以前、北欧インテリアブームがあり、その流れで北欧ブームになったのだが、その時に、ラーションも紹介されていたと思う。日本人好みの画家だと思うんだ。ウォルター・クレインや、ラファエル前派、ミュシャ等を思わせる画風だったり。
今回はカールだけではなく、奥さんのカーリンのテキスタイル等を展示してあるのも見どころかと。
カールの絵は油彩や水彩も美しいケド、私はやっぱり細密な挿絵が好きなんだよなぁ。幻想的だし。

長くつ下のピッピ展もそうだったと思うケド、今年日本スウェーデン外交関係樹立150周年で、その記念として、スウェーデン関連を沢山やっているんだね。

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1階入口で映像を流していて、これを観てから行った方が良いと思う。館内でも流れてたケド、こっちの方が5分あって長いので。ラーションが絵を描くところ等が見られる。

カール・ラーションは19世紀末〜20初頭に活躍した。自分の家族を描いた絵がスウェーデンの理想的家庭像となった画家。自邸“リッラ・ヒュットネース”はラーション夫妻が家を装飾。カールはパリで日本美術と出会い、日本美術にも影響された。カールにとって妻カーリンとの出会いも刺激になり、カーリンは家のインテリアを自ら手掛けた。

スウェーデンの思想家エレン・ケイは、“リッラ・ヒュットネース”を住居改善の理想的モデルとした。「美は人を高め豊かにする。」と。アーツ&クラフツ運動みたいなものだね。

カールはストックホルム生まれ。貧しい暮らしだったらしい。それでも王立美術学校へ。留学先のフランスで明るい色彩になり、親密(アンティーム)な世界を作り上げたと解説にあった。カールは、王立アカデミーで石膏デッサン等を学びつつ、貧しい家族を支える為に、新聞や雑誌に挿絵を描く仕事をした。

ケイト・グリーナウェイ『窓の下で』があったのだが、ラーションが挿絵等に描いた子供の絵には、グリーナウェイの影響があるらしい。木の下で本を読む少女の絵。そういえば似てる…かなぁ?

『水差しのある静物』アカデミー時代のかな?アカデミックな技法で描かれた陰影のついた重い画面の静物画。これは油彩。まだ、軽やかにはなってないね。上手いケド。

『モンクール風景』深い光。落ち着いた色彩の画面。にじみを使った風景画。カールはフランスのグレー村に暮らして、色彩が淡くなっていったらしい。これを描く2年前、カールはグレー村に近いこのモンクールをカーリンと訪れプロポーズした。思い出の場所なんだね。

『ダーラナ地方のランプのある室内』テーブルがあり、うっすら光が灯る室内。シルエットで浮かぶ椅子に座るカーリン。全体的に落ち着いた茶色の色彩。ちょっと厳かにも観えた。私が好きな絵。

『カーリンの命名日のお祝い』水彩で、この辺りからカールの絵になって行くかな。自分と同じ名前の聖人の祝日=命名日。長女スザンヌが2人の少女と共に白い髭の水の精に仮装してる。カーリンはベッドから起きつつ、彼女達を見ている。奥のベッドには小さな娘(四女かな?)。彼女も起きて、その様子を見つめる。家族のスナップ写真のような絵。人物造形がミュシャっぽいな…とも思う。

19Cスウェーデンは、絵画はロマン主義、自然主義が主流だった。カールは1892年“わたしの家族”で、明確な輪郭線と平坦な彩色による様式を打ち出す。アール・ヌーヴォーやジャポニズムの影響らしい。この2要素が入っているから、日本人に好まれるのかな?って思うんだケドどうだろう?

『母と娘』この絵も良かった。水彩。カールのアトリエにいるスザンヌとカーリン。左にいる青いストライプの服(これ、展示してあった服に似てるの)を来て座ってるのがカーリン?中央少し右にいる黒い上着の女性がスザンヌかな?後ろにドイツのルネサンス様式の白い家具が描かれている。重厚な家具で書棚も付いてる。家具も細密に描くな〜と思ったら、これは、カール自慢の家具だったらしい。

『自画像』会場冒頭にカールの帽子&スモックが展示してあるのだが、まさにそれを着た自画像だった。思わず「さっき観たの着てる!」って言った(笑)。誇らしげな顔で室内に立つカール。

