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2015年01月18日08:25

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山根ばあのビール

小さな里山のふもとに、みんなから「山根ばあ」と呼ばれて慕われているおばあちゃんがいました。93歳で肺気腫になり、いよいよ最期の時を迎えます。

村の人たちが集まってきました。親戚も、東京の子供たちも、みんながおばあちゃんへのベッドを取り囲んでいました。

そして、娘に向かっておばあちゃんは一言、こう言いました。
「先生にビールやっておくれ」

僕はもう、笑い出してしまいました。村の人たちも笑い出して、伝染するように、泣いていた娘さんたちも笑い出しちゃったんです。

そのとき、後ろに方に立っていた村のおじさんが、
「いやぁ、さすがに山根のばあだ。最期の最期まで人のことを気遣って」。

娘さんがわーって泣きだしました。嬉しかったんだと思いますね。おばちゃんも、お葬式でどんな立派な弔辞を読んでもらうより、うれしかっただろうなと思います。もちろん僕なんかほろっときて、目がウルウルしてくるし、村の人たちもなんとなく泣きだして・・・。

一人の人間が最期を迎える。もう93歳の大往生ですからね。自分の畳の上で、大好きな家で亡くなっていく。ちゃんとドクターも来てくれて、看護師さんも来てくれて、子どもたちが集まり、村の人たちが来てくれて、そこでなんだかわかんないけど笑いがあって、そしてその最後に、みんなが涙で最後のお別れをして、いいお別れでした・・・・。

以上、鎌田実先生の講話集からです。先生は長野県諏訪の病院で地域医療に取り組み、病と生活をまるごと診る「温かい医療」を実現された方です。



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