続きました。
走るハッシーに置いてかれまいと、かなりペースを上げたせいで呼吸が荒い。心拍数も上昇中。ザックを置いてクールダウン。深呼吸を何度かして、トレッキングポールを畳んでザックの外にくくり付ける。靴紐を締めなおし、さて、行くか！
なんだけど、道がわからない。いや、道がわからないと言うか、道がない。一般登山客向けの地図に案内がないのはそういうことか。これがバリエーションルートってことなのね。登る客はいないので、しばらくどうしたものか、とカンバン近くでウロウロしていると、上から何人か降りて来る。なるほど、降りてきた道を登ればいいのだな。下山客を凝視してルートを判断する。
下山客とすれ違い、いざホッキリへの道へ！えーっとですね、基本的に歩いて行ける場所ではないようです。両手両足が必要。手は木の枝や根っこを掴まないと傾斜がきつくて上に進めない。そして天然の岩場登場！鎖はもちろんない。クライミング経験ゼロの自分は見様見真似で突起を掴んで何とか岩場を這い上がる。
全身運動につき心拍数上がりまくり。うわ、これはきつい！「稜線まで20分」ってことだけど、こんな負荷のかかる運動を20分も連続してできるんか？だってオレ、デブだよ？しかも何度もルート間違えて、進めなくなって戻ってやり直し、の繰り返し。岩のペンキで描かれた矢印を頼りに進むも、それがホントにあってるのかさっぱりわからない。
お、空が見えてきた！なんだ、すぐじゃん。標準コースタイム通り20分でホッキリに到着。一応稜線なので、中間道からは絶対に見えない裏妙義が木の向こうにうっすらと見える。ただそれだけで正直景色は全く無い。うーん、なんだかなあ。せっかく稜線に上がったのに、やっぱりピークを押さえなければ何も見えないのか。
すると白雲山側から3人組が降りてきた。話をすると、一人はガイドさんで大の字の方から白雲山を縦走してきたらしい。ハッシーも言っていたが、妙義の主稜線縦走はガイドさん連れがとても多いとのこと。確かになあ。素人じゃガイドいないと無理だよ、この岩場は。手取り足取り教えてもらわないと、先に進めやしない。そんなこんなで
「自分はただの素人で、どうしても稜線に上がりたくて中間道から登ってきました。」
「なのでこれから降りるところです。」
と伝えると、
「もったいない。ここまでスゴい大変だったでしょ？苦労して登ってきて絶景も見ないで引き返すの？この先にパノラマの絶景ポイントがあるから多少時間かかっても絶対行った方がいいよ！！」
と強く勧められる。バラ尾根のピークのことだ。コースタイムはホッキリから20分程度。時間的に問題はない。ただしそれは行きの時間のこと。自分は知っている。帰りは標準コースタイムでは戻れないことを。見様見真似で登ってきた天然の岩場を、何のスキルもない自分がすんなりクライムダウンは出来ないことを！これは計画段階で予想しており、案の定自分にはキャパオーバーのコース。今回下りは標準コースタイムの係数1.5倍でシミュレーションしていた。
13:00まで後5分。集合時間の15:00までを逆算すると、中間道に復帰してどんなに遅くとも14:00には出発しないと間に合わない。行けるか？取りあえず引き返し時間まで進めるだけ進むか！ってことで再び木の根を枝を掴んでバラ尾根を進む。稜線はとんでもなく狭い。道幅は30cmもないだろう。人とすれ違うのも難しい。しばらく進むと木の枝の向こうに一段と高いローソク岩状の岩稜が見えてきた。ピークに人がいる！あれだ、あれがバラ尾根のピークだ！
しかしこの時既に時間は13:15。バラ尾根のピークは遠めで見ても明らかにクライミングが必要な形状をしている。多分行けば登れる。でも降りられるのだろうか？悩む、悩む、悩む。結論。引き返す。今の自分の実力では無理。体力も経験もスキルも足りない。無理をしてみんなに迷惑をかけるわけには行かない。集合時間に遅れるわけにもいかない。
意を決し、来た道を引き返す。ほどなくホッキリに復帰。ここから来た道を戻るのだが、来た道がわからない。まあ、最初から道なんてないんだけど。所々ペンキの矢印に×がついていて、行っては進めなくなって戻るを繰り返す。登りの時と同じことやってる。で、天然の岩場。案の定立ち往生した。登れたけど降りられない。掴みやすい突起をグリップして「足が、足が！足をかける場所がわからーん！」とやっては腕がパンプしてそのまま岩をズルズル〜。腕時計のバンドが傷だらけになってしまった。
