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2009年04月25日18:23

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毛皮のマリー

『毛皮のマリー』を見てきました。
とりあえず、自分で自分にツッコンでおきます。「アンタ、何回、『毛皮のマリー』見とるんじゃ!」

私、正直申しまして、特別天井桟敷の芝居が好きだったワケではないのです(勿論、嫌いではないですが)。寺山修司氏の作品も、短歌は好きなのですが、他の書籍を読み漁る・・・というようなコトはしていないのです。
でも、何故か『毛皮のマリー』だけは、別格で好きなのです。

『毛皮のマリー』は、美輪明宏(丸山明宏)氏の為に書かれた戯曲です。なので、マリーの役は、美輪さんが1番嵌るのは当たり前なのですが(寺山氏が当書きしたので)、やっぱり、美輪さんはマリーさんなんだな・・・と改めて思いました。

今まで、マリーを見て泣いたコトはなかったのですが、今回初めて目に涙が溜まりました。
最後、マリーと欣也が聖母と天使に見えてしまったので・・・。世界に2人ぼっちの聖母と天使に・・・。

チケットを民音で買ったので、ちょっと安かったです。10500円が、9800円になったので、まぁ・・700円くらいなのですが(^_^;)。『トーチソングトリロジー』を見た時、席が後ろの方だったので、「今回もそうだろうな。ま、通常より安いしね・・・」と思って行ったら、劇場の真ん中より少し後ろでしたが、どセンターと言う良席でした。ゴメン、民音。安いから席悪いと思ってた(^_^;)。

美輪さんて、若いお嬢さんの追っかけがいるのですね。最後「美輪さ〜ん」と声がかかって、楽屋口を見たら、出待ちのお嬢さんがいらした。
美少年への愛は永遠なんだなぁ〜。

伊東屋で、絵葉書を見てたら店員さんに「テアトル銀座って何処ですか?」と訪ねていた老婦人がおりました。店員さんは分からないようだったので、私が教えて「毛皮のマリーですよね?私も後で向かいます。」と言ったら、老婦人は笑っておりました。あの時のご婦人。お芝居は楽しまれたかなぁ。

※以下、『毛皮のマリー』の感想を書きます。公演はまだ続いております。ですので、ネタばれがお嫌な方は、読まれない方が宜しいと思います。

それでは、ネタばれOKの方のみいらっしゃいまし〜。

『毛皮のマリー』
会場:ル テアトル銀座

主な配役。
毛皮のマリー/美輪明宏、美少年・欣也/吉村卓也、下男・醜女のマリー/麿赤児、名もない水夫/菊池隆則、美少女・紋白/若松武史、鶏姦詩人/江上真悟、倉持一裕、下男2/日野利彦、マメ山田

粗筋は、前に美少年手塚とおる氏ヴァージョンを見た時書いてあるので、それを読んで頂けたら良いな・・・と。私の日記を遡ると何処かにあります。
ザックリ説明すると。
老いた男娼のマリー。マリーは、下男と、そして、部屋から1歩も外に出さず、応接間に放した蝶を追う生活を続ける美少年・欣也と暮らしている。美少年・欣也を“外”へ誘おうとする、美少女・紋白。しかし、欣也は、外へ出ようとはしない。
マリーは、ある日、ワンナイトラバーのマドロスに身の上話をする。実は欣也は、昔自分を侮辱した女への復讐の為に育てているのだと。金で雇ったゴロツキにその女を襲わせ、その女が妊娠。その時の子供だと。話を立ち聞きし、ショックを受ける欣也。欣也は美少女・紋白の「一緒に外に出よう」と言う誘いに戸惑い、紋白を殺してしまう。外へ出る欣也・・・さて、結末は。

こんなストーリーです。

男娼と養子・・・という形態にはなっていますが、コレ、寺山氏が良くモチーフで使う“母子モノ”なんだよね。マリーがお母さんで、欣也は息子。

今回の欣也はちゃんと美少年です(と言うと変だが・笑)。18歳の設定の欣也を19歳の男の子が演じていたので。美輪さん主催の美少年オーディションで優勝したらしい。何か、物販に彼のアイドルDVDみたいなのがあったな。
吉村氏は、これが初舞台だそうで、少し演技が硬かった感じもしましたが、純粋さ加減は良く出ていました。
欣也はとことん純粋じゃなくちゃダメなんです。何しろ、生まれた時から、18歳まで、お屋敷(とあえて呼ぼう)から一歩も外に出たコトがない、純粋培養の純真少年だからです。外の汚れた事情も、楽しさも悲しさも知らない、瑞々しい感性の絶対少年。それが欣也だからです。
欣也の世界には、マリーと蝶しかいないのです。
だから、マリーの話を立ち聞きしてしまった欣也のショックはどれほどか・・・と思います。信頼していたお母さん=マリーに裏切られたのだから。絶対世界の住人に裏切られたのだから。

外へ誘う紋白を殺し、自分の殻を破って外に出る。それで、傷つき戻って来る欣也。純粋培養の絶対少年が生きていけるほど、世界は生やさしく出来ていません。清濁併せ持つのが世間ですから。汚れていない欣也に外の世界は宇宙も同じ。息すらまともに出来ないでしょう。

