ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

パロディー部屋(時代劇など)コミュの『続・風神の門』

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
なんちゃって・続・風神の門〜第1回〜

風神の門を出て旅に出た才蔵とお国であったが、才蔵が時折見せるさびしげな表情といらだっている仕草に、お国は気づいていた。昨日は才蔵は草むらで刀をふりまわしていた。
お国は思い切って口を開いた。
「才蔵さま、どうかなさったのですか。何か気にかかることがあるのでございましょうか?」
「え?なんのことだ。お国」
「いえ、なにかしら才蔵様が悩んでいるようにお見うけいたしました。もしや、何か私に不服があるのかと・・・」
「わしが悩む?そなたとこうして、なごやかに旅をしておるというのにか?」
ははは、才蔵は大口を上げて笑う。
「空を見ろ!いい天気だぁ〜〜」
才蔵は草むらに大の字に寝転がった。一見快活な才蔵の姿ではあったが、お国はなぜか胸騒ぎがしていた。空を見ろと言いながら、才蔵自身はもうすでに目を閉じている。
「才蔵様・・・」
「何を気にしておる。わしは今しあわせじゃ。そなたに不服などあろはずもない」
目を閉じたまま才蔵がつぶやく。

「盗っ人だ!誰かそいつをつかまえてくれ〜〜」
大きな声が聞こえてきた。
才蔵は跳ね起きる。見ると、街道を駆けて行く二人の者がいる。
「お国、行くぞ!」
「さ、才蔵さま!」
才蔵は、盗人と呼ばれ駆けて行く男に追いつき、つかまえた。
「貴様、何を盗んだ」
「うるさい、何も盗りはしない」
そこに、商人風のいでたちの男が息をはずませながら、追いついて言った。
「うそつけ、私の懐から財布を盗んだくせに!返せ!」
「何も盗ってないと言っただろ!」
その盗人は懐から小刀を取り出した。
「きゃー」
騒ぎに集まった野次馬は、それを見て逃げ出した。
「あぶないな・・」
才蔵は刀を抜いた。そして苦もなく一撃で、その小刀を持った右腕にみねうちを食らわせる。
男の手から、ぽろりと刀が落ちた。
「く、くそう・・・返してやるぜ!」
財布を地面に叩きつけ、男は逃げていった。
「どうもありがとうございます」
「道中気をつけるがよい」
才蔵はにこやかに笑って男を見送る。

「うん、良いことをしたな。さあ、お国、わしらも先を急ごう」
「はい・・」
お国は才蔵の一歩後ろを歩んでいく。
そう、才蔵様は良いことをなされた。盗まれた財布を取り戻しただけのこと。才蔵様の正義感のあふれる気持ちがそうさせただけのこと。そう思ってもなぜか湧き上がるこの胸騒ぎに、お国の気持ちは揺れる。
お国はさきほどの才蔵の顔を思い返し、はたと気づいた。
才蔵が刀を抜いた瞬間の顔を。そこには生き生きとした才蔵がいた。

眩暈がして、お国は道端にうずくまった。
気配を感じて才蔵が振り返った。
「お国どの、どうなされた?」
「いえ、眩暈が。でもたいしたことはございません。少し疲れただけにございます」
「そうか。もう少し先に茶屋があろう、そこでまた休むとしよう」
自分に向けられた笑みはいつもと変わらない。
しかし、お国は確信していた。

やはり・・・才蔵様は、戦いの中でしか生きられないのだ。
死と隣り合わせのあの緊張の中こそ、才蔵様の居場所なのだ。
そして、才蔵様自身はそのことに気がついてはいない・・・。

菜の花がゆれる春の陽射しとうらはらに、お国は湧き上がる不安でいっぱいだった。

つづく。

コメント(52)

