♪　ホールド・オン　　　夢と魔法のクリスマスファンタジー２

【　店長のフローズンカクテル　Vol.３１　】

　　夢と魔法のクリスマスファンタジー　第２弾





　　　　　　　　【　ホールド・オン　】


２００９年１２月
表参道にイルミネーションが帰ってきた

ルイヴィトンの前にクルマを停め、
あの日と同じように光の並木を歩いてみた

どこまでも続く金色の光は　ボクをいざなうタイムトンネルへと　
いつしか変わっていった・・・



「２１世紀まであと１０年！」
そんなカウントダウンの垂れ幕の下がる金色の並木道を
ボクとカノジョは歩いていた

行き交う人々の華やかさとは全く違うリズムだった

カノジョとの別れは　確実にそこまで来ていた
もぅナススベもなかった

ボクは　ふと、去年のあのシーンを思い返してみた
それは、カノジョとつきあって２回目のクリスマスの夜だった・・・





（日記「ホールド・オン」より）
別離の時、どうして ああも物分りが良くなってしまうのだろう
お互いの気持ちは　どうしようもないところまで乱れているのに
カレもカノジョも　何事もなかったように
冷たく、事務的に、　ただ時を進めてゆく

『 時間が 止まればいい… 』　　
『 ずっと一緒にいたい… 』
恋の初め、誰でも一度は 彼の胸で つぶやく甘い嘆きだ


カノジョの髪を 優しくといてあげるカレのまなざしは、もうどこにもない
カレの眼は怯え、整然と荷作りするカノジョを
次々とコマの変わるスライド写真を眺めるように
じっと目で追っている

なかば呆然として・・・


まだ終わりじゃない！　　　
　　考え直してよ！

　　そんなに焦ることないじゃない…

　　キミとだけは　
　　簡単に別れるなんて　ボクにはできないんだよ


　　だから…　もう少しだけ　傍にいて


　　どうして　こうなっちゃったんだろう…
　　

　　ホールドオン！（行かないで！）
　　キミ以外の人なんて　考えられない…
　　キミなしの人生なんて　そんなのムリだよ…


　　ねえ、初めから　やり直そうよ…

　　行かないで!
　　こんなに愛してくれたのは、キミだけだったんだよ…　





２年間の想い出が、女々しくも頭の中でメリーゴーランドしている
ケンカした日も…　何もかも…
　　　　　泣き顔も、笑い顔も、シャッフルされて
　　　　　　　　　　　　　想い出が キラキラと輝いている


　　　　《　彼の心の中で　　葛藤は終わった　》


カノジョが　最後のコーヒーを入れて振り向いた

イヴにプレゼントした品のいい紅いシャネルのルージュが
キュっと微笑んだ

第三者として見つめていたボクの心が、カレとひとつになった


『　行くなよ!　』
　　　　　　　　　瞳を見つめた、簡単なセンテンスだった

『　うん　』
　　　　　　　　　彼女もあっさりと答えた


　　　　　　　　　　　　　　　　…安易な結末だった…



《　それから１年　》　

ボクたちは、もう一度 別れることになった

キーウエストクラブの先にクルマを停め
店には入らず、光の並木を歩いた

カノジョは歩道橋を見上げ
ほんの少し躊躇してから　登りはじめた
ここからは光の並木を一望できた


『　あの日…覚えてる…？　』　　彼女が懐かしそうに言った

『　去年のあなた、子供の様な目で“ 行くなよ！ ”ですって…

　　あの時のあなたに、あたし魔法をかけられたわ』



表参道は、みぞれに変わっていた


歩道橋の上、二人におかまいなしに傘をぶつけながら人がすれ違う

風に乗って、時折 キディーランドのバナナ放送が聴こえて来る


『　行くなよ！　』

　ボクは、もう一度 カノジョに魔法をかけてみた


ワンレンの髪を左右に揺らして、カノジョは微笑んだ

『　魔法は消えたわ…　あなたのジョーク、今でも　好きよ 』

みぞれのせいか、カノジョの笑い顔が　歪んだ



別れは、あまりにもアッサリと　その幕を閉じた


バナナ放送は、サンタナの曲を紹介していた



　　　　　　　　　　　　　　　ＢＧＭサンタナ「ホールド・オン」
　　　　　　　　　　　　http://www.youtube.com/watch?v=UD5yXaaxkZo&feature=related