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2018年10月22日12:41

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【正論】「友好」に騙されない対中外交を 文化人類学者、静岡大学教授・楊海英

 下記は、2018.10.22 付の産経ニュース「正論」です。

                         記

 安倍晋三首相が予定している中国訪問の日程が少し後ろにずれ込んだことが、各界で注目されている。当初は23日に北京入りする予定だったとされるが、2日延期され25日になったという。

 これに関連して欧米からの報道を総合すると、22日を境に、中国西部の新疆ウイグル自治区から出発するすべての列車のチケットが「発売中止になった」とされる。一般の乗客を乗せない列車にウイグル人を満載して中国の内地に向かい、代わりに漢民族が入植するという“エスニック・クレンジング(民族浄化)”が行われつつあるが、機微な時期と重なったために、中国側の事情で延期となった、と欧米の消息筋は語る。

 ≪少数民族抑圧の中止を求めよ≫

 安倍首相を迎えた席上で習近平国家主席は何を話すのだろうか。私はかつて中国外務省傘下にあった、外交官を育成する北京第二外国語学院(現外交部長の王毅氏も同学院出身)で日本語と外交政策を学び、数年間通訳としても働いた経験があるので、2人の指導者の間には恐らく以下のようなやり取りが交わされるのではないか、と推測している。

 第1に、「中国と日本は一衣帯水の隣国であるので、友好をさらに発展させよう」と習氏は口を開くだろう。漢文の甘美な響きに陶酔感を覚えやすい日本人は、長らく中国の政治家が持ち出すこの種の言葉に騙(だま)されてきたが、安倍首相にはその古典の背景について把握していただく必要があろう。

 陳国の独裁下に喘(あえ)いでいた人民を、長江が横たわっているからといって放置するわけにはいかない、と宣言して進軍を命じたのは隋の文帝であった。今日、ウイグル人は100万人単位で再教育センターと称される強制収容所に閉じ込められ、住み慣れてきた故郷から追い出されている状況にあるので、民主主義国家の日本も座視するわけにはいかない。ぜひ隋文帝の故事を習近平主席に伝えて、少数民族を抑圧する政策をやめるよう忠告してほしいものである。

≪尖閣問題の見解を質すべきだ≫

 次に、「水を飲むときには井戸を掘った人の恩を忘れない」と話して毛沢東と周恩来、それに田中角栄首相ら多くの親中派政治家や財界人の名前を挙げて旧情を温めようと回顧するだろう。

 左派だろうと右派だろうと、日本側の「井戸を掘った人」たちは確かに毛沢東に「老朋友」と呼ばれていた。当時の中国は今と同じ「遍(あまね)く天下にわれわれの友人が分布する」と豪語していたものの、実際は遠いヨーロッパにアルバニアしか「友」がいなかった。中でも「社会主義の兄貴ソ連」との対立が深刻化していたので、「米帝」アメリカと握手しニクソン大統領の訪中を受け入れた。日本もニクソン訪中を「頭越し外交」と理解し、不利な局面を挽回しようと外交関係の樹立を急いだ。

 毛沢東と周恩来は「日本人朋友」たちに北方四島の返還を支持し、沖縄(尖閣諸島を含む)は日本の領土だと発言していた。安倍首相も「毛主席の良い学生にして素晴らしい後継者」を自任する習近平主席に北方四島と尖閣諸島に関する見解を質(ただ)した方がいい。「偉大な領袖(りょうしゅう)毛沢東の意志」に背くようなことを習近平主席はしないと期待したいところである。

 ≪「反日」の武器は捨てない≫

 「歴史を鑑(かがみ)に、過去を忘れないようにしよう」と、習近平主席は最後に客人をもてなすのに最もふさわしくない言葉でくぎを刺すのも忘れないだろう。日本は戦後、それこそ毛沢東の「老朋友」たちに代表されるように、真摯(しんし)に反省の態度を示した。そして、中国の近代化建設に貢献しようと、実質上は賠償金である巨額の援助を提供してきたし、民主主義国家として国際社会に寄与してきた。

 むしろ、歴史を意図的に忘却し、過去の真実を闇に葬りさろうとしているのは、中国の方である。およそ1億人に被害がおよび、数百万人もの人々が殺害された文化大革命については、語る権利も研究する権利も今の中国人民には与えられていない。そのような歴史について学ぶ機会がないため、一党独裁下の中国人民は習近平氏が自らの名前を憲法に書き込む暴挙まで許してしまっている。

 文化大革命だけではない。「抗日」の歴史についても中国側に研究を進める気があるならば、ぜひ国民党の戦功についても記述するよう、安倍首相の方から提案してもらいたい。「中国共産党が全国人民をリードして抗日戦争を勝ち抜いた」というのは、神話であって、事実ではないからである。

 中国は今や対米貿易戦で窮地に追い込まれつつあり、北京当局が肝いりで推進する「一帯一路」巨大経済圏構想も行き詰まっているので、対日融和政策に舵(かじ)を切っただけである。いつか勢力を盛り返した将来は再び反日に戻る危険性は常にある。日中国交正常化以来、反日は最も鋭利な武器として隣人に対する牽制(けんせい)として使われてきたので、中国がそれを放棄するとは思えない。中国は不誠実な隣人であるという本質を見抜いた外交を展開してほしいものである。(よう かいえい)

 https://www.sankei.com/column/news/181022/clm1810220003-n1.html
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