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2016年03月07日00:25

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経済談義第18回:需要と供給の絶対不均衡(需要超過パターン)

経済談義シリーズ第18回です。日本経済超悲観派の僕がその論拠を解説していきます。


需要と供給についての説明の続きです。

前々回の記事で、供給が需要を上回り続ける絶対不均衡について説明しましたが、需給の絶対不均衡には実はもう一つ、逆のパターンがあります。
それは、「需要超過・供給不足による絶対不均衡」、つまり、需要が多くて供給が追い付かないというパターンです。


典型的な例として、「介護サービス」を挙げましょう。
僕も読者のみなさんも、いずれ年を取って足腰が弱ってきたら介護サービスのお世話になることもあるでしょう。そして、介護サービスも対価をもらってサービスを提供する一つのサービス商品といえますから、需要と供給の関係を考えることができます。

介護サービスの需要と供給がこれからどうなるか。これは考えるまでもありません。高齢化が進むこれからの日本ではお年寄りが増えて、介護サービスの需要は増えていくことが確実です。
その一方、その介護を担う若い世代の人口は急速に減り続けていますから、供給は細っていきます。


供給が需要に追い付かない場合、市場原理が働けば価格は上昇します。そして、供給増と需要減により需給がバランスするというのが理論の教えですが、実際にはそううまくはいきません。
介護料金が上がれば介護職員の給与水準は上がるでしょうが、だからといってお年寄り(需要)が減るわけでもないし、介護職に就く若者の数(供給)もそれほど増えそうにはありません。

価格が変化しても需要量や供給量があまり変化しないことを「価格に対して非弾力的である」といいますが、介護サービスはまさに価格非弾力の典型です。価格がどんなに上昇しても供給が需要に追いつかないのです。


そんな状況をグラフに表したのが図です。
需要曲線が右下がり、供給曲線が右上がりという原則はここでも変わりません。しかし、需要曲線が図の右側に、供給曲線は左側に偏ってしまっていて、交わることがありません。このグラフを上方に延長していっても、おそらく永遠に交わらないでしょう。それが、「需要超過、供給不足による絶対不均衡」です。


このような絶対不均衡が発生するといったい何が起こるでしょうか。
介護サービスの供給が不足すると、上に書いたようにまずは価格が上昇します。それでも供給不足が解消しない場合、介護施設の料金が天井知らずに無限に値上がりしていくのでしょうか。

実際にはそうはならないと考えられます。介護職員の給与は社会福祉制度や介護業界の人事制度などによって規定されていて大幅には変動しにくいでしょうし、それに、介護職員の給与がいくら上がるといっても、介護施設の所長さんより高くなるとか、ほかの高給職種、たとえば銀行マンや証券ディーラーを超えるほど高くなるかというと、それは現実的ではないでしょう。

現実にはおそらく、介護職の給与はその大変さに比して低いままで、その一方では介護サービスを受けられない介護難民が大量発生する、という、全くうれしくない未来がやってくるのだと思います。

問題はそれだけにとどまりません。供給量が減るということは、すなわち産業としての規模が縮小していくということです。業界の売り上げ規模や利益が(物価上昇を補正した実質ベースでは)長期減少していくことが必定となれば、関連企業の株価が下落したり、投資が凍結されたりといったような悪影響が出てくるでしょう。


ここでは例として介護サービスを取り上げましたが、建設現場や、外国から輸入できない一部の農産物など、労働集約的な業界では似たようなことが起こる可能性があります。


対策について。需要超過・供給不足による絶対不均衡に対してはどのような対策が考えられるでしょうか。
需要が足りない場合には、前回の記事で説明したように、マイナス価格とか、政府が介入するなどの対策がありました。しかし、その逆の供給不足に対しては、それらの考え方を応用しようとしてもうまくいかないように思われます。

たとえば、政府が市場に介入して強制的に需要(お年寄り)を減らしてしまうということははたして可能でしょうか。   …あまり想像したくはありませんね。

供給についてはどうでしょうか。政府が無理やり供給(介護職員)を増やすことができるかというと、これも限界がありそうです。外国から介護職員を呼び寄せるとかいう話もあって、実際、留学生を招いたりしているようですが、言葉の壁などもあってなかなかうまくいかないと聞きます。今後もその数はごく限られそうで、大勢としては焼け石に水でしょう。


というわけで、「需要曲線と供給曲線が交わる」という経済学の根本原理はここでも崩れていきます。それは経済システムにとって根幹的な問題になるおそれがあると僕は考えます。少なくとも、政府がお金をばらまけば何とかなるなどという単純な問題でないことはお分かりいただけるでしょうか。



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