『病み上がりのエースビョーン』椅子に座りぐったりする少年(エースビョーン)。でもさ。これ、息子を描きたかったんじゃないよね?家具を描きたかったよね?って言うくらい家具が細密に描かれてる。少年が座ってる椅子も、壁側にある白い椅子も、キャビネットもお洒落だ。これも水彩。家族の絵は水彩が多いね。

カールは挿絵も描いた。当時挿絵は、絵画より一段下にみられたが、入手しやすい新聞や本の挿絵に壁画と共通する公共性をカールは認めていた。で、私はカール・ラーションを1番最初に、挿絵画家として知ったのだった。

『ユーハン・ウルフ・ヴァーリン“死の天使”』表紙と扉絵、装丁、挿絵、全てカール作。赤地に金の古代神殿の柱のような絵。恰好良い。中見の挿絵は鎌を持つ黒い服で黒い羽の死の天使の姿。ちょっとラファエル前派のミレイっぽいかも。

『ヴィクトル・リュードベリ『シンゴアッラ物語』』本ですね。これも挿絵。水辺でセクシーポーズをとる美女。彼女はジプシーの娘らしい。水面に映る足まで描いている。この
『シンゴアッラ物語』は、ジプシーのシンゴアッラと、騎士のエーランドの悲恋の物語らしい。再販の為、挿絵を著者(ヴィクトル)自らが依頼したらしく、カールはリキ入れて描いたらしい。

『小川のほとりのエーランドとシンゴアッラ』水辺にいる美女シンゴアッラと美青年エーランド。白黒ペン画なのだが、陰影のつけかたと白のハイライトの入れ方が美しく、神秘的。後ろの森のうっそうとしたおどろ感も好き。

『『昼と夜』小川のほとりのエーランドとシンゴアッラ』抱き合うエーランドとシンゴアッラ。シンゴアッラはうっとりと微笑む。エーランドは目を瞑り、何かに耐えているようにも見える。服の襞の陰影が美しい。

『『出発』孤独なアシム』丘に立つマント姿の男。手を翳している。遠くに川(かな?)。これも白ハイライトの入れ方が綺麗。これは、実物観ないと分からないよね。白ハイライトだもんね。

カールは1870年代半ば、エッチングやカラーリトグラフ制作を行った。家族や友人等、身近な人々が主題だった。

で、そのエッチング作品の『作家の幽霊』。目を剥いた幽鬼のような顔。もう1枚『歪んだ顔』も同じような作品。これはカールの影の部分らしい。明るい温かみのある絵が多いケド、友人との不和等もあり、人生の恐れを抱いていて、その発露ってコトらしい。怖いケド、良く彫ってるな…って言う。

『聖ゲオルギウスとお姫様』前述とは打って変わって、彩色の美しいリトグラフ。左にお姫様の恰好の少女。布を持っており、その布の上には舞楽面のような異形の面が置かれている。右にゲオルギウスの恰好の少年。剣を持ちちょっとドヤ顔。スウェーデンの妖精物語を主題にした衣装を着て遊ぶ子供達の様子らしい。後ろの壁紙がモリスっぽいデザインなのだが、これも奥さんのカーリン作だろうか?全体的な絵は、私にはクレインを想起させる。これ、ポストカード欲しかったな(なかった)。

『かくれんぼう』左の椅子から四女のチェシュティが頬杖をついて覗いている。隠れているのだろう。中央にテーブル。ツイストする足のデザインがお洒落だ。ダーラナ地方のルネサンス様式の物らしい。右の椅子にかかるテキスタイルはカーリン作。暖炉もあり、テーブルの上には帽子や絵筆、本などがあり、左隅には騎士の絵もある。とても可愛い絵。

『チェシュティのお客様』机を挟んで対に座る2人の少女。左のブルーの服がチェシュティかな?右にはピンクの服の少女がおり、ブルーの服の少女を見てる。これもクレインっぽい感じかも。
この3点のカラーリトグラフはどれも良かった。部屋に飾りたい感じ。

『朝食のプレートを持つマルティーナ』これはエッチング。オレンジで彩色もされてるケド。お盆を持つメイドの女性。後ろはダイニングだろう。カップ等がある。お盆の上には瓶やチーズも乗っている。同名の油彩があり、その絵の上半身部分は“家庭料理の本”というベストセラー本の表紙になっている。そして、その本の展示もあった。

