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2006年07月26日17:08

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吉原治良展

東京国立近代美術館でやっている『吉原治良展』に行きました。
チケットは、耽美仲間から貰った招待券です。

吉原氏は、私の知識では、東郷青児氏の随筆(『カルヴァドスの唇』)の装丁をやっている、円をモチーフに描く抽象画家・・・くらいのイメージしかなく、『抽象画あんまり好きじゃないし、大丈夫かなぁ〜』と思って行きました。

行って吃驚。面白かった!!

ピカソだって、初めからキュビズムの画家だったワケじゃないし、当たり前のコトかも知れませんが、彼は、最初から抽象画を描いていたワケじゃないんですね。初期の頃の絵は具象なの。魚が好きだったのか、魚をモチーフにした絵が沢山。

好みだったのは、『水族館』という絵。レンガ塀や木があるところを泳ぐ魚達。幻想絵画みたいです。
『スイゾクカン』という、絵本の挿絵もあったのですが、この絵も良かったです。

最初、あたり触りのない風景画などを描いていたらしいのですが、画家・藤田嗣治に、自分の絵のコメントを求めたところ、藤田氏は「他人の影響があり過ぎる」と指摘。それから彼は、オリジナリティを強く意識するようになったそうです。
確かに、自画像は、ちょっと藤田嗣治チックでした。

その後、1935年辺りから、抽象画を描く様になったみたい。コラージュ作品が結構あったのですが、楽しかった。元々私がコラージュが好きだからかも知れないが・・・。

絵では、『図説』というのが気に入りました。二科展に出品したものの一枚だそうだ。
黒や茶などの波や線や丸。リズミカルで、私は“音叉”を思い起こしました。音叉の音を絵に描いたらこんな感じかなぁ〜・・・と。

展示の中に、引き出し型の展示があったのが面白かったです。
地図を入れておくような引き出しに、作品が入っていて、観覧者は、引き出しを開けて見る形になってるの。コラージュ作品などが多く入ってた。
東郷青児の本もあったよ。

その後、アンフォルメルの先駆的な絵を描いたりするのだが、油絵の素材そのものを見せる為の絵みたいだった。絵の具が厚塗りでベタベタって塗ってある。具象じゃないから、説明が難しいな(^_^;)。

その後、戦争が起こります。
戦争になると、決起高揚の絵を描かねばならなくなったりするんだよね(-_-;)。抽象画はどんどん追いやられてしまったらしい。それでも彼は、菊をモチーフにした面白い絵を描いていた。
全くの抽象じゃなくて、デザイン画みたいだった。
1枚は、単純な線で描かれた菊。もう1枚は、毛糸玉が沢山集まっているような菊の絵だった。
菊=国家だろうから、そういう意味合いもあったのかも知れませんが、それは自分が好きな絵を描く為のカモフラージュかも知れない。
「面白い〜」とか思って、横を見て、ちょっとドキッとする。

そこにあったのは、具象絵。タイトルは『防空演習』。
タイトル通り、防空頭巾を被った人達が、演習をしている絵だった。「あ・・・そうか・・・。戦時中なんだ・・・。」と、現実に引き戻される。

この絵を見た後だからでしょうか、蝶が2匹虫ピンで、荒涼とした大地に留められた『ピンに留められた蝶』という絵は、心に響きました。
灰色の空。茶色の大地。虫ピンで留められた青白い蝶。コレって、吉原氏の心境そのモノなんじゃないのかなぁ〜・・・と。
好きな抽象画も描けなくて、表現する自由がなくて。自分なんて虫ピンに留められた蝶だ・・・そんな気分だったのかなぁ〜・・・と。
私、この絵が特にお気に入りです。

戦争が終わると、今度は、不気味な鳥と人(主に少女)の絵になります。戦後の不安定を表したのかな〜。
『鳥と少女』。少女の片方の目がデカくて、気味が悪い。でもじっと見てしまう不思議〜な絵。

その後、どんどん抽象画になっていきます。多分、吉原治良と聞いて、思い浮かべるのは、この辺り以降の絵なんじゃないかと。

1953年の『作品』という絵。真っ黒い画面にナイフで切りつけたような傷が無数にあるように見える作品。
緊張感があります。

1954年に『具体美術協会』というのを設立して、具体やアンフォルメルの絵を多く描くようになるらしい。

『詩人祭に寄せる絵画』という絵が好き。
鉱物の断面図のような絵。(鉱物を切ると、シマシマになっているのですが、それっぽいの)透き通るような青が美しい。

他は、「左官屋さんですか?」みたいな(笑)、漆喰壁みたいな塗り方の作品なのですよ。コレは実際見ないと、説明が難しい〜。

1960年の『作品』。黒い背景に、朱の絵の具が乱雑(に見える)に塗られている。まるで、人が銃殺された跡みたい。

で、その後・・・晩年というコトになるのでしょうが、円の作品になるのです。
このブース面白かったぁ〜。

円や、漢字の点やハネをモチーフにしたような絵。
何か、禅画みたいなの。凄く大きな作品なのですが、禅画を見てるような不思議〜な気分。
オススメは、円の作品が3枚並ぶ壁の前(作品からは遠のいた方が良い)に立ち、その3枚の円の作品をジ〜ッと見る。
悟りが開けそう・・・。そんな気分になります。
実は、女の子がそうやって見ていたので、真似をしてみた(笑)。

1番最後に、円のスケッチがあったのですが、本当に沢山の円がスケッチされていました。見た感じだと適当に描いてる様にも見えるケド、何回も何回もスケッチして考えて、作品にしたんですね。


近代美術館は、常設展があります。私は行ったコトがなかったのですが、確か、ここには靉光(あいみつ)氏の作品があったと思ったので、それが見たくて常設展も入ったのですが・・・。

行ったコトのある方はご存知でしょうが、近代美術館の常設展って、広いのね(^_^;)。
2〜4Fまでが、常設展なのよ。私1時間くらいしか時間がなくて、もの凄く駆け足で見ちゃったよ(-_-;)。

今村紫紅の絵巻物模写があったり、カンディンスキーの絵があったり、速水御舟の写生図巻があったり、良いモン持ってますね〜、近代美術館。
特集展示というのがあり、古賀春江さんの特集をやってました。古賀さんの絵を見ると、私はいつも漫画家の“丸尾末広氏”を思い出してしまいます。コラージュ・・というか、人物とモノの抜き取り方、組み合わせ方が似てるような気がするんだ。
丸尾氏は、古賀さんの絵をパクッてるイラストもあったような気がするが、気のせいかも知れん。

お目当ての靉光の絵もちゃんとありました。
『眼のある風景』という絵なのですが、臓物のような岩に、目玉一つがド〜ンと描いてあって、非常〜に気持ち悪い絵なんですよ。本当に気持ち悪い。しかも絵をずっと見てると、その目に逆に見られているような気がしておっかない。
でも、私は好きなのです。この気持ち悪く恐ろしい感じが好きなのです。
ポストカード売ってたから買っちゃったよ。でも、人に送ったら、嫌がらせになりそう(笑)。

ポストカードと言えば・・・。
吉原治良氏のポストカード。何で“円”シリーズがないの?
吉原氏と聞いて、真っ先に思い浮かべる絵って、この円シリーズだと思うんだケド・・・。抽象は売れないと思われて作らなかったのかな?ちょっと不満。
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