眠れぬ夜の物語コミュの働く男　ナイトパピヨン

僕の乗る電車は最終になるといつも満員。
よっぱらいのそばなどになった日はとても悲しい。
会社にいればよかったとつくづく後悔してしまう。
駅はいつものように賑やかである。
これから街へくりだす人。
どこかで遊んできたような人。
飲み会が終わって帰る人。
僕と同じように仕事をして帰る人。

会社で少し悩んでいたせいもあって終電ぎりぎりだった。
もう満員状態。窓はすべて曇っていた。
僕はこういうときぎりぎりまで待つことにしている。
スーツが窓で少し汚れるけど、外を見ながら帰ることができるから。

電車に乗った。ドアが閉まる。この瞬間が僕は好きだ。
一日が終わったようなそんな気にさせてくれる。
誰もいない乗り場はその象徴だ・・・
駅を出て電車が走り始めると街のネオンが目によくつく。
２０歳くらいのころまではこのネオンが大好きだった。
昼は家で寝て。ネオンが燈ると僕はそれにつられて街へでたもんだ。
ふっと今の自分の寂しさと昔の友を思い出す。
昔の友達とは今は会っていない。連絡もしていない。
きっともう２度と会うこともないんだろう。

ゆったりと流れる景色はあの頃と同じ。
僕と同じように時が止まっているかのように。
でもネオンはいつも人を惹きつけ。
僕は人を遠ざける。ほんとはネオンのようになりたいのに。

（ナイトパピヨンそれは人の夢に住むという）

（ナイトパピヨンそれはとても美しいと聞く）

（ナイトパピヨンそれはこの夜の街の子供達なのかもしれない）

僕は途中駅で何度も降りてはまた乗るという作業がある。
これは少し嫌だ。だからなるべく隙をみて手すりへと寄る。
でも椅子へは座ることはない。
ようやく僕の駅に着いた。
ここで降りる人は少ない。ここで少しだけ楽しみなことがある。
駅の構内で歌っている２人組みの男の子がいる。
僕の知っている曲を歌っている。とても楽しそうに・・・
僕は一曲だけいつもここで聴いてから帰るようにしている。
今日の歌は・・・はい知らない曲でした・・・
残念・・・でもいい曲だ。素でそう感じることが出来た。

とても寒い夜にぴったりの曲だ。
今にも雪が降り出しそうなそんな夜。

僕はコーヒーを３本買った。