妄想キャスト
俊岳 佐藤慶y

※イラスト のハハ
なんちゃって・続・風神の門 第5回

「さ、才蔵さま・・」
「待て、お国」
後を追おうとしたお国を俊岳はひきとめた。
「茶でも飲んでいけ」
あの時のように、静かに俊岳は茶をたてはじめた。
「お国・・・。そなたの気持ちはよくわかっておるつもりだ」
「それなら、なぜ、お許しくださらないのですか?」
「才蔵は・・・あやつは・・・一つの所にとどまる男ではない」
お国ははっとした。
「お国・・・そのことは、お前が一番よくわかっていることではないのか?」」
「父上・・・」
「娘が不幸になるとわかっていて、それをみすみす許すわけにはいかん」
「父上・・・でも、それでもわたくしは・・才蔵さまをお慕いしております!あの方のそばにいたいのです!」
お国は才蔵を追いかけるために、部屋を出て行った。
お国のために入れた茶を俊岳は自らすすった。
「・・・母親のそなたが生きていたら、なんと言ったであろうか?」

屋敷の外の池のほとりで才蔵がうなだれているのを、お国はほどなく見つけた。
「才蔵さま?」
「お国・・すまぬな・・どうもわしは・・・短気でいかんな」
「才蔵さま!私は才蔵さまの妻になりとうございます!」
お国は、才蔵にしがみついた。才蔵はお国をやさしく抱きしめ、そしてお国の腕を静かに離した。
「何を心配しておる。わしがそなたに『妻にならぬか?』と聞いたのだぞ。そして、そなたは『はい』と言った」
お国はうなづいた。誠実な才蔵の澄んだ瞳がそこにあった。
「明日、またあらためて許しを得に来よう。明日がだめなら、その次の日も来て許しを得よう。いくら二人で決めたこととはいえ、俊岳どのに許しを得ないことには、どうにも落ち着かん!わしはその辺で野宿することにいたす」
白い歯を見せて才蔵は笑った。
「そんな!才蔵さま!では、私も一緒に野宿いたします!」
「いやいや、そなたは、父上と親子水入らず、ゆっくり屋敷で休んで、話をなさるがよい」
そう言って才蔵は草笛を吹きながら飄々とお国に背を向けた。
いつしか、日は落ち、暗闇が忍びよってきた。

そんな二人を暗闇から覗く妖しい影に、二人とも気づいてはいなかった。

屋敷に戻ろうと、お国がきびすを返したその時だった。
鳥がいっせいに飛び立った。
とまもなく、お国は体がよろめいた。
地面を踏みしめようとしたが、その地面が底からつきあげてくる。
地面が動いているのだ。お国は、地面に手をつき、体を揺れに任せるほか、すべはなかった。

「うわーーーー!!」
才蔵の叫び声が聞こえた。

「才蔵さまーーー!」
お国は必死に、這って声の方へと向かったが、果たしてそこには生垣がくずれた後があるだけだった。そして、その側に、先ほど吹いていた草笛をお国は見つけた。
「ま、まさか才蔵さま、この下敷きに?!!!」

「才蔵さまーーーーーーー!!!!!!!」

お国は、自分の悲鳴とともに、気を失った。
なんちゃって・続 風神の門 第6回

才蔵が姿を消して後、お国は屋敷の者とともに、必死で岩を取り除いた。しかし、才蔵の屍はそこにはなかった。才蔵の足取りは以前つかめなかった。才蔵の姿は叫び声を残しただけで、そのままふつりと姿を消したのだった。その日から、もう一月が過ぎようとしていた。

「才蔵殿の行方は、いっこうにわかりません」
桔梗は、襖の向こうのお国を気遣いながら、小声で俊岳に報告した。
お国は才蔵が姿を消してから、不眠不休で探していたが、とうとう、倒れてしまっていたのだった。

