というわけで、川崎競輪場と川崎競馬場にそれぞれ行きました。
その後、川崎競輪場には7回か8回ぐらい行きましたが、川崎競馬場にはそれきり行っていません。
素人が単純に見るだけなら、競輪より競馬のおもしろいと思います。それは今でも変わりません。
それでも、つい競輪の方に足が向いてしまうのは、競輪場が県立川崎図書館の隣にあるのと、もつ煮こみの300円というリーズナブルな価格ゆえでしょうか。
私は食事についてはアングロ・サクソン方式の信奉者というか、あまり美味い不味いについて論じない人なのですけれど、それでも競輪場のもつ煮こみはおいしい。
チェーン店の居酒屋でもつ煮こみを頼むと、なんだか気の抜けたような一品が出てきて、それにしたってどこに苦情を持ちこむわけにもいきませんから、仕方なくにちゃにちゃ食べるわけですけど、なんだかまるで別の食べ物だと思うわけです。
思うに、もつ煮こみというのは素材を厳選したり、繊細にして玄妙な調理がものをいう料理ではありません。
安い素材にそれなりに手間をかければきちんとおいしい、そういうものではないでしょうか。
ただ、大切なのは一つの鍋でひたすらくつくつ煮こむこと。
簡単なようですが、これが意外と難しいのだろうと思います。飲食店の賃貸料などみても、坪単価はけっこうな値段だったりするわけで、調理スペースをもつ煮こみのためだけに占有させるわけにいきません。当然のように、チェーン店ではセントラル・キッチンで作って運んできて、店では温めて出すだけなわけですが、さすがに「なんだかなあ」と思うわけです。ふつうに煮こんだ煮こみを味わうなんて贅沢は、いまや競輪場にしかないのかもしれません。
競輪場にはもつ煮こみを扱うお店がいくつもあります。その名の通り、もつだけ入ったもつ煮こみもあり、どこの部位だか見当のつかないもつ煮こみもありますが、おいしいのは圧倒的に後者です。それから、もつ串とか、焼き鳥とか、串かつとか、他にもいろんなお店がありますが、どれもしみじみといい味です。なんだか、川崎競輪場でものを食べていると、荒んで汚れきった心が浄化されていくような気がします。それは言いすぎですね、ええ。
川崎は他にも串かつの秀勝なんてお店があったりして、なかなか侮れません。いままで侮りすぎていただけかもしれませんが。
話は飛びますが、もつ煮こみというと、学生の頃に行った浅草の露店を思い出します。
当時はなんとなく興味がもてなくて食べませんでしたけど、今にしても思えば惜しいことをしました。今も残っているかどうか、いささか心もとない。
ビートたけしの浅草での修行時代について読むと、煮こみにタイヤ・チューブや歯形のついた肉が入っていたとか、「これ、犬の肉が入ってるだろ」と難癖をつけたら、「そんな高いものが入ってるわけないだろう。とんでもないよ、馬鹿」と言い返されたとか、変な話がたくさんあって、異様におもしろかったりします。
有楽町のジャポネにもひさしぶりに行きたい。
「おまえなんか、毎日が日曜日なんだから好きなだけ行けばいいだろう」
ってまあ、そうなんですけど、それはそれでいろいろあるのでそんなに自由にはならんのですよ。んああ、んがんぐ。
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