『カーリンとチェシュティ』チェシュティの髪を櫛で梳かすカーリン。チェシュティの髪の毛が柔らかそうなんだ。エッチングなのだが、鉛筆画のよう。ところで、映像資料でカールが描いてたモデルの少女がチェシュティなのかな?似てるような気が…。

『変な人形』目玉の大きなキューピー人形を抱く少女。顔はムッとしている。腰に付けてる丸い物は何?玩具?カールは普段から子供を良く見てたんだろう。子供の表情の活かし方が上手い。

カールは、大胆な構図、広い余白、ぼかしやにじみ等、日本の絵画の表現を取り入れた。日常生活から意外性や面白さを発見する手法は浮世絵から学んだらしい。

『アザレアの花』ポスター等に使われたたのがコレ。水彩。中央手前に大きくアザレアの花。その後ろにハサミを持ち振り返るカーリンの姿。左奥には機織り機があり、タペストリーが作られている。植物の緑が綺麗。これ、言われてみれば、広重の、梅の木真ん中にドーン!の構図だね。気付かなかった…。確かに、西洋絵画はあまりこういう描き方しないか。

『祖父』中央に咲き乱れる花々。向日葵があり、スイートピーっぽいのも。奥で父のウルフが農作業中。これも広重の構図だ!庭はイギリス風。スウェーデンの庭造りの先端をラーションは担っていたらしい。左の赤茶は柱だろうか?壁?
カールが持ってた浮世絵も展示してあった。

リッラ・ヒュットネースのコト。1888年、カーリンの両親よりダーラナ地方のスンドボーンの小さな家を譲り受けたラーション夫妻。“リッラ・ヒュットネース(小さな精錬小屋)”と名付けた。それを増築と改築を重ね、1901年に一家で移住。自分の家をスウェーデンのアーツ&クラフツ運動の拠点にしようとした。農場も買っているから、カールは農場主でもあるんだよね?
で、ここからラーション家の暮らしぶりを見てみる。
画集『わたしの家』の室内の水彩画のパネルと、家具の展示があった。

『絵皿』ラーション夫妻が絵付したんだけど、花は綺麗だけど、芋虫の描かれた皿に食べ物を乗せるのはどうなんだろう?(^_^;)

食堂は家族が平等に集まる場所とカールは考えた。昔は家長制度が強かったから、子供は食事が別だったりしたらしい。中国風の窓、ドアの上の飾り文字はルネサンス風、扉には日本風の模様があり、様々な国と時代が混在する豊かな空間になっている。キャビネットの絵も和風だと思った。螺鈿細工っぽいし。

カールは画集を出版する。画集『わたしの家』でラーションスタイルが広まった。
ラーションスタイルとは?
1ラーション夫妻が自ら改装・増築を考え、地元の職人に作らせた。
2室内装飾はカーリンが大きな役割を担った。
3部屋ごとに異なる時代の様式にした。
4アンティークを新しい用途にした 
5どの部屋も子供達が楽しく過ごせる工夫をした。
この5つがラーションスタイルだそうな。

カーリンのテキスタイルがあり、白いベルマン椅子のある居間が、ちょろっと再現されていた(パネルの展示も)。白いベルマン椅子は、ファールンの工房作で、ロココの椅子。居間は窓も大きく光が入って明るそう。

『花台』緑の花台。カーリンデザインで地元の大工作。違い棚等、日本の影響がここにもある。確かに違い棚っぽかった。左右対称の違い棚みたいな。

カールはカーリンを“家庭の天使”としたが、芸術家とは考えていなかった(19世紀末じゃ、女性の地位なんてそんなもんだよね…)。カーリンが54歳の時、スウェーデンの女性ジャーナリストが初めて彼女の仕事を記事にした。

カーリンはどんな人?ハルスベリで育つ。14歳でストックホルムの工芸学校へ行き、その後、王立美術学校で油彩を学んだ。同級生たちと訪れたパリのグレーでカールからプロポーズされた。カーリンも画家だったケド、カールがあまり画家としてやっていて欲しくなかったぽくて(当時だと、女性は家庭に入らなきゃ!だったのだろう)、カーリンは筆を置く。カーリンの家は豊かな家だったらしいけど、貧しい家のカールとの結婚は認めてくれたらしい。

