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2015年07月11日09:37

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M.ザンデルリンク&ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団

【プログラム】
1 ベートーヴェン: 歌劇「フィデリオ」序曲 Op.72
2 メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64
     〜〜〜休 憩〜〜〜
3 サラサーテ: ツィゴイネルワイゼン Op.20
4 ベートーヴェン: 交響曲第5番 ハ短調 Op.67

《アンコール》
ロッシーニ: 歌劇「ウイリアム・テル」序曲

千住 真理子(Vn)
ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団
ミヒャエル・ザンデルリンク(指揮)

2015年6月29日(月),19:00〜,札幌コンサートホールKitara


来日中のドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会。指揮は2011/12年のシーズンから首席指揮者の座についたミヒャエル・ザンデルリンク。みなさんご存じのとおり,ミヒャエル・ザンデルリンクはクルト・ザンデルリンクの息子。幼い頃からチェロを学び,ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団およびベルリン放送交響楽団で首席チェロ奏者をつとめる。また,2001年頃からは指揮者としての活動もはじめ,チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団,バイエルン放送交響楽団,ドレスデン国立歌劇場管弦楽団など主にドイツ国内のオーケストラに客演しているそうだ。

プログラムからも明らかなように,札幌での公演は,M.ザンデルリンクとドレスデン・フィルハーモニーのコンサートであると同時に,「千住真理子デビュー40周年記念」演奏会が謳い文句になっており,プロモーションのうえでは独奏ヴァイオリニストのウエイトが高い。ギャラが高額なオーケストラの演奏会に伴う興行上のリスクを減らすため,集客力の高い千住真理子をソリストに迎え,演奏会の前半と後半にヴァイオリニストが主役になる曲目を選んだと考えられる。

実は,この公演を聴こうかかなり迷った。当初,この演奏会はパスするつもりだった。しかし,過去に一度だけ聴いたことのあるドレスデン・フィルハーモニーを再び聴きたくなったことが決め手となった。前回,このオーケストラを聴いたときの印象はあまり芳しいものではなかった。ドレスデン国立歌劇場管弦楽団(SKD)と響きは似ているものの,演奏水準はかなり劣る。ただし,一度聴いただけで,このオーケストラの力量を決めつけてしまうことに,多少ためらいを持っていたのも事実である。このような事情が背後にあって,最終的に聴きに行くことにした。

今回,あらためてドレスデン・フィルハーモニーの演奏を聴いて,前回よりも印象は好くなった。SKDには及ばないものの,可能性を秘めたオーケストラだという印象を持った。ドレスデンのオーケストラらしい重量感のある響き,各パートも決して悪くはない。

有能な指揮者が振れば,演奏は一変するだけの潜在的な能力を持っていると感じた。「フィデリオ」序曲は,エンジンが始動した直後でアンサンブルが乱れる場面もあった。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲では,そつなく伴奏に徹していたように思う。「ツィゴイネルワイゼン」も基本的にはメン・コンと同じだが,この作品のオーケストラ・パートの貧弱さを露わにできる実力は備えているようだ。ベートーヴェンの第5番で,これまでセーブしていたエネルギーを一挙に放出するような演奏を披露してくれた。曲の彫琢やアンサンブルに甘さはあるが,これはオーケストラの責任というより,指揮者のせいだろう。指揮者の力量に応じて,さまざまなレベルの演奏をなしうる能力を備えたオーケストラのようである。

トスカニーニやアーノンクールなど,チェリストから指揮者に転身して成功した音楽家はいる。ミヒャエル・ザンデルリンクの指揮者としての実力はどうなのだろう。この日の演奏から判断する限り,もう一度聴いてみたい指揮者とはいいがたい。最後の詰めが甘いように思う。やはり,音楽を把握する能力の問題なのだろう。それから,オーケストラを意のままに操るという点でも,甘さがあるのではないだろうか。どこか,空回りしているように見えなくもない。

「オーケストラに良いオーケストラも悪いオーケストラもない。ただ,良い指揮者と悪い指揮者がいるだけ」という趣旨の格言めいたものを,むかしどこかで読んだ覚えがある。この日の演奏を聴いて,久々にこの言葉を思い出した。

ヴァイオリン独奏者についてのコメントは,差し控えることにします。そもそも,彼女の演奏を聴きに行ったわけではないので。

ただ,ひとこと付け加えたいのは,ホール内を見回すと,チケットの半分近くが売れ残っていたように見えたことだ。彼女の集客力のマジックにも陰りが見え始めたということだろうか。もちろん,小品ばかりを並べたリサイタルであれば,多少話は変わるのだろうが。経済状況も大きく影響していることは間違いない。チケットの価格により敏感に反応する傾向は,年を追うごとに強くなってきていると思う。

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