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2011年05月15日17:04

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イキウメ 「散歩する侵略者」

イキウメの公演、『散歩する侵略者』を見てきました。
コレは、再演・・と言うか、何回か上演されているらしい・・です。イキウメの代表作なのかも知れませんね。もしくは、単純に、前川氏が好きな作品なのかも知れない。

見た感想としては、私には、ちょっと「甘かった」かな・・と思える部分もありました。
もう少し、鋭さがあった方が、私は好みだったかなぁ〜って思ったのですが、でも、全体を考えると、あの終わり方で良いのかも知れません。泣いていたお客さんもおりましたものね。
前川氏は、全くのデストピアは、好みではないのかも知れませんね。救いのある終焉のが好み・・なのかもです(デストピア的なのも、あるケドさ(^_^;))。
でも、こういうお芝居に「回答」を付けない終わり方は好きでした。

そして、安井順平氏は、もう、完全に、「イキウメ」の人ですよ(笑)。
下手したら、イキウメのメンバーだと思ってる人がいるんじゃないかと思ってますよ。それくらい、違和感なく溶け込んでいるのですよ。
それにしても。上手いね、安井さん。演技達者なのは知っていたが、本当に演技器用(そんな言葉はないが、今私が作った)。シリアスもこなし、笑いも取れて(いや、コレ当たり前なんだケドさ・・。本業、芸人さんなのだから)、演技に微妙な緩急も付けられる。まさに無敵。
でも、「前川さん!ちゃんとお笑い界に、安井さん返してね!!」って言いたいです(笑)。だって、大滝さん取られちゃったんだもん・・ハロプロに・・・(と恨み節ってみる・・・)。

あと。このお芝居、フライヤーに「地球侵略会議はファミレスで」とあるのだが、このキャッチコピーは秀逸だと思います。「何だろう?」って思う。お芝居見ると、「あぁ、なるほど」って思うよ。

※以下、イキウメ 「散歩する侵略者」の感想を書きたいと思います。お芝居はまだ続いておりますので、ネタバレがお嫌な方は、読まれない方が宜しいかと存じます。

では、ネタバレOKの方のみいらっしゃいまし〜。

イキウメ 「散歩する侵略者」
会場:シアタートラム

作・演出・前川知大
出演。伊勢佳世・加瀬鳴海(真治の妻)、窪田道聡・加瀬真治(鳴海の夫)、浜田信也・桜井(記者、元警官で、船越浩紀の後輩)、岩本幸子・船越明日美(鳴海の姉)、安井順平・船越浩紀(明日美の婿、警察官)、盛隆二・車田(医師)、森下創・丸尾(フリーター)、酒井宏充・長谷川(丸尾の友達)、大窪人衛・天野光夫(中学生)、加茂杏子・立花あきら(看護学生)

ザックリ粗筋。
とある町。どうやら、ここは大きな基地がある町らしい。そんな町をフラフラした足取りで歩く男がいる。男は倒れる。それを、助け起こす桜井。男は「大丈夫だ」と言い、ポケットから金魚を取り出す。「この人を見ませんでしたか?」と、死んだ金魚を桜井に見せる男。桜井は、男をいぶかしがり、警察に引き渡したようだ。

場所変わって、病院。先ほどの男・・・加瀬真治がいる。どうやら、加瀬真治は、人格が代わってしまったようなのだ。記憶はしっかりしている。精神的にも問題はない。ただ、まるで、リセットしてしまったように、「物事があまり分からない人間」になってしまっている。妻である鳴海も困惑する。医師に「何かこれまでに変わった兆候は?」と訊かれるも、夫婦生活が壊れ、別居していた鳴海には、正直思いあたる節はない。医師は「通常は、アルツハイマーと考えるのが妥当だが、脳には、アルツハイマーに見られる脳の萎縮は見られない。もし、進行性のものだったら、“介護”をする覚悟をして欲しい。」と告げられる。半ば仕方なく・・ではあるのだろうが、真治の世話をする鳴海に、真治は言う。「加瀬鳴海さん。」 「フルネームで呼ばないでよ!夫婦なんだから!」 「?・・・はい。鳴海さん。アナタは、私のガイドですね。」

鳴海は、姉夫婦宅に真治を連れて行く。真治は、「姉」や「兄」と言う関係性が良く分からないようだ。最初、姉の明日美を「明日美」と呼び捨てにし、明日美の夫である浩紀も「浩紀」と呼び捨てで呼ぶ始末。2人のコトを忘れたワケではない。関係性が分からないらしいのだ。明日美が「家族なんだから。」と言うも、『家族』と言う言葉の意味が分からないらしい。明日美は、真治にアルバムを見せ、「家族」の意味を教える・・と、突然、涙を流す明日美。浩紀が「どうした?」と問うも、本人にも分からないようだ。

場所変わって、公園。フリーターの丸尾。丸尾は、「戦争なんて面白い!」と思うような、明日なんてなるようになるさ主義の男・・らしい。町は、隣の国からミサイルが発射された・・と言う誤報が流れたりしているが、そこで、丸尾と友達の長谷川は、UFOを見る。

