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2018年05月21日10:35

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『呂氏春秋』巻第二十三貴直論

                      巻二十三 貴直論
                        一 貴直
一に曰く。賢主の貴ぶ所は士に如くは莫し。士を貴ぶ所以は、其の直言の為なり。言直なれば則ち枉れる者見ゆ。人主の患いは、枉れるを聞かんと欲して直言を惡む。是れ其の源を障ぎて其の水を欲するなり。水奚に自りてか至らん。是れ其の欲する所を賤しみて、其の惡む所を貴ぶなり。欲する所奚に自りてか來たらん。能意、齊の宣王に見ゆ。宣王曰く、「寡人、子が直を好むと聞く。之れ有りや。」對えて曰く、「意惡くんぞ直を能くせん。意聞く、直を好むの士は、家、亂國に處らず、身、污君に見えず、と。身、今王に見ゆるを得て、家、齊に宅る。意惡くんぞ直を能くせん。」宣王怒りて曰く、「野士なり。」將に之を罪せんとす。能意曰く、「臣少くして事を好み、長じて之を行う。王胡ぞ野士を與うること能ざわるや(高注:「與」は猶ほ「用」なり)。將に以て其の好む所を彰わさんか。」王乃ち之を舍す。能意なる者は、主の側に於いて論を謹まからしめば、亦必ず主に阿らじ。主に阿らざれば、得る所は、豈に少なからんや。此れ賢主の求む所にして、不肖の主の惡む所なり。狐援、齊の湣王に説きて曰く、「殷の鼎は周の廷に陳ねられ、其の社は周の屏に蓋われ、其の干戚の音は(干はたて、戚はまさかり、それを持って舞うこと)、人の游に在り。亡國の音は、廟に至ることを得ず。亡國の社は、天に見わるることを得ず。亡國の器、廷に陳ぬるは、戒めと為す所以なり。王必ず之に勉めよ。其れ齊の大呂をして之を廷に陳ねしむること無く、太公の社をして之を屏に蓋われしむること無く、齊の音をして人の游に充てしむること無かれ。」齊王受けず。狐援出でて國に哭すること三日、其の辭に曰く、「先づ出づるや、絺紵を衣(「絺」(チ)は葛布、「紵」
麻布、共に粗末な衣の意)、後れて出づるや、囹圄に満たされん。吾今、民の洋洋然として東に走りて處る所を知らず。」齊王、吏に問いて曰く、「國に哭するの法は若何。」吏曰く、「斮らん(高注:「斮」は「斬」なり)。」王曰く、「法を行え。」吏、斧質を東閭に陳ね、之を殺すことを欲せずして、之を去らしめんと欲す。狐援聞きて、蹶往(「蹶」はつまづくこと、つまづきながら行く)して之に過る。吏曰く、「國に哭するの法斮らる。先生の老たるか昏せるか。」狐援曰く、「曷為れぞ昏せんや。」是に於て乃ち言いて曰く、「人有り、南方自り來たり、鮒入して鯢居す(「鮒」はふなで小魚を指し、「鯢」(ゲイ)は山椒魚で大魚を指す、低い身分でやってきて高い地位を得て居座っている貌を言っている)。人の朝をして草と為り、國をして墟と為らしむ。殷に比干有り、呉に子胥有り、齊に狐援有り。已に若き言を用いず、又之を東閭に斮らんとす。斮るに毎る者は(高注:「毎」は猶ほ「當」なり)、吾を以て夫の二子に參せしむる者か。」狐援は斮らるることを樂しむに非ざるなり。國已に亂れ、上已に悖る。社稷と民人を哀しみ、故に若き言を出だせり。若き言を出だすは平論(平常の論)に非ざるなり。將に以て敗を救わんとするなり。固より危うきに嫌し(高注:「嫌」は猶ほ「近」なり)。此れ觸子の之を去る所以なり、達子の之に死する所以なり(觸子、達子共に湣王の臣)。趙簡子、衛の附郭を攻むるに、自ら兵を將う。戰うに及びて、且に遠くに立たんとし、又犀蔽屏櫓の下に居る、之に鼓すれども士起たず。簡子、桴(フ、ばち)を投じて歎じて曰く、「鳴呼、士の遬弊すること(「遬」は速やか、「弊」は疲れる)一に此の若きか。」行人燭過、冑を免き戈を横たえて進みて曰く、「亦(「唯」の義に読む)君の不能有るのみ。士何の弊することか之れ有らん。」簡子艴然(顔色を変えて怒る貌)として色を作して曰く、「寡人の使う無くして、身自ら是の衆を将いるや、子親しく寡人の無能を謂う。說有らば則ち可なるも、說無くんば則ち死せん。」對えて曰く、「昔吾が先君獻公は位に即きて五年、國を兼ぬること十九、此の士を用いたるなり。惠公は位に即きて二年、淫色暴慢にして、身は玉女を好む。秦人我を襲い、絳を遜去すること七十(絳の都を去ること七十里)、此の士を用いたるなり。文公位に即きて二年、之を底(いたす)すに勇を以てす。故に三年にして士盡く果敢なり。城濮の戰い、五たび荊人を敗り、衛を圍み曹を取り、石社を抜き、天子の位を定め、尊名を天下に成す。此の士を用いたるなり。亦だ君の不能有るのみ。士何の弊することか之れ有らん。」簡子乃ち犀蔽屏櫓を去りて、矢石の及ぶ所に立ち、一鼓して士畢く之に乘ず。簡子曰く、「吾、革車千乘を得ん與りは、行人燭過の一言を聞くに如かず。」行人燭過は能く其の君を諫めたりと謂う可し。戰鬭の上、枹鼓方に用いらる。賞は厚きを加えず、罰は重きを加えざるに、一言にして士皆其の上の為に死するを樂しむ。

                         二 直諫
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