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2018年02月14日07:42

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復刻版 角が有る者達 case6

果心とシティの『怖ーい』ハロウィーン

注意

作者『この小説には作者デストロイヤーが多数含まれています。作者の皆さんは余計な茶々をいれたり、果心プギャー( ´∀`)と笑わないように…おや、誰か来たようだ』

注意、終了。



司会『それでは皆さんお待たせしました!
コスプレコンテスト、始まりまーす!!』

ワアアアアアア!!!

観客席の部分が暗くなり、逆に会場の照明が明るくなる。
ーーーー遂にコスプレコンテストが始まるのだ。
『イカレた帽子屋』の服を着た司会しかいない舞台を見て、左端の席に座った果心はフッと笑う。
ちなみに着物姿だ。

果心「頑張りなさいよ、シティ。
この舞台で思い切り輝いて、偽物魔女、カータ・ガーナやミイラを見返してやりなさいよ…」

その右隣りでペンシがフッと笑う。

ペンシ「頑張るんだぞ、ケシゴ。
この舞台で思い切り輝いて、私と一緒に漫才コンビ『ペン消し漫才』で舞台に立つチャンスを掴むんだ…」

その右隣りで白山羊が舞台をみつめている。

白山羊「頑張って笑われなさいよ、黒山羊。
この舞台で思い切り笑われて、一度は自分の存在がどれだけ恥なのかよく理解しなさいよ…」

その右隣りでガーナが心配そうに舞台を見つめている。

ガーナ「ダンクさん、頑張って下さいね…」

暗くなった観客席にざわめく声。
二つの条件は隣りの人間の存在を掻き消すのには充分な理由であった。
そして、ハイテンションな司会の声が響いてくる。

司会『サァ〜それでは選手入場デス!張り切っていきまショウ!
 皆さんドウゾ〜〜〜〜!!!』

ワアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

観客席から一際大きな歓声が上がり、選手達が次々と入場してくる。
……ただし、全員黒いローブを被っている上に真っ白い仮面を被っているので、誰が誰か分からない。

観客「あれ?顔が見えないぞ?」
観客「誰だ?誰だ?誰だ?」
観客「何であんなマスクとローブを?」

司会『フフフフフフ、皆サン誰が誰だか解らず困りのようデスネ〜〜。
ここにいる彼等は皆、自分の好きなコスプレを着ていきマシタ。
そして一人ずつ前に出て、自分の衣装についての自己PRをしてモライマス。
 制限時間は三分。
三分の間に、自分の素晴らしさを沢山伝えまショウ!!審査員はここにいる観客達百人と、専門の審査員5名の投票で決まりマス!』
果心「フフ…。
これはいい演出ね。シティの素晴らしさを一番良い時に見せる事が出来るわ」
シティ(……………)
司会『それでは、張り切っていきまショ〜〜〜!
 マズは…『ボクド・ラエモン』選手カラ!」

司会が選手名を宣言するとフード集団の中から一人飛び出してきた。

ボクド・ラエモン「やったぁ、一番乗りだよ!
 ワクワクするなあウププププ!
 僕の名前は「ボクド・ラエモン」です。
この服は有る漫画の主人公、『のび』」
果心「あら、シティは(選手リストをパラパラめくり、)…一番最後なのね。
 オオトリとは素晴らしいわ。…でもプレッシャーも大きいから心配ね」
ペンシ「ハサギは……次の次か。
 早いな…いや、早い方が審査員に目立てるな」
白山羊「黒山羊は真ん中らへんか。
早く来て、笑われなさい…」
ガーナ「ええ〜と、ダンクさんは…。
最後の手前ですか、結構後なんですね」

ボクド・ラエモンの話しは彼女達には届かなかった。皆自分の相棒を気にしていたからだ。
 そして数分後…。

司会『ハイ、ありがとうございま〜す!
『オマエハモウ・シンデルセン』さん、ありがとうございました〜〜!』
オマエハモウ・シンデルセン「俺はただ…さまようだけだ。
エェェイメン…」

ワァアアア!!!

司会『次は誰だ、次はダレカ?次は〜〜!
 白岩ケシゴだ〜〜〜!』
ケシゴ「…俺の出番か。さっさと終わらせ…!
な、ペンシ!?」

ケシゴがフラフラと舞台に上がり、観客席を見るとペンシの姿が見えた。
…プラカードを楽しそうに振り回しているペンシが、目立って見えた。

ケシゴ(何をしているんだあいつは…)

プラカード『ケシゴ!ここで目立てば漫才芸人への道が開ける!頑張ろう!
 と言うわけで、自己紹介は漫才「ペン消しクラブ」の片割れ『ケシパンダ』でお願い♡』

ケシゴ(何を考えているんだあいつは。大体俺達警察だろうが!)
「……………………………」
司会『ケシゴさん?』
ケシゴ「おっと失礼。少し考え事をしていた。
 俺の名は白岩ケシゴ。
 コスプレ元は…………パンダだ」

勢い良くフードとマスクを脱ぐと、着ぐるみパンダの格好をしたケシゴが立っていた。
 数人の客が「おお〜!」と叫び、その他大多数の客が馬鹿笑いした。
……もし芸人としての登場なら、最高の舞台だっただろう。