「ご苦労であった。本日で才蔵の探索は打ち切りとする。皆の物にも伝えよ」
俊岳は表情一つ変えずに、桔梗に告げた。
「才蔵さまは神隠しにあってしまわれたのでしょうか?」
「詮索無用じゃ。さがるが良い」
「お国さまと夫婦の約束を交されておりましたのに、お国さまが気の毒でなりませぬ」
「お国にとっては、むしろ、才蔵が消えたことはよかったかもしれぬ」
「な、なんということを!」
「お国には、わしがそのうちに、良い婿をあてがってやる!才蔵よりもいい男は、この世にいくらでもおるのだから!」
憮然とした顔で、吐き捨てるように告げた俊岳だったが、桔梗のとまどった顔を見やってから、少し和らいだ口調になった。
「そうじゃ、桔梗、そなたにも婿をさがしてやらねばなるまいの」

「わ・・わたくしは・・」
桔梗は顔を赤らめた。
「だれぞ、好いた男でもおるのか?」
「いえ・・好いた男など・・ひとりもおりませぬ」
消え入るような声で桔梗はかぶりを振った。
「そうか・・早く休むが良い」「
「で、では、下がります」

桔梗は部屋をあとにした。
「好いた男でもおるのか?」
俊岳の声がこだまのように何度も頭の中に響いてくる。
俊岳に、従順に仕えてきた桔梗だったが、今宵一つだけうそをついたことにも動揺していた。しかし、そのうそはつき通さねばなるまい・・。

「御屋形さま、俊岳さま・・・私は・・・俊岳さまを父のように思うてきました。しかし・・今の私は・・・」

不意に桔梗はうずくまった。この胸の痛みの理由を心の奥で知ってはいたが、認めてはなるまいと、悟られてはなるまいと、必死に堪える桔梗であった。
妄想キャスト
桔梗 森口瑤子

※イラスト のハハ
なんちゃって・続 風神の門 第7回

「ここは一体どこだ〜〜!」
暗い闇の中で、才蔵はひとり叫び続けていた。
「これは夢だ!夢でなければこのようなことはありえん!!」

才蔵の体は、宙に浮かんでいた。
必死でもがくが、手は空をきるばかり。踏みしめるべき大地はなく、足も宙ぶらりん。横になっているのか、立っているのかさえわからなかった。わかっているのは、周りが暗闇ということだけだ。宙を飛んでいるのだとしても長すぎる。もうかれこれ、半時もこのままの状態だ。

「わしは・・・死んだのか?ここは地獄か??おい、エンマさまよ!いるなら返事しろ〜〜このやろう!」
大声を出し、呼べども叫べども、何も返事は返ってこない。
胸に手をあててみる。心の臓は脈打っている。体も温かい。息苦しくもない。

一体何が自分の身に起こったのか?
宙ぶらりんのままで、才蔵は一瞬前のできごとを思い返した。

お国とともに俊岳の屋敷に出向いたが、結婚の許しが得られなかった。今宵は野宿と決め、お国と別れ、一人ぶらついていた。

そうだ、あの時、わしの後をつける輩がいた。
ひとり・・いや、二人はいたはずだ。
最初は俊岳の手先だろう、自分の動向が気になるゆえ、監視しているのだろうと、思ったが、それにしては、刺すような視線と殺気を感じた。刀に手をかけた時、足元が揺れた。地震が起こった。

「覚えているのはここまでだ。ちきしょう!地獄の鬼どもよ。迎えに来るなら早く来い!遅いぞ!!」
そう叫んではたと気づいた。お国はどうなったのであろうか?
「お国、近くにいるか?お国、返事してくれ!」

その時、才蔵の足の下の遠くの暗闇に、一つの小さい点が現われた。
途端、才蔵の体がすごい勢いで回転を始めた。渦のうねりに巻かれるようにその小さな光の点に勢いよく吸い込まれていった。
「お迎えが、手荒すぎるぞ!」
さしもの才蔵もこう叫ばずにはいられなかった。
なんちゃって・続 風神の門 第8回