カーリンの絵の展示があった。『裸体習作』片膝をつく裸の男性。デッサン上手かったよ。女性らしく、柔らかい線だな…とは思ったケド。『マルムストローム先生のアトリエ』これは、油彩。右にアトリエで絵を描く男性。これがマルムストロール先生なのだろう。左にパラソルを持ち座るピンクの服の女性。アカデミズムのきちんとした絵だった。

『鳥とバラと両手のデザイン画』水彩。アール・ヌーヴォーっぽい装飾の薔薇と鳥と手。ミュシャの装飾っぽくもあるかな?

ここからはカーリンデザインのテキスタイルや服等の展示が続く。
『帽子』カーリンデザイン。黒いレコード盤のような帽子なの。

リッラ・ヒュットネースの装飾を始めた時、ターラナ地方の手工芸教室へカーリンは通っていた。そこで、糸紡ぎ、機織り等を学んだ。カーリンは子供を沢山生んだので、ゆったりしたドレスを作った。今まではゆったりした女性の服はだらしないと思われていて、あまり作られなかったらしい。ラファエル前派やロココの衣装と画家のスモックを合わせたデザインの服なんだって。紫色のドレスの展示があったけど、確かにゆったりデザイン。チュニックにも見えた。

テキスタイルも結構展示がある。『花模様のテーブルクロス』可愛い花柄のクロス。上に花篭が吊ってあるデザイン。『ベッドカバー』端切れを挿入するスウェーデン北部の織り方をしてるらしい。1899と年代が上に織ってあった。樹木の柱(メイボール)モチーフだそうな。

『テーブルクロス 家紋風の模様(複製)』カーリンのテキスタイルは痛んでるのも多いので、精密な複製での展示もあった。(どっちも展示してる作品もあったよ)丸い模様が家紋みたい。手ぬぐい等の型染め風のクロス。

『ブック・カバー』これも好きだったな。小さなブックカバーなのだが、葉っぱ柄で刺子のような渋いデザイン。

カーリンは1900年からの約10年に精力的にテキスタイルを制作した。
『愛の薔薇(複製)』カールの寝室とカーリンの寝室の間を仕切るカーテン(寝室別だったんだね)。下部に緑、ペールピンク、赤、紺色で、大地、空気、水、火を表している。大地から伸びた薔薇へ蛇が巻き付いている。蛇は善悪の象徴。白い部分は漁師の網用の糸を使ったらしい。

『第一次世界大戦のメモリアルクッション(古い複製)』1918年。カールへの最後の誕生日プレゼントがこれ。カールが亡くなる翌年に作ったらしい。戦火と涙がデザインされている。黒地に桃色の火と白い涙。他にもカールに贈ったプレゼントの展示があった。

『青い肘掛け椅子』18C初頭の後期バロックの木の椅子。カールの意匠を元にカーリンが布を作った。それが椅子に張ってある。花とカエルのデザインで可愛かった。

カールは17C〜18Cの家具を好んで集めている。家具に家族の肖像や日本風の模様を描き込み、布をカーリンのテキスタイルに張り替えた。

最後に『ローストランド社製、限定版「母の日イヤープレート」』があった。カールの絵が使われたお皿セット。カール・ラーションはスウェーデンの国民的画家となり、今でもこうやって受け継がれているそうな。

あと、カールは子供を描くのに定評があったので、『他家の子どもたち』って言う、色んな子供を描いた本の展示もあった。この辺り、スイスの画家のアンカーにも通じる様な気もした。

最後、リッラ・ヒュットネースの居間のイメージをIKEAの家具でコーディネートしてみました!ってコーナーがあった。何でもIKEAのホームファニッシングはラーションの温かい暮らしがルーツなんだそうな。ここは撮影OKだった。
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居間

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居間の椅子

お土産はポストカード4枚。マステも可愛かったケド、私、マステ沢山持ってるからな。

おまけ
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美術館からの外の眺め。

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フォトスポットにある、ゴッホのひまわり(複製)。

カール・ラーションは12月24日までやってます。北欧好き、アールヌーヴォー好き、家具やお洒落な物が好きな人も楽しいかと思います。
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