ペンシ「な、なにいいいぃ!??
 け、ケケケケシゴおおおぉぉぉ!!!!」

観客席からの絶叫。それは周りの声に消されて聞こえなかった。

司会『ありがとうございマス!
 それではケシゴさん、この服の自己PRをお願いシマス!』
ケシゴ「ああ、パンダだ。」

…………………………。

司会『あの、他には?』
ケシゴ「ない。パンダだ。
…これ以上の説明があるか?」

……………………………………………。

司会(ま、負けない!
 ここで負けたら名司会者としての名が廃る!)
『いえ、どんな作りだとか素材はなんなのかとか…知りたいんですけど……』
ケシゴ「ん?何だ、自己PRとはそう言う事を話すものなのか。
 …このパンダの素材は生だ。本物の毛皮を使っている。」
司会『え!これ本物なんですか!?』
ケシゴ「まあな、俺は『動物使いの天才』。
 だからパンダ本人に許可を貰ってこの毛皮を作って貰ったんだ」

へえ、ほう、と観客席で感嘆の声が聞こえる。
司会もこれはもしや?と思い更に深く聞いてみる。

司会『動物使いの天才ですか、特殊な才能ですねえ、しかし本物の毛皮では暑苦しいのではありませんか?』
ケシゴ「その点は心配いらない。
 この着ぐるみには間に水が流れていて、常に着ぐるみの暑さを調節出来るんだ。」
司会『ほ、ほ〜服の中に水を流す?それで大丈夫何ですか?』
ケシゴ「ああ、宇宙服の技術を少し使わせて貰った。この着ぐるみは、見た目以上に結構使えるぞ」

おおおお〜〜と観客が驚く。
見た目はバカ丸出しのパンダ着ぐるみだが、中身は凄かったのだ。少しずつ観客に中で「凄い」や「驚いたな」という声が聞こえてくる。
それを聞いたペンシはフッと笑う。

ペンシ「ふ、フフフフフ…。
 確かに芸人舞台作戦は失敗したが、このまま巻き返していけば、後に芸人としてデビューする時有利になる。まだだ、まだまだ行けるぞケシゴ!」

その後もケシゴのたどたどしくも凄いスピーチが続き、観客達を大いに沸かした。

ワアアアアアアア!!!

司会『はい、三分たちました〜〜!
 ケシゴさん、どうもありがとうございました〜〜!』
ケシゴ「む、もう終わりか?
…まあ、後は君たちに任せよう。もし俺のスピーチを楽しめたなら、どうかその一票を俺に投票して欲しい」

ワアアアアアアア!!!

パンダさんはあくまでハードボイルドな雰囲気を醸しながら舞台を降りました。

シティ(あのパンダ…意外にやるじゃない。
どうしよ、緊張してきちゃった…)

自分の右手が小刻みに震える。
 命を賭けた戦いをするわけでも、自分が何かを失うような恐ろしい状態でもないのに…体がガタガタと震えている。

 大丈夫だろうか?
 皆が自分を笑わないだろうか? 
 嘲り罵り呆れ、自分にそっぽを向いてしまうのでは無いだろうか?
 あの時の…私がまだ、『ただの』金持ちの娘だった、あの時のように…私は集団の中の人形になってしまうのだろうか?自分を殺し続けなければいけないのだろうか?
怖い。怖い。私は、誰にも認められないのが怖くてた

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

シティ「!!」

 不意にシティは我に帰り、辺りを見渡す。
 周りは仮面を被った、自分と同じ待機組が舞台を眺めている。

シティ(…そうだ、今は舞台に集中しないと。
勝たないと。優勝しないと。
自分を信じた果心の期待に、しっかり答えるためにも頑張らないと…)

果心は誰にも見られないよう、小さく拳を握りしめた。
その様子を、一人の待機組がじっと見ていた。
そして声を掛けようと手を伸ばしたが…震える拳が視界に入り、その手を止めて、他の待機組と同様に舞台を見ていた。

 舞台では、司会者が相変わらずのハイテンションでコンテストを進行している。
 何故かシティは、それがとても羨ましく思えた。

司会『さぁ〜〜盛り上がって来マシタ!
次は〜黒山羊だ〜〜〜!!』

ワアアアアアアアアアアア!!!