何とか中間道に復帰。今思えばピストンするんだから荷物はデポしていけばよかった。身軽ならもっと早く移動出来ただろうに。それとこれも後でハッシーに教えてもらったのだが、岩場のクライムダウンは恐くて岩に張りついていたら、下が見えないから足場なんてわからんだろ、って。うーんもっとも。でも岩場で体離すには結構腕力使うし、やっぱ恐いよー。
さて、時計は13:45。リミットまであと1:15だ。もう大砲岩エリアに寄り道する時間はない。とにかく中間道を中之岳方面に進む。大砲岩を泣く泣く通過。ただ、今回はまだ一度も鎖を握っていないので、せめてもってことで鎖場連続の「第二石門ルート」を選択。しかし「片手下がり」も「つるべ下がり」も鎖は全くいらなかった。ホッキリへの道を往復したあとだと、この程度の鎖場はむしろ岩を掴んで登った方が楽ということに気づいた。鎖があるとどうしても腕力で登ろうとしてしまう。足を中心に三点確保で岩を登った方が体力の消耗が少ない。
ほどなく「たてばり」と「かにの横ばい」をクリア、するっと下山して集合時間の15:00ジャストに中之岳大駐車場に到着。1分の遅れもなく到着とは我ながら優秀なタイムマネジメント能力、と自画自賛。自分以外は前回と同様、皆ドライブインでビールを飲んでいた模様。ほどなくメンバー全員集合。昨年と同じく宿泊地である軽井沢へ移動開始。お世話になるのはこれまた昨年と同じく千代田区の保養施設「メレーゼ軽井沢」のコテージ。のんびり一泊、翌日は温泉に立ち寄り帰路に着いた。
今回の山行は何一つ達成感の得られない、非常にモヤモヤしたものだった。妙義ならではの高度感の味わえる絶景を一つも見ることなく下山した。時簡短縮のため見晴らしにも行かなかったし、時間切れでバラ尾根のピークも行けなかった。前回は「天狗のひょうてい」だけだったので、今回は「大砲岩」も！と思っていたが、そのエリアには足を踏み入れる時間すらもなかった。そしてグラサンを紛失・・・。
これは是非リトライしないと！次回は一人で来ようと思ってます。悔しくて悔しくて。数時間のコースタイムではやはり妙義の主稜線は無理だと言うことが良くわかった。次回は春くらいに一人できて、中之岳から石門ルートでバラ尾根のピークをゴールにピストンしたいなあ、なんて思ってます。
まあ色々といい勉強になりました。ちゃんとアルパインクライミングを習いたいなあ、なんて思う今日この頃。
■装備関連
�．痢璽好侫Дぅ�/チェストバッグ
⇒今回の山行で投入の新規装備はこれ一つ。7月の富士登山の時に、結構チェストバッグ使ってる人多くて自分も欲しいな、と思ってました。特に山小屋泊の時はザック置いてから動き回る時に貴重品入れが無くて不便しました。また、両手が届く範囲に小物入れがあると便利だし。問題は容量。ノースフェイスのは薄くてマチがなく、大した量が入らない分、非常にコンパクト。もう一つの候補、「パスファインダー」(くりぼうさん使用)はマチがあって容量十分。小さいペットボトルも入るので、行動食とあわせてピークアタック時に重宝しそう。チェストバッグ用の小さなレインカバーもついている。どちらも二つ折の地図ケースがついているのは一緒。スマホとデジカメ、財布、マルチツールだけ入れば取りあえずはOKなので、今回はノースフェイスをチョイスしました。ザック背負わない時は外してショルダーバッグになるので移動中も使えてとても便利。もっと早くに買っておくべきでした。
■写真解説
�，Δ韻發租仍撹�SクラスのOG原さん撮影。今回自分は時間の関係で大砲岩エリアには行かなかったので。正面の鎖を上がるとY字型の石の回廊に出る。写真は「胎内くぐり」側からの撮影で、左が「天狗のひょうてい」右が「大砲岩」となっている。大砲岩エリアの配置がよくわかる1枚。このエリアは極めて危険な岩稜地帯。滑落したら100〜200mの自由落下を楽しんだ後、間違いなく即死できる。
��同じくOG原さん撮影の1枚。大砲岩から天狗のひょうていを見る。樹木があるのでよくわからないが、トンでもない高さにいる。青いジャケットの人の足元は軽く100mはある絶壁。クレイジーだ。
�Ｃ羇崙察粉愿譴佞譴△い瞭察砲任虜覇餞悄�第二石門ルート上の鎖場「つるべ下がり」を上から撮影したところ。背中側が「たてばり」となり、そのまま「かにの横ばい」へとつながっている。対象物がなくてわかりにくいが、鎖の垂れ下がり具合を確認いただきたい。群馬では小学生の遠足コースになっているそうだが、垂直10mの岩場はどうなの？
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