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2016年05月01日09:03

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高瀬舟

寛政(1789年-1800年)のころ

30歳程度の弟殺しの罪人・喜助が
護送役の町奉行所の庄兵衛が島流しの高瀬舟に乗っていた。


喜助の楽しそうにしている顔が気になり



庄兵衛「喜助。お前何を思っているのか」



そして喜助が語り始めるのだ。


幼いころに両親を流行病で亡くした喜助と弟は


助け合って生きてたが
弟が病で働けなくなった。



ある日
喜助が仕事から戻ると



弟が自らののどに剃刀を突き刺した状態で

血だらけになっており


弟「早く死んで少しでも兄貴に楽をさせたいと思った。」


でも、死にきれなかった。
剃刀を抜けば死ぬことができるので抜いてくれと弟から頼まれる。



当時陸軍軍医であった森鴎外が書いた
『高瀬舟』の冒頭の一部である。



僕が研修医の時
失敗をした。


末期がんの患者さんで肝臓に転移してて
意識レベルも悪くなってきて


もってあと数日



僕は、この患者さんの
『最期は家で過ごしたい』



その一言を叶えてあげるために
在宅医療の導入や訪問看護


介護保険の申請


色々な事をした。



本人には奥さんと娘さんが2人いて
とても愛されていた。


妻『この人は庭が好きだったから家に帰ったら車椅子を押して散歩します。本当は2階から見るのが好きだったんだけど車椅子を上げるのは難しいからですね。』



奥さんも楽しそうに話していた。


明日が退院日
やっと自宅の準備や受け入れ体制がしっかり出来た。




その日の夜
急変したよ。



患者さん『先生、お腹が痛いです。』


今までの経緯から
肝臓転移した腫瘍破裂によるものが推測できた。
夜中の3時


深夜で指導医もいない。


僕は緩和として、麻薬を増やすべきだった。
痛みを取る治療を優先し最悪鎮静がかかってでも症状緩和するべきだった。


でもね
彼は僕にいった。


『家に帰りたいです。』



僕は、鎮静をかけることが出来なかった。
想像を絶する痛みだったと思う。
最期に目を閉じたらこの人は目を開けられない。


そう思ったら、
『○○さん、頑張りましょう。家に帰りましょう?』




声をかけるしか出来なかった。
経験もなければ知識もない


わずかな帰れる可能性を信じて期待して声をかけた。


『ありがとう。』


彼は僕にそう伝えて目を閉じた。





僕は医者としては最低だった。



それから、
指導医来て
家族が来て



死亡確認となった。





知らない事がこれほど酷いことはない。
と思った。



あの時
どうせ亡くなるのであれば、安らかに痛みをなくしてあげるべきだった。



そして僕は癌を診る医者になった。


僕の指導医は優秀だった。
凄い人情味のある人で



僕に
最初から自分で看取るつもりで診る。

癌になって人生を悲観させるのではなく
楽しい人生だった最期は癌だったけで

と思わせる医者。


大切な事を学ばしてもらった。
適当な事は絶対しない。




知らない事は罪
恥ずべき事である。
だからこそ医者は勉強し続けないといけないし
適当な事は言うべきではない。




今となっては、色々な病院に行けば


『先生のおかげで痛みが取れました。』

『こんなに分かりやすい説明をしてくれた先生は初めて』


よく言われる様になりました。




だからこそ
フコイダンとか水素水とか
いかがわしい免疫療法とか



がん患者が無知な事を知って金を巻き上げる。
がんビジネスだけは本気で許せない。


でもね。
以前の僕の様に
がんをしっかり診れない医者が本当に多いんだよ。


どれ位かって言うと
知り合いに医者いたら
胃癌になったらどういう治療するか聞いてみてみ?


上手にごまかして
消化器内科医でもマトモに答えられない人多いから。




もっとちゃんと
がんを見れる医者がいれば
痛みに苦しむ患者さんも少なくなって



安楽死とかの議論も少なくなると思う。






高瀬舟では

喜助は、医者を呼びに行こうするが


弟「医者がなんになる、ああ苦しい、早く抜いてくれ、頼む」


と言われ


喜助は迷った末に



弟ののどから剃刀を抜いた。




そのとき



近所のおばあさんに見られてしまう。



そして
喜助は捕まるのである。



しかし
本来であれば、家族殺しは死罪であるが
死罪にならず流罪となった。



そんなお話



森鴎外は、医師として
安楽死は罪である(ダメな事)



しかし
情状酌量の余地がある


と伝えるために、小説にした。



一般人が適当な事言うのはしょうがないとして



彼が僕らに残した宿題を解決出来ていない現代に
非常に恥ずかしさを覚える。




でも一番は
僕は人を殺したくはない。




安楽死選んだ女性 最後の16時間の一部に密着
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=125&from=diary&id=3972532
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