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2009年04月25日15:05

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職業作家で最前線を生き抜いて来たタフネス

東野圭吾『聖女の救済』読了。

ガリレオシリーズ。

つうか、ドラマ『ガリレオ』と映画『容疑者X〜』を受けて
執筆されたこの作品は、一読、驚いた。

ドラマ独自設定をほぼ完全に咀嚼している。

内海薫の登場がまず筆頭に挙げられるが、
ドラマでは使いこなせていなかったキャラクタを
完全に草薙とは違うポテンシャルを持った新人刑事として
物語内で有効に機能させていた。

タイトルからも汲み取れる通り、
これは『女』の物語だ。

従来の『探偵ガリレオ』シリーズのように湯川&草薙コンビでは
目が行き届かない箇所への視線の保持者として、内海は
その役割を担っている。

ドラマや映画の独自設定を受けて原作でもオリジナルキャラクタが
出てくる例は実は結構ある。原作者がインスパイアされる訳だ。

だが、東野圭吾はそれ以上にクレヴァだ。

原作世界に綺麗『取り込んで』いるのだから。

ドラマと違い、内海薫は非常に理知的で観察眼に優れた
有能な刑事として登場する。この改変は心地よい。
女のカンで捜査をかき回し、女の本能でギャアギャア喚き、
挙げ句泣いてしまうクズみたいなドラマのキャラとは
全く違う人種だ。

ドラマの次回作があるとして。

恐らく『内海薫』像はこの『聖女の救済』以降の
物へとシフトして行かざるを得ないだろう。

自身の作品が原作のドラマで、もしくだらない改変を
された箇所があって。

そこを「変えたい」と思った時。

このような干渉の仕方をした原作者、というのは
古今未曾有だと思う。

・・・ま、大分牽強付会ですがね。

湯川もドラマに沿った人物描写が追加されていた。
昔バドミントン部であった説明は『容疑者X〜』等でも
あったが、筋肉質であったり、アルマーニに
身を包んでいたりするような描写は旧作には
見られなかった(筈だ)。

・・・忘れているだけかもしれんが。

で、そんな描写に差しかかる度にニヤニヤしていたんだが。

そろそろクライマックスの310ページ。

内海薫が電車に乗るシーンで。

以下引用

「薫は再びipodをバッグから取り出した。福山雅治の歌を
聴きながら、ペットボトルの水を飲んだ。」

引用以上。

この気配りよう、すっげえ(笑)。
ここまで露骨な目配せも凄まじいね。
いやいや、堪能させて頂きました。

これも立派なプロの仕事だわ。

え?
内容?

傑作に決まってるじゃねぇか。
野暮な事は聞くねぇ。
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コメント

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