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2015年04月02日21:20

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『雲切仁左衛門2』

 なんとなく第一回を見たら、ちょっとびっくりするぐらい説明を省いていて驚いた。もうずっとその傾向が続いているけれど、テレビは「おもしろくない」より「わからない」と言われることを忌避するので、興を削ぐことになっても過剰に説明をしがちである。しかし、このドラマはあまり説明をしない。
 張りこんで見張っている二人組を映すシーンでは、
「あーあ。やっこさん、とっとと姿を現さねえかなあ」
「いちいちご託並べてねえで、きちんと見張んな。見逃したらただじゃおかねえぞ」
 ぐらいの掛け合いをさせて、この二人がなにをしているか念を押すのが通例だが、ただ映すだけですぐ次のシーンへいってしまう。
 新しい人物が登場した場合も、他人とのなんらかのやりとりでその人となりについて説明するのがお約束というもので、そこは説明フレーズを挟めばどうにかなる文章とは違う、映像のちょっと厄介なところではあるのだけれど、そこらへんもテロップをひょいと入れて進めてしまう。こういうテロップの入れ方は賛否両論あるところかもしれないけれど、なにより語り口のテンポを優先した演出らしかった。

 こうしてスピーディーに語られる雲切仁左衛門とそれを追う火付盗賊改方長官・安部式部の駆け引きは、さすがに迫力があって引きこまれる。前シリーズの見逃しを後悔してしまったぐらいだけれど、後半、仁左衛門の復讐がストーリーのメインになってきてからは失速したように感じた。

 目を引いたのは捕り方の描写で、このドラマでは姿勢を低くして静かに忍び寄ってくる。昔の時代劇では、提灯を高く掲げ「御用だ御用だ」と連呼しながら、一目散に駈けてきたと記憶している。頼もしい存在ととらえるか、強権的で横柄ととるかは劇中での位置づけによるけれど、いずれにせよ公的な存在として描かれていた。しかし、このドラマでは捕り方も盗賊団と等しく、暴力装置として相対化されている。いかにもバットマンの『ダークナイト』以降っぽいと思いながら見たけど、もちろん関係ないかもしれない。でも、時代劇なんてかっちりフォーマットが決まっているもんだと思いこんでいたのに、微妙にトレンドはあるらしくて意外だった。

 でもって、明日からは『神谷玄次郎捕物控2』が始まる。こちらは前シリーズを見ていたのだけれど、正直、出来からして続くとは思っていなかった。
 主演の高橋光臣は『冒険戦隊ボウケンジャー』のボウケンレッドだった人である。なによりも冒険を愛して没頭するあまり、他のことに気が回らず、自分に想いを寄せているピンク(末永遥)の気持ちにも気づかない朴念仁キャラだった。一般に広く認知されるようになったのは、『梅ちゃん先生』の松岡先生だと思うけれど、これもまた同じ傾向の人物だった。
 ところで、『梅ちゃん先生』の脚本・尾崎将也は、阿部寛の『結婚できない男』も担当していて、要するにあの松岡先生はそういう人物を描くのが得意な脚本家と演じるのが得意な役者の合作なわけで、プロデューサーによるタイプキャストの賜物というか、鉄板の物件なのだった。

 一方、神谷玄次郎は、元来は優秀な同心だったにも関わらず、母と妹が殺された事件の探索を上からの圧力で潰されて以来、仕事に熱意をもてずやさぐれている、ちょっと屈折した人物である。演じるのはけっこう難しいと思う。そういう役をやるにあたって、いかなるプランをもって臨むのか、そこを気にしながら前シリーズを見たのだけれど、別になにを考えるでもなく漫然とやっているように見えた。うまくないのは構わないけれど、なんの意図も感じられないのはダメな気がしたので、前シリーズは楽しめなかった。特に変えてきた感じもしないので、本当は見るべきではないのだろうけれども、ハードルを思いきり下げて見るだけは見てみる予定。

 この人、とにかく時代劇にははまる容姿ではある。そういう意味では若手に珍しいタイプといえる。NHKが再び起用したのもそこが最大の理由だとは思うけれど、自分でキャラクターを造形してそれを表現する能力については、個人的に疑義を呈せざるをえないのであった。

 もちろん、こういうものは実際に見てみないとなんともいえない。それはそうなのだ。

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