12/20(火)
サマルカンドの朝。暖かいホテルでゆっくり起床。
この旅始まって、はじめてまともな朝を迎えた気がする。
今日はタシケントへ戻る列車が11:08に出発。
昨晩の天気予報によれば今日のサマルカンドの気温は -12℃/-17℃ 。
通常、短期旅行者である自分は、旅行先では30分でも無駄にしない。
時間のある限り街歩きに出たりするんだけど、昨日以上の極寒が恐ろしくて列車の時刻まで一歩も外に出ないというダメ旅行者っぷり。
昨晩、600mの距離で俺にタクシーを呼ぼうと思わせた寒さはやはり半端ではないです・・・。
フロントの人たちと雑談していたら、もうすぐ俺と同じ列車に乗る他の客を駅まで送っていくとのこと。一緒に乗せてもらえることになった。
他の客というのは、アローナというフレンドリーで美人の女性に、その恋人(?)の変顔ばかりして笑かしてくる面白い男性だ。
これは嬉しい。タクシー代が浮くからではない。通りに出てタクシーを呼び止めるのにかかる数分間がなくなるからだ。そう、一分でも外に出ていたくないのだ。
外には寒さのため動かなくなった車を手で押す人たちがたくさんいる。
息を止めてホテルのドアを開け、車に乗り込んで急いで車のドアを閉める俺。
そして無事、サマルカンド駅に到着。
列車はブハラが始発でこのサマルカンドを通り、終着タシケントへ向かう。
つまり、このサマルカンド駅は途中の駅ということだ。
何が言いたいか、旅好きの方はもう分かるだろう。
列車が遅れて到着するのが当然ということだ。日本やスイスなど、いくつかの例外を除けば、途上国・先進国に関わらず、途中から列車に乗る場合は定刻通り来ないのが当たり前なのだ。
予想通り列車は定刻に来ないわけだが、日本と違って「どれぐらい遅れているか」とか「いつ到着する予定」とかいう情報は一切提供されない。
駅舎にいたら列車が来たかどうか分からないので、客はいつ来るか分からない列車をただホームで待ち続けるしかない。
えっ?ホームで?
氷点下15℃で風がびゅうびゅう吹くホームで?
・・・無理でしょ。
ってなわけでこうなります。
ホームへ上がる階段でみんな立って待ちつづるけるのです・・・。
トイレに行きたい中、いつ来るか知れない列車を待ち続けて立つのはなかなかの苦行です。
まぁ旧ソ連の方々は行列が当たり前の文化で育ってるから何時間でも待ち続けて平気なんだろうけど・・・。
(このまま列車が来ずにタシケント発の飛行機に乗り遅れたら次の飛行機は3日後だったかな?)
(会社に行けないなぁ。)
(というかビザの有効期限が切れるから不法滞在になっちゃうなぁ。)
なんてこと考えながら待つこと30分。
列車は到着。急いで乗り込み、車内のトイレに行こうとしたけど、トイレが閉まっている。
普通の日本人なら焦りそうなものだが、これまで世界中で列車に乗ってきた俺には分かる。
駅に停車中はトイレが使えない国が多いのだ。理由は列車のトイレが単なる穴で、排泄物とトイレットぺ―パーがそのまま線路に落ちる仕組みだから。ホームの前が汚れたら嫌だもんね。
日本の現在の列車はそんな仕組みを採用してるところはないと思うけど、イタリアレベルの国でもこのタイプのトイレ、田舎に行けば見かけます。
列車はサマルカンドを32分遅れで発車。
寒いだけで雪はないと思っていたウズベキスタンだが、途中は半分近く雪景色だった。
さて、昼ごはん用に買っておいたサマルカンドナンを食べよう。
相変わらずでかい。メロンパンを四つ並べたぐらいのでかさだ。
昨日のほうが美味しかったが、まぁこれも合格ライン。とはいえ、食べきれるはずもなく、半分ほど残して捨てることになるんだけど・・・地球の歩き方にこういう記述がある。
「ナンは中央アジアの主食で非常に尊ばれる。ナンを裏返しに置いたり、地面に捨ててはいけない。落ちているのを見つけたら拾い上げ、キスをし、額に3度つけて謝るのだ。」