真治は散歩をする。丸尾は、真治と出会う。真治は、丸尾の家に入ろうとしていた。丸尾は「何故、俺の家に入ろうとするんだ?」と問う。真治は「俺の?」と問いかける。「そうだ。俺の家、丸尾の家だ。アレは・・田中さんの家、アレは・・・高橋さんの家。」 「“の”って何?」 「え?の?助詞?」「そういう意味じゃなくて、具体的に・・・」 丸尾はくずおれ、涙を突然流す。何かスッキリした様子の丸尾。

浩紀の家に、元警察官で、現在ライターの桜井が来ている。桜井は、先日この町で起きた事件について調べていた。
その事件とは。老婆が、息子夫婦を惨殺した・・と言うモノなのだが、浩紀に言わせると、少々状況がおかしいらしい。
老婆は、息子を、包丁やキッチンバサミで解体しようとした節があるらしい。しかも、老婆自ら、包丁を腹に突き刺し、腸を引きずり出している。発見当初、老婆の遺体の横で、唯一助かった娘のあきらが、父の顎の骨を持ち「ごめんね。こんなコトになるって思わなかったから・・・」と呟いていたらしい。「それだけ訊くと、まるで、娘が犯人のようですね。」と桜井が言うも、浩紀は「いや、そうじゃないんだ。あの娘は、普通の娘だった。」と言う。

真治は、急速に学習していく。初期の真治は、絵を見ても「何が描いてあるか」は分かるのに、「美しい」などの、感情が分からなくなっていた。子供のように「それは、どういう意味?」と問う真治。
真治は、新聞などから色々情報を収集していく。真治は「それが僕の仕事」だと言うのだが。
真治は色々なコトを覚えて行く。医師も驚く回復ぶりなのだが、真治は鳴海に教えてもらっているワケではないらしい。真治は「散歩」をし、人に会い、その人たちから、色々教えてもらっているのだ・・と言う。そんな中、真治は鳴海に言う。「ごめんね。あの・・明日美さんが・・君の大切な人って・・あの時、まだ、知らなかったから・・・。」

明日美に不思議な症状が出る。明日美は“家族”の意味が分からなくなってしまったのだ。
家族の意味が分からない明日美は、家族を気持ち悪がるようになる。病院に連れて行くも、医師は「この町には、何故か現在、そんな症状の人間が増えているのだ」と言う。金が分からなくなった銀行員。野菜が分からなくなった八百屋。記憶はある。しかし、その意味が分からない。まるで、初期の真治のように・・・。

病院では、惨殺事件の生き残りの、あきらが目覚めた。医師に、「眠ってたワケじゃない。この身体に馴染まなかっただけ。」と言うあきら。あきらは医師に「アナタは、私のガイド?」と問う。医師は「そうだな。僕は、謂わば君のガイドだな。」と返答する。何処か嬉しそうなあきら。

そんな折、桜井は、町でとある中学生に出会う。天野と言うその少年は、あきらに会いに来たが門前払いを食い、桜井も同じように、病院に取材に来たが、面会出来なかったと言う。天野は「利害関係が一致してるんだから、協力をしよう。」と持ちかける。天野は言う。「君は僕のガイドだ。」

ファミレスで、天野はこんなコトを言う。僕達は、地球に調査に来た謂わば「宇宙人」のようなモノだと。彼らは、自分の意識(自分自身)を人間に憑依させるコトが可能らしい。3人で来たのだが、バラバラになってしまい、おそらく、あきらは、地球に一緒に来た自分の仲間であると。彼らの仕事は、物事の「概念」を収集するコト。概念を収集する為に、人間に会い、その人間に、その物事を説明させ、物事を思い浮かべさせる。その頭の中に浮かんだものを、そのまま収集するのだと言う。そして、それには一つ副産物・・と言うか、副作用のようなものが出来てしまった。その概念を収集された人間は、その物事の概念が分からなくなってしまう・・と言うのだ。
俄には信じられない桜井。桜井は問う「ええと・・君らは、地球を侵略しに来たの?」 「最終的にはそうなるねぇ。だって、そういうモノでしょ?普通。」

俄に信じられなかった桜井は、その「収集」現場を見せるように天野に頼む。天野は了解し、病院へ。医師に面会を申し込むが断られる。そこで天野は「命令」と言うモノに対し医師を質問攻めにする。くずおれ、涙を流す医師。桜井「大丈夫なのか?」 天野「生理現象〜。大丈夫。」 医師は、「命令」と言う概念を取られた。しかし、反射で、「面会はさせられない」と天野に言う。天野は更に、医師から「他者と自分の境」と言う概念を取り上げる。医師は、他者の感情も自分の感情として処理し、あきらに天野を会わせる。

あきらは言う。「最初来た時、大きさとか分かんなくて、何か赤いの・・金魚?金魚に入っちゃって。で、何か、それすくおうとしてる大きなのがいて、『違うだろ!こっちが主だろ!』って思って(笑)。で、最初何も分からなくて、何か古いのに入っちゃって・・・分からないから、調べようとして、あちこち切って、で、初めてそこで『自分ヤバイ』って気がついて(笑)。で、こっちに乗り換えたの。」