傷ついた欣也を慰めながら、マリーも思うのでしょう。欣也をこうしたのはマリーだし、復讐の為とは言っているけれど、欣也は愛しいモノでもあるのだから。憎く愛しく可愛い私の美少年。

最後の演出で、マリーと欣也は白い服を着て出てきます。
私はそれが、聖母と天使なのかな?と思いました。2人ぼっちの聖母と天使。この世界には、聖母マリーと、天使欣也しかいないんだ。そう思ったら、何か突然切なくなって、可哀相になって、それでも、それは実は幸せってコトなんじゃないだろうか?誰にも邪魔されず、2人の世界を2人で構築出来るのは、実は幸せなコトなんじゃないのか?とも同時に思い、色んな感情が一気に押し寄せて、目に涙が溜まりました。

絶対純粋を選ぶなら、世界2人ぼっちも辞さない覚悟が必要。そういうコトなのかな。

コレさ。さらに悲しいのは、どっちも男性なんだよね。男女だったら子供を作るコトも可能でしょ?でも男性同士だから、たとえセックスしても子供は出来ないんだよ。完全にここで世界は終わるのだ。終わる世界。本当に、本当に2人だけの世界。

下男役の麿さんが良かったです。怪しくて、でも、妙に茶目っ気のある下男。醜女のマリー役も良かったです。
今回、醜女のマリーの時の美女の亡霊達が、皆コスプレをしていたのも面白かった。白雪姫やマリリンモンロー、叶姉妹のような井出達の美女に、小野小町にクレオパトラ。八百屋お七に乙姫様・・・。コレは、醜女のマリーの夢見る美女達なんだよね。
あ、美女と言っても、全員男性が演じます。
このお芝居、全員男性で演じるのが基本なのです。寺山さんが、そう書いてるらしい。

余談だが。前述のような事情があるので、『毛皮のマリー』のパンフを買うと、大抵、美少年カタログみたいになっちゃってるのが面白いよね(美女の亡霊役の役者さんの顔写真がズラリと載るので)。「アナタのお好みの美少年を選んでね!」みたいになっちゃう(笑)。コレが結構面白いと思うんだよな。

美女の亡霊が最後、男性になって、Tバック1丁でラインダンスする演出も面白かったです。コレはちょっとアングラの見世物小屋っぽい雰囲気もあったな。
本来は全裸でやらせたかったのかな?とも思う。
昔は、アングラ演劇は、全裸でやったりもしたケド、現在、役者さん(芸人さんも)、舞台でチンコは出せないらしいんだ。アングラ演劇でチンコ出すくらい良いじゃねえか・・・と思うんだケドねぇ〜・・・。変に潔癖でイヤな世の中だなっ!

美少女・紋白。まさか、紋白がモー娘。のラブ・マシーンに乗って登場するとは思いませんでした(笑)。美少女・紋白は、まぁ、どちらかと言うとコメディリリーフではあるのだが、真理を付いてる台詞もあるよねぇ。紋白・・・欣也をたぶらかす売女のモデル・・と言うかモチーフは、実はどうやら、寺山氏の奥様、九條さんだったらしい。なるほど。寺山=欣也で、マリー=寺山氏の母・・・・なのか。
偽乳丸出しのピンクの衣装もいかがわしくてキュートでした。

あと、メイドの恰好の下男役のマメさん(だと思うのだが)が良かったです。小人さん(は、差別用語だが、あえて言わせて頂く)なのだが、コレもアングラ演劇には欠かせないと思う。不気味で美しく、キッチュで綺麗で派手で・・アングラはそうでなくちゃなぁ。

一つ気になったコト。
今回の『毛皮のマリー』。間に休憩があるんです。元々一幕物のお芝居なのに、2部構成になっていた。出来れば、一幕物として一気に見せて欲しかった。
舞台は夢。夢の世界にドップリ浸っている中、休憩が入ると夢から覚めてしまうのです。特に、『マリー』は世界観が濃密だから、現実とのギャップがデカイんだ。勿論、演者の皆様は、又、夢の世界に誘う力は持っているけれど、それでも私は一気に最後まで見たかったです。覚めない悪夢は覚まして欲しくないのです。せめて、終演ベルが鳴るまでは・・・。

でも、それ以外は本当に「あぁ、マリーだ・・・」と思えるお芝居でした。

鶏姦詩人がSMルックなのも面白かったな。
ところで・・・。今の方は“鶏姦(けいかん)”の意味って分かるのでしょうか?使い方としては“鶏姦行為”という使い方をしたりするのだが・・・。
“鶏姦”即ち、“男色”のコトです。つまり“鶏姦詩人”は“男色詩人”と言うコトだね。鶏姦詩人は2人いるから、2人が男色関係なのかな?といつも思いながら見ているのですが。今回はSM趣味の男色詩人。
あと、多分“鶏姦”は“荊冠”ともかけているんだと思う。キリストが処刑の時に被せられた荊の冠・・・即ち“荊冠(けいかん)”ね。

やっぱり私は『毛皮のマリー』が好きだなぁ〜と思いました。

あと、やっぱり美輪さんは美しかったです。美少年は美少年のままでいて下さい。

※マリーのお芝居の画像は、前回のモノです。
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