下記は、2018.5.27 付の産経ニュース【私の拉致取材特別編(5)】です。
記
《元産経新聞社会部記者、阿部雅美氏と拉致被害者、横田めぐみさんの母、早紀江さんは、拉致問題が長年、解決しない現状について、「異常だ」「絶対におかしい」などと語り合った》
阿部雅美氏(以下、阿部)「昭和のかなり早い時期、朝鮮半島が分断したころから日本社会全体が北朝鮮に対して極めて甘かった。工作員が日本国内でたくさん捕まっているが、すぐに帰してしまう。工作船と同じように、日本がきっちり対応するのが分かれば、北朝鮮も考え方を変えたでしょう」
横田早紀江さん(以下、早紀江)「日本は本当に不思議な国だなと、情けないくらいに思います。日本という思いがなくなっちゃって。悲しいですよ。その犠牲になっているわけですから」
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■産経新聞連載「私の拉致取材 40年目の検証」が書籍化。「メディアは死んでいた 検証・北朝鮮拉致報道」(本体1400円+税、発行・産経新聞出版)が5月23日発売。
阿部「僕はメディアの人間。とんでもない社説や記事が書かれたことも見てきました。そして政府も…。最初は『拉致なんてない。でっちあげだ』と。ところが、それがどうもあった、となると『10人ぐらいの(拉致被害者の)ことで』となる」
《「たった10人で日朝国交正常化交渉が止まっていいのか。拉致にこだわり正常化がうまくいかないのは国益に反する」。かつて、ある外務官僚が言い放った「見解」だが、いかに日朝国交正常化に前のめりになっていたかが分かる発言だ》
■長い間、放置している国
阿部「国民、ましてや13歳の少女が外国の犯罪集団ではなく、国家の意思として拉致された。これに対して、何もできない、しないというのは異常です」
早紀江「うちにも、いろいろな物が届きます。政権を批判するたくさんの手紙もきます。拉致問題をこんなに長い間、放置している国。このままだと、もっと嫌なことが起こるかもしれません。北朝鮮の問題だけではなくて、われわれの経験したような戦争…。何かは分かりませんが、ひどい災厄が訪れる気がしてなりません。拉致問題は次の世代に積み残さないようにしないと。阿部さんは小泉純一郎さんが日朝首脳会談をされた時、どう思われましたか」
阿部「そうですね…。下交渉の経緯や平壌宣言の中身などについて、まったく知りませんでしたから、北朝鮮があんなにあっさり拉致を認めて謝罪するとは思ってもいませんでした。驚きでしたね。ただし、小泉首相が意を決して敵陣に乗り込むわけですから、何も進展がないなどということが、あるはずはない。あってはならない。拉致について包括的な解決への道筋が開かれているのでは、という漠然とした期待感はありました。国民の多くも、同じだったでしょう。それがいきなり『8人死亡』ですから。期待感との落差の大きさに愕然(がくぜん)とした、というのが正直なところです」
■「昔と違う」と言われる
阿部「実は、私は、帰国した方(拉致被害者)にお会いしたことがないんです。蓮池薫さんのお父さんの秀量(ひでかず)さんからは、今も達筆な年賀状をいただきます。1979(昭和54)年に最初に私が(取材に)行ったものですから、『恩人だ』と言っていただいて。でも、まだ(薫さんとは)会っていない。これはお願いなんですが、めぐみちゃんが帰ってきたら、ぜひ会わせてくださいね」
早紀江「これからどうなっていくのか。なかなか、難しいですね。帰国できたら、大変なことだな、と思いますよ」
阿部「めぐみちゃんももう少しで帰ってくる気がしてるんです。どうかご夫妻も長生きされてください。拉致問題はいろいろな偶然が重なってここまできた。もう一回、日本のみんなが大喜びするような偶然が起こる。それをやっぱり、期待しますよね」
早紀江「そういうことが起きれば、日本中が幸せになりますよね。私は今、めぐみちゃんのことだけではなくて、拉致問題がしっかり解決されなければ、もっと良くない方向に行く気がしてなりません。拉致が解決されない日本って本当に、絶対におかしいですよ。それで、私もいろいろ言ってしまって…」
《滋さんは85歳。このインタビューの後の4月初旬、体調を崩して入院した。早紀江さんも82歳。集会や講演などで思いを語る機会はここ数年、激減している》
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http://www.sankei.com/world/news/180527/wor1805270001-n1.html
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