丸尾は反戦運動をしだしている。まるで共産党員のようなコトを言い出す丸尾についていけなくなった長谷川。長谷川は、丸尾が「しんちゃん」と言う青年に会って、自分が解放された・・変わったと言っていたコトをたよりに、真治のコトを突き止める。真治は言う。「ごめんね。彼から奪ったのは、おそらく、『所有』とかその辺りの概念だと思う。」長谷川は言う。「何とか、この状態で、丸尾と分かりあえるように努力してみる。でも、もし、ダメだったら・・・。僕の鎖も引きちぎってくれ。」

ついに、天野、あきら、真治の3人の宇宙人・・のような者たちが再会する。
その場には、医師、桜井、鳴海、浩紀もいる。真治たち3人は、情報収集もそろそろ終盤で、「元の場所」に帰らなければならないと言う。鳴海は、真治の体はどうなるのか問うも、真治は「僕が真治だよ。」と言う。彼の記憶の中に入って、彼の回路を使い喋っている自分は、真治だと。しかも、1度憑依した状態から離れると、元の生物は、生命活動をやめてしまう・・すなわち、死んでしまうらしい。鳴海は言う。「・・・私、何だったら、今の真治の方が好きなくらいよ。ねえ。『愛』って言う概念は、もう収集した?」収集してないと言う真治に、鳴海は「私から、愛と言う概念を奪っていけ」と言う。真治は、ガイドからは概念は取れないというも、鳴海に説得され、愛と言う概念を奪う真治。真治、やにはに泣き崩れる。侵略しなくてはいけない真治。でも、真治は「もう・・・分からなくなってしまった・・・」と泣きながら言う。

そんなお話。
『愛』と言う概念を取って・・つまり、愛を知って、侵略出来るか分からなくなる・・って部分が、前述の「甘いかな?」って部分ね。
愛って概念・・まぁ、感情・・には「憎悪」もあれば、「愛する故に、侵略する」ってコトもあるでしょ?正当化の為の愛。鳴海さんの愛の感情だから、真治に向けられたモノで、その感情だったから・・・って言うコトだとは思うんだケド。
そこが少しスッキリしなかったのだケド。

最後、丸尾が「ネットを使って、所有とか、権力とか、そういう概念を取ったら、戦争がなくならないかな?」って言う台詞が結構記憶に残ってます。綺麗事とは思うし、その程度で戦争なくなんないよ。戦争なくしたいなら、それこそ「愛」とか、「正義」とか、そういうモノ取らなきゃ・・とは思ったのだが、でも記憶には残った台詞。

大窪氏の中学生の演技が見事だったのです。声質のせいもあるのでしょうが、無慈悲な子供が、無邪気に遊ぶように、酷いコトしてるように見え(常に何か笑ってる加茂さんも恐かった・・・)、それが凄く良かったです。
コレ、彼ら側からしたら、悪いコトでも酷いコトでもないもんな。誰かに命令されて、「この星の概念集めて来い」って言われただけだから。彼らは彼らの仕事を全うしてるだけ。
侵略するのも、「だってそう言うモノでしょ?」で片付けちゃうのも好きでした。そこに意味なんてない。星があったから、だから侵略するだけ。

コレ、戦争が起こりかけてるテイだったから、この部分ともう少し絡むのかな?と思ったら、そうでもなかったんだよね。最後「反戦運動でもすっか?」 で、浩紀が「そうだな。これから、戦争どころじゃない、一丸とならなきゃダメなコトが起こるんだから。」って言うくらいで。

ギャグの部分で好きだったのは、医師が、自分と他者と言う概念を取られ、何にでも共感するようになってしまったところ。「今の彼は、どんな映画を見ても共感して泣きます!」に笑った。スゲエ良い観客になっちゃったんだ(^_^;)。

ちょっと思ったのだが。概念って、人によって、それぞれ違ってたりすると思うんだケド、この宇宙人・・と便宜上呼んでるだけで、実際宇宙人か良く分からない生物なんだケド・・は、その辺りは、自分で補正してるんでしょうか?天野が「最近ダブリばっかり」って言ってるから、他の人の概念とすり合わせしてるのかな?とも思うんだケド・・・。そしたら、パラドックス起きそうですよね(^_^;)。概念なんて同じようで、実際バッラバラなコト多いもん。「私は、こう考えるけど、アナタは?」みたいなモンでさ。
まぁ、だからこそ、色んな哲学者がいて、色んな論理が生まれるんだケドさ。
そこも、少し気になった。

安井さんは、今回は、自分の奥さんが、「家族」と言う概念なくなっちゃう役なので、シリアス目な役だったのですが、感情の緩急の付け方は上手いなぁ〜と思いました。スゲエ宇宙人真治に対して恨んでるし、怒ってるのだが、それを抑えてたりね。

そんなお芝居でした。次回のイキウメ公演は秋らしいです。
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