mixiユーザー(id:6002189)

2016年11月02日14:44

265 view

激震!英国EU離脱へ(4)


 フランス、オランダ、イタリア、ドイツなどで反EUポピュリスト政党が支持率を高めている背景にも、「EUによる国内政治への介入」への庶民の不満がある。そしてEU離脱というドラスティックな道を英国民に選ばせたのは、2015年の難民危機だったのである。
 EUを揺さぶった激震は、英国の「離脱宣言」で終わったわけではない。今後ヨーロッパでは、フランスやオランダなどでも、英国の真似をしてポピュリスト政党が国民投票によって、EUもしくはユーロ圏からの脱退を目論む可能性がある。すでに両国の極右政党の党首たちは、英国同様の国民投票の実施を求めている。BREXIT(英国のEU離脱)が、他国にまで飛び火する危険が強まっているのだ。ヨーロッパでは、EUの空中分解を真剣に懸念する声が出されている。
 一方、スコットランドが英国からの独立をめざしたり、カタロニアがスペインから独立を計画したりする動きも強まろう。
 私が住んでいるドイツでは、幸い全国規模の国民投票が禁止されている。スイスのような直接民主主義は、議会を中心とした代表制民主主義を侵食する危険があるからだ。これに対し、右派ポピュリストの間では、国民投票を多用した直接民主主義を支持する者が多い。
 難民危機を背景としたポピュリズムの高まりは、ヨーロッパの地政学的リスクである。EU政府に相当する欧州委員会は、自らを大改革することによって、市民の信頼を回復しなくてはならない。そして、「EUや、政治・経済統合の利点は何か」という市民の問いに対して、分かりやすい答えを準備しなくてはならない。欧州の庶民たちの間では、政財界、学界のエリートたちと異なり、「ヨーロッパ人」という意識が希薄だ。市民が「EUにおいてけぼりにされた」という感情を抱き続ける限り、BREXITのような事態の再発は否定できない。
 1990年以来、政治・経済統合や、中東欧への拡大を急速に進めてきたEUにとって、約20年間続いた黄金時代は終わったのかもしれない。
 英国のEU離脱という歴史的な大変動をきっかけに、日本企業にとっても、対欧州戦略を練り直す必要が生じるかもしれない。地政学的リスクを念頭に置きながら、今後のヨーロッパの動向を注意深く観察することが重要だ。

(文と絵・熊谷 徹 ミュンヘン在住)筆者ホームページ: http://www.tkumagai.de



 
 

8 1

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する