うわ・・・これは捨てにくい・・・。
こっそりゴミ箱に捨てよっと(笑)
フレンドリーな、悪く言えば馴れ馴れしい車掌さん。
他の乗客が食べてるポテトチップスの袋に「もらうよ」ってな感じで普通に手を入れたり、乗客の個室に入ってきて一緒に紅茶飲んだり・・・。
そんな感じの車掌さんなので俺にもロシア語でどんどん話しかけてくる(もちろんほぼ全て理解不能)。
地球の歩き方が面白かったらしく、仕事も忘れて隣で読みあさっていた。
夕方、タシケントに到着。
気温は氷点下8℃程度と、若干サマルカンドより暖かいが、町にはうっすらと雪が積もっている。
地下鉄で移動しようとしたら、やはりありました。懐かしの(?)手荷物検査。今回は地下へ降りる時と改札を通る前の2回。
警官「この小さい入れ物に入った液体が怪しい!」
おれ「それは飛行機に乗った時にもらったミネラルウォーター。機内では100ml以下の容器にしないといけないから、ペットボトルではなくてそういうような容器を・・・あぁもう、説明面倒になってきた。欲しけりゃやるよ」
この検査さえなければ便利な乗り物なんだけどなぁ。。
スーパーマーケットでお土産選び。
手持ちのスムが少ないので米ドルで払えるか確認するとOK。
俺が米ドルを渡すとレジ打ちはレジに入れず、素早く自分のポケットへドル札を入れる。
なんなんだよまったく。いいのか、そんなことしてて。
そして向かいのトルコチキン料理のレストランでウズベキスタン最後の夕食だ。
米ドルで払えるかと尋ねると、案の定、英語が通じないので、ドル紙幣をひらひらさせて意志を伝える。
すると女性の店員達が英語が通じるオーナーらしき男性を呼んできてくれた。
男性「本当はドルで受け取るわけにはいかないんだ。ドルを集めているのがポリスにばれると、店が潰されてしまう。でも誰も見ていない今ならこっそりドルで受け取ることができるよ」
支払額は27252スム(≒1090円)。米ドルで支払う俺はとりあえず10US$(≒800円)を出し、1ドル札をさらに追加で出そうとすると・・・
男性「(10US$をすぐさまポケットに入れ)おっと、これで代金は十分だよ。」
おれ「え?まだ足りないよ。10000スム=400円=5US$で両替してるし、これまでの旅でもそのレートだったんだけど。1US$=2000スムでしょ?」
男性「最初から今まで、君はずっと騙されていたんだ。確かに公式レートは1US$=1800スム。でも町での取引は闇両替だ。闇両替もレートが実は決まってる。1US$=2750スムだ。」
おれ「なにー!?じゃあ俺すっごく損してたやん!公式レートに近い金額でスムを得て、公式レートに近い金額でドルでの支払いをしてたのか!じゃあこの代金の支払いは10US$でいいわけ?」
男性「Yes. Because, this is Black Market.」
為替レートが2つ存在する国。そしてその2つのレートは大きく乖離していた。
腹が立つというより、現在のこの国の事情を知れて不思議と嬉しくなった。
おれ「あの・・・今から空港へ行くんですが、タクシー呼んでもらえますか?」
男性「もちろん。待っている間、紅茶でも飲んでいるといい。あ、もちろんサービスだよ」
親切な人だ。ウズベキスタンの実情を暴露してくれた上、タクシーを呼んでくれた。
旅行記の最初の方に書いたように、タシケントではどの車がタクシーか分からないので、自分でタクシーに乗れないのだ。
店内の様子
サービスで頂いた紅茶
無事、空港へ。
通常、空港へは出発の2時間ほど前に着くようにする。
1時間前に行けば大丈夫なんだけど、余裕をもって。
しかし、今回は4時間近く前に空港に着くようにした。こんな何にもない空港で過ごしたくはないが、出国時の厳しい税関審査に備えるためだ。
→続く
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