どたり、と、才蔵は地面に投げ出された。
そこは畑の真ん中であった。
畑を耕していた者〜田吾作〜が鍬を投げ捨て、腰を抜かした。
才蔵は顔をしかめながら起きた。叩きつけられた打撲の痛みはあるが、手も足も動く。どうやら体は無事のようだ。
「生きてる!良かった。生きてる!バンザイ!」

田吾作は、腰を抜かしたまま、こわごわと擦り寄ってきた。
才蔵はあたりを見回した。お国の屋敷の周りとは、いささか様子が違う。

「すまぬが、鳥居俊岳の屋敷はどちらかな?」
「鳥?の旬が苦??」
田吾作の声は震えていた。
「な、なぜ、怖がる・・別にわしは、あやしい者ではないぞ」
「そりゃ、おそろしいわな!!天から人が降ってくれば、驚くわな、あやしすぎるわな!」
「え?誰が?」
「・・・おめえさんが」

「どこから?」
「・・・空から」

二人とも顔を見合わせ、空と顔を指差した。

「おお、そうか、そりゃあ、驚く、驚く・・って、えーーーーーーー?一体どういうことだ。わしはこの空から来たというのか?」
田吾作は首根っこをつかまれ、ふりまわさながら、苦しそうにうめいた。
「わしゃ、わからん。それしか見てねえ。おめえさんが空から降ってきたことしかわからんけん」
得体のしれない恐怖が、才蔵の身を包んだ。
「教えてくれ・・・一体ここはどこだ」
「ここは、島原だ」
「『し・ま・ば・ら?』『い・わ・き』ではないのか?」
「い・わ・き?そんなところは知りゃあせん」
「島原?・・まあよい・・ここの殿様の名前を言うてみてくれないか」
「お殿さまは・・松倉様」
「松倉・・・」
才蔵は、その名前に聞き覚えがあった。松倉重信・・たしか、関ケ原の戦いの後、大和の五条二見城主となったはずだ。

「松倉重信か?」
「いえ、もう代がわりなさって、勝家さまが家督をお継ぎになっています」
そういいながら、田吾作の口元はわなわなと震えた。
「非道な・・殿様じゃ・・重信さまもむごい殿様じゃったが、勝家さまは、それをはるかに超えた獣じゃ。人じゃありゃあせんわ。年貢、年貢、年貢・・このやせた土地で、一体どうしろと言うんじゃ!」
吐き捨てるように田吾作は言う。しかし、才蔵はその田吾作の嘆きなど聞いてはいなかった。大阪夏の陣の後、重信は有馬晴信の旧領であった肥前日野江を手に入れたことを思い出したのだ。
「なにーーーーー、ここは肥前だというのか?」
才蔵の背中を汗が流れた。離れすぎている。地震で飛ばされたとしても、飛ばされすぎだ。そして、もう一つの恐ろしさが才蔵を襲った。
「お主、今、勝家が家督を継いだ、といったな」
冷たい汗が流れる。しかし、確認せねばなるまい。才蔵は唐突に切り出した。
「家康が天下を手に入れたのは知っておるな?」
「はい。実は庄屋さまが、いろいろとお話してくださるんで。おれらも天下のことはちぃとはわかりますで」
田吾作は少し誇らしげな様子を見せた。

「わしは、大阪冬の陣、夏の陣に参加した。豊臣側に加勢したのだ。しかし、負けてしもうた。徳川の世になってしもうた。わしがあの時、家康を討ち取っていればと、今でも思う」
「あはははは、おめえさま、冬の陣に参加などと、家康を討ち取っていただなどと、ほらをふくのも、たいがいになされ!あははは」
「何を笑う?」
「大阪夏の陣といえば、もう一昔も前のことだ。おめえさま、そんな小さいこどもの時に何ができるだ?いや、一体、おめえさま、今いくつだ?」
いぶかしそうに田吾作は才蔵を見た。

