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2016年02月28日21:15

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GDP世界一は幻想か 米国に引き離された中国 上海支局長・河崎真澄

 下記は、2016.2.28 付の産経新聞【日曜経済講座】です。

                       記

 早ければ2020年にも中国の国内総生産(GDP)がドルベースの名目で米国を追い抜き、規模で世界一の経済大国になるという「米中GDP逆転劇」の予測に黄信号がともり始めた。GDPを年間いくら積み増したかとの金額からみて、中国は07年から8年連続で米国を上回って追い上げてきたが、15年は再び米国に引き離されたからだ。このままなら、中国に楽観的なエコノミストらが描いた米中逆転劇は幻想に終わる恐れもある。

 米中のGDP増大額の差は07年から14年まで中国が優勢だった。リーマン・ショックの影響で米国がマイナス成長に陥った08年や09年に加え、中国が巨額の財政出動を行った結果、バブル化した11年には、中国の増大額が米国より8千億ドル以上も上回った。「チャイナ・アズ・ナンバーワン」と世界にもてはやされた時期だった。

 米中逆転は遠くないとの予測もなお根強い。米中GDPの規模を比較すれば、05年に中国の名目GDPは、米国の17・3%でしかなかったが、日本を追い越して世界第2位の経済大国にのし上がった10年には39・8%に伸び、15年には米国の62・4%まで接近した。10年前には米国の5分の1にも満たなかった中国のGDPは、気がつけば3分の2近くまで拡大したのだ。

 中国は習近平指導部が「新常態(ニューノーマル)」と名付けた成長鈍化時代に入った。それでも、世界的にみればなお高水準だ。GDP成長率が6・9%だった15年、米国より少なかったとはいえ4390億ドル増えた。これはマレーシアの14年の名目GDPの3383億ドルを大きく上回っている。毎年、東南アジアの1つの国に相当する分のGDPを生み出しているとの見方もできるだろう。

 ただ、習氏が中国共産党総書記に就任した12年、中国に異変の兆しがみえた。GDP成長率は物価変動の影響を除いた実質で11年までの10%前後から一気に7%台まで下降。習氏が国家主席に就いた13年には横ばいだったが、14年、15年とジリジリ成長鈍化が続いている。米国を追い上げるパワーも息切れし始めたようだ。

 このまま米国に引き離されるのか、それとも中国が成長スピードを取り戻すのか。16年から始まる中国の「第13次5カ年計画」にカギがある。

 習指導部が初めて独自策定する経済政策で、3月5日に開幕する全国人民代表大会(全人代=国会)で20年までの5年間の成長率目標を設定する。すでに、李克強首相らが国際会議などで示唆しているように、16年から20年まで「年6・5%以上」、あるいは「6・5%から7・0%」と幅を持たせる目標値になりそうだ。目標が正しく達成できれば、逆転シナリオも再始動するかもしれない。

 習指導部が誕生した際、中国共産党は「20年に10年比で名目GDPを2倍にし、国民所得も倍増させる」との目標を打ち出した。人民に向けたスローガンでもあるが、実現には「年6・5%以上」が必要と試算されており、経済実勢よりもまず、スローガンありきの成長目標といういびつな数字だ。このことが習指導部にとって呪縛ともなり、計画経済時代のような管理型の政策を続けざるを得ない。

 ところが、規模ばかり追い求めてきた中国のGDPは、深刻な構造問題を抱えていることが明らかになっている。

 鉄鋼など素材産業や自動車など製造業のほとんどが、需要に基づかない過剰な生産規模、過剰な在庫の山を抱えて青息吐息だ。そこに野放図に融資を繰り返した国有商業銀行も不良債権がいつ顕在化するかおびえる。高度成長を続ける最大の原動力となった貿易は、今年1月まで連続11カ月、前年同月を下回った。

 貿易に代わる成長エンジンとなるべき個人消費は国内で伸び悩み、訪日観光など海外で消費されるばかりだ。

 「第13次5カ年計画」で公式統計を信じるとして、本当に6・5%以上の経済成長を保とうとすれば、抜本的な構造改革を短期に行って国内消費を急拡大させるか、周辺国に余剰在庫を半強制的に輸出する形で不自然な貿易収入を得るか、乗客がいるかどうか不明な高速鉄道の路線をさらに建設するなど財政出動を増やすといった、いずれも手荒な方法を使うしかない。

 最大の課題は、規模よりも成長の質にあることは疑う余地がない。20年までの5カ年計画でいかに構造問題を克服し、安定的な成長路線にソフトランディング(軟着陸)するシナリオを描けるか。米国を追いかける前に実行すべき経済政策は山積している。

 http://www.sankei.com/premium/news/160228/prm1602280027-n1.html
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