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2016年05月30日16:24

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母からの手紙

昨日、那覇の美術館に行って来た。
観覧したのは、文化勲章記念「志村ふくみー母衣への回帰」展。

最初、最終日にしては観客が少ないように思えたが、列品解説が近づくとドドッと人が集まって
来た。５０人ぐらいかな。殆どが女性で、中にはベビカーで子ども連れの若い夫婦も。

解説者は、どうやらお弟子さんようだった。

昔、日本伝統工芸展（日本橋三越）で何度か作品を拝見したことがあるけれど、今ではまるで
浦島花子？になっている私。だから、とても新鮮な思いで見ることが出来た。

まず目に入ったのが、この展覧会の為にお弟子さんと共に織られたという「母衣曼荼羅」
場内圧巻のタペストリーとして飾られ、図録やＤＭ、立て看板のデザインとなった図柄だった。

藍染めの糸は、お母上様の残したぼろ糸も使用だとか。
ボロに母衣の字を架けた命名だったような・・・

会場に数か所、壁に飾られてあったのがふくみ氏手書きの額。
むろん著書がたくさんおありで、文筆家としても名を馳せていらっしゃる染色家。
余り拝読をしてない私でも、あふれんばかりのことばの連なりと丹精な文字から十分にお人柄
を察することができた。

今回初めて分かった事は、お母様小野豊やお兄様からの影響、はたまたものづくりの原点の薫
陶受け、生涯の師と仰いだのが黒田辰秋だったことなど。
会場には、黒田辰秋（木工）楠本憲吉（陶芸）などの作品もあった。

草木染の素材には藍、一位・梅・玉葱・紅花・紫根・茜・桜・渋木・刈安など多くの植物の名前。
自然が生み出す日本の色の美しさと、日本人の織りなす手仕事の崇高さに改めて魅せられて、
私は会場を後にした。

五月は３２℃にもなっている沖縄。
今朝は天気雨が少し降って、シマトネリコの白い花を濡らした。

志村ふくみ展を鑑賞し、まだその余韻冷めやらぬ中、
私はふと、昔コブナグサ染や柿皮染をしたことを思い出して、箪笥の中を探してみた。

これでは、と思い当たったのがメッシュの袋。
中に納められた布をそっと引き出すと、真っ先に目に触れたのが、

あら、まぁ、

母さんの手紙！！

それは、紛れもない、今では二つとない形見となった母からの手紙。
懐かしや。
何気なく文字を追っていたら急に涙が込み上げてきた。

紙の裏を見ると、それは片田舎の平成７年の「秋の感謝祭」のチラシ。
いかにも大正生まれの母らしい。

今では、その手紙の縁はすっかり茶色に色あせていた。

読み進めた先には・・・
末文の「皆様、元気に丸く笑ひながらお働き下さるように」の母の文字。
なぜか、せつなくて、せつなくて、涙がこぼれ落ちてしまった私。

浮かんできたのは、割ぽう着を身につけた母の着物姿。
そして、今では叶わぬ母の笑顔。

母が逝ってまる一年。
まるで、天国から再び手紙をもらったような、そんな気がした。

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