〔中国人・台湾人の名前〕 *各社バラバラ
・朝日新聞 漢字+中国語よみ 例) 胡錦濤 (フー・チンタオ)
・産経新聞 漢字+日本語よみ 例) 胡錦濤 (こ・きんとう)
・読売新聞 漢字表記のみ 例) 胡錦濤
〔韓国人・朝鮮人の名前〕 *各社共通
・朝日新聞 漢字+韓国・朝鮮語よみ 例) 李明博 (イ・ミョンバク)
・産経新聞 漢字+韓国・朝鮮語よみ 例) 李明博 (イミョンバク)
・読売新聞 漢字+韓国・朝鮮語よみ 例) 李明博イミョンバク大統領
2 韓国人・朝鮮人の名前を韓国語・朝鮮語よみするようになったのは、1984年の全斗煥韓国大統領の来日がきっかけだという説がある。
ネット上では、韓国政府から韓国人の名前を韓国語よみするようにとの要請があり、当時の安倍晋太郎外務大臣がそれを受け入れた、という書き込みが多数みられた。
実際、全斗煥大統領の名前もそれまでは 「全斗煥 (ゼントカン)」 と日本語よみされていたものが、来日を機会に 「全斗煥 (チョンドファン)」 と韓国語よみで表記されるようになったということだ。
3 韓国人の名前の読み方については、
司馬遼太郎の著書 『 街道をゆく28 耽羅紀行 (たんらきこう)』(朝日文庫)
に、興味深い記述があるので、それを引用する。
(耽羅とは、現在の済州島の事:ゆうすけ註)
(45ページ)
漢字文化圏にあっては、字が中心であり、それをどのように音にするかとなると、じつは音(おん) も訓(よ) みもどちらでもいい。 ひとの姓名についても、文字をまちがうと不愉快がられるが、音や訓みをまちがったところで、失礼にはならないのである。
だから、中国人の姓名も韓国・朝鮮人の姓名も、日本人が、隋・唐以前の百済音(呉音) で音じてもよく、唐の長安の音(漢音) で音じてもいい。
「現代中国音で音じよ」
というような中国人はひとりもいない。 中国人は、漢字の音がどういうものかということをよく知っているからである。
日本の九州に住む牧師の崔さんが、
――日本で放送される韓国人の姓名は韓国音でよむべきだ。
として訴訟にまでもちこまれた。 これは漢字の本質や漢字文化圏のながい伝統からとびはなれすぎた考え方で、漢字の本質をよく知っていた李氏朝鮮のころの知識人ならそういうことを言わなかったにちがいない。
むろん、韓国・朝鮮の姓名の表記が、表音文字に変わってしまえば、ぺつである。 韓国・朝鮮ともに漢字が制限され、文章はハングルというすぐれた表音文字で書かれているが、しかし人の姓名の表記はなお漢字である以上、地方地方 (中国とか日本とか) の音(おん) でよんでいいのである。
引用終わり
この文章は週刊朝日に今から31年前の1986年に連載されたものだが、行間からは崔牧師に対する司馬遼太郎の 「苛立ち」 が感じられる。
司馬先生は、中国人の名前を 「『現代中国音で音じよ』 というような中国人はひとりもいない。 中国人は、漢字の音がどういうものかということをよく知っているからである」 と、中国人を高く評価しているが、そうすると、朝日新聞が 「胡錦濤 (フー・チンタオ)」 とか 「習近平 (シー・チンピン)」 のように中国人の名前を中国語で音(おん) じるようになったのは、いったいどういう理由からだろう?
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