黒山羊「我、出番!
 百万円、優勝、絶対獲得!!
白山羊、主、絶対歓喜!
我、頑張る!」

そう言いながら黒山羊はのっしのっしと歩く。
そして身長は3メートルもある黒山羊がフードを被ったまま舞台の中央に立った。
その姿に観客達はざわめいている。
その中で白山羊は涼しい顔で舞台を眺めている。 しかしその口元はロボットとは思えないどす黒い笑みが見えていた。

白山羊「遂に黒山羊の出番ね。
 しっかり笑われて来なさいよ…」
司会『おお〜、素晴らしい体格ですねえ、フードの中身が楽しみデス。
 それでは、フードをとって貰いマショウ!!』
黒山羊「了解…。
 全員、刮目!我が姿!!」

黒山羊は勢い良くフードを剥ぎ取り、空中に放り投げる。

フォト



 観客が最初に見たのは まず顔。
 それは黒い山羊の顔だった。 細長い顔全体が黒い毛で覆われ、黄色い眼が 車のライトのように輝いている。
 頭には二つのクリーム色の角が二本あり、右 側の角は短く真っ直ぐ上をむいているが、 左側の角はとても長いのかぐるりと曲がって おり、まるで子どもが好きなペロペロキャン ディのようだ。
 その中に楕円形の黒い瞳があり、それは観客を見ていた。
 次に目に映ったのは上半身。
 黒い毛で覆われたその体は人型で、筋肉隆々 の男性みたいだ。
  ただ右腕が肩の部分から銀色の機械で出来て おり、指の先の部分まで精巧に銀色の機械で 作られている。
 それはこの怪物が野獣(ビースト)ではなく 機械人形(ロボット)のようであった。
、余りにも人間そっくりな姿の ロボットが浮かぶ。 だがこの黒い怪物はそれと同等な存在とはと ても思えない。
 最後に下半身。
  そこは紺色のジャージを着ていた。 足には二本の蹄があり、あれで踏まれたら鋼 鉄にさえ穴をあけられそうだ。
 そして、全長は3メートルもある怪物が完全に姿を現 した。

司会「………………………………」
観客「………………………………」

 全員、絶句。
 あのハイテンションな司会者さえも、言葉が出なくなった。
予想外の反応に首を傾げる二人。

黒山羊(メ?
 何故、全員、沈黙?)
白山羊(あ、分かりました!
 きっと黒山羊のあまりの馬鹿らしさに言葉を失ったのね?
 これで『黒山羊を笑わせて恥をかかせる』私の作戦は成功)

 その時観客席から小さなざわめきが聞こえる。

観客「す、すげえ…」
観客「なんてこった…」
白山羊「え?」

舞台の方でも観客と同じように司会者が小さく呟いた。

司会『す……』
黒山羊「す?」
司会『すうんんんばらしいイイイ!!!!』

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

観客達の興奮はMAXに達した!! 
司会者も唾を飛ばしながら狂ったように喋り立てる。

司会『凄い!凄い!凄い!
 なんて凄い!なんという怪物さ! なんというインパクト!なんという衝撃! 我々は、コスプレにおいて『被り物』をばかばかしく想う者がイタ!!私の中にも僅かではあるがそれは確かに存在シタ! だが!だがしかし!!
 かつてこんな素晴らしい怪物の被り物を、私は見た事がない!! まさに大番狂わせ!!これは凄いぞ〜!かっこいいぞ〜!! うぉ〜〜〜〜〜!!司会者やってて良かった〜〜〜〜!!!』

ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

観客達は興奮のあまり猛りだす。
対して白山羊は凍り付いている。

白山羊(え?え?え?
 な、何故?)
黒山羊「メ?メ?メ?
 な、何故…?」
司会『いや。もう何も語らなくて良いぞ黒山羊選手!!!
 君が語る全ては、この被り物が語っている!
 これは、とても素晴らしいものだ!!
 皆もそう思うナ?
粉砕、玉砕、第喝采ー!!!』

ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

司会『聞こえるか黒山羊選手!!!
 この叫びは君の姿によって生まれたのだ!君の努力が彼等のコスプレ魂に火をつけたのだ! かく言う私も司会者でなければ叫んでいたダロウ!!
 皆さん、黒山羊選手に盛大な拍手を!!!』

ワアアアアアアアアアアアアア!!!
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ !!

 観客達は立ち上がり、拍手を鳴らす。通称、スタンディング・オベレーション。
 ただ顔を見せただけなのに、まるで優勝が決まったかのような盛り上がりだ。
 その中で凍り付いている4人の女性。

ペンシ(な、なんという盛り上がりだ…これではケシゴが負けてしまう…。
 漫才コンビが作れなくなる!)
果心(や、やられた…。
 これはマズい流れだわ…。
黒山羊選手の姿が凄すぎて周りの観客達がより凄い怪物姿を期待するようになってしまう!
逆に後続の選手は観客からのプレッシャーにより、戦意喪失してしまう!
 シティ、まけないで!)
ガーナ(ダンクさん…負けないで!)
白山羊(う、嘘でしょ?
なんでこんなに目立っているの?
これじゃあ、『黒山羊を笑わせて虐める』私の作戦が台無しじゃない!)

そして、舞台裏でも凍り付く待機組。

選手「おいおい、なんだよアレ…」
選手「勝ち目ねえよ…」
選手「出ただけであの盛り上がりようとか、マジ勘弁してくれよ……」
シティ(う、うわああああ!
無理!早く逃げたい!
誰か助けてー!)
ケシゴ(ち、不味いな…。
俺のパンダが優勝できなくなる!)
ダンク(…………………あれ、コスプレとしてみとめられるのか?
 一応、すっぴんだよな…)



舞台の中でも外でも様々な思惑が交差する。
しかし大会は進む。進んでいく。
黒山羊が優先になったまま……進むのだ。

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