「将軍様は、たしか、家康様、秀忠様、そして、確か、今は・・そう、家光様。物知りでしょう?これも庄屋さまに習ったのですよ」
田吾作は得意そうに言った。
「なにぃーーーーーーー家光だと?わしは知らんぞ!家光が三代将軍になっただと?いつのことだ?」

土地だけではない。時もまたどこかおかしい。違う土地、そして、違う時間。才蔵は御伽草子を思い出した。
「わしは・・浦島太郎か?」

「わけがわからんーーーーー」
天に向かって叫ぶ才蔵であった
妄想キャスト
田吾作 不破万作

※イラスト のハハ
なんちゃって・続 風神の門 第9回〜激闘!島原の乱〜

田吾作と話すうちに、はるかに時がたっていること、場所が違うことにあらためて気づいた才蔵だった。
「ちと、ニ、三日やっかいになるぞ!先のことを考えるのはそれからだ!」
田吾作の家の居候を勝手に決めた才蔵であった。しかし、その日の夕餉に才蔵は絶句した。
「そなた、このようなものしか食うておらぬのか!」
食事は粗末なものであった。
「今日は才蔵さん、あなたがいるから少し奮発しましたが・・そんなもんしかないがね・・」
得体のしれぬわしでもこうして気をつこうてくれて、もてなしてくれている。田吾作の気持ちがありがたかった。少しは遠慮せねばならぬなと思う才蔵ではあったが、口や腹は気を使わぬようで、がつがつと食ってしまっていた。
「馳走になった。かたじけない」
才蔵は心から礼をのべた。

田吾作は食事も早々に、寄り合いがあるといって出て行った。帰宅した田吾作の顔は暗く思いつめていた。
「何か厄介ごとでもあるのか?わしに話してみんか?いい案も浮かぶかもしれんぞ」
「才蔵さん、黙って明日ここから出てってくれ。そして、早くこの島原から離れるんだ。いや、今すぐの方がいい。ここから出てってくれ!」
田吾作は才蔵の腕をつかむと、戸口の外に押し出し、戸を閉めた。
「田吾作、おい、どういうことだ!わけを聞かせてくれ!寄り合いで何があったんだ?」
田吾作は戸口に背を向け、こぶしを握り締めていた。
才蔵は何度も戸を叩き話かけたが、田吾作からの返事はなかった。才蔵は仕方なく、田吾作の家を後にした。

あてどなく歩き回った才蔵は、川のほとりに腰をおろした。島原を出よと言われてみても、途方に暮れる才蔵である。田吾作の態度も気になる。しかし取りつく島もない田吾作の頑とした拒否にはどうすることもできなかった。
「悩んでもいても仕方ない。下手な考え休むに似たり。今宵は寝るとするか!」
眠りに入ってほどなくして、多勢の足音で才蔵は目をさました。才蔵は本能的に身を隠した。
「みな、集まったか?」
「ああ」
「ほんとにやるのか?」
「もう、おらたちには、これしか残ってねえ。やるだけだ」
「しかし、こんなことやっても死ぬだけだ。もう一度考えなおさねえか」
果たして、その声は田吾作だった。しかし、かぶせるように多勢の声があがった。
「今、みなで決めたばかりじゃないか、臆病もんめ!そんな奴は帰れ!」
「どうせ今のまんまでも死ぬ。ひもじくて死ぬだけだ!」
「決めたことだ。今は一人でも二人でも人数が欲しいって、あの方の言葉を忘れたか田吾作、やるぞ!やるだけだ」
「急ごう!」
「おお」

才蔵は鍬や鋤を持った田吾作たちの姿を見送った。そして、ほどなく後をつけはじめた。
なんちゃって・続 風神の門 第10回〜激闘!島原の乱〜

後ろから田吾作たちの様子をうかがっていた才蔵だったが、川のほとりでうずくまっている女を見つけた。女は泣いているようであった。気になって才蔵の気はそちらにそれた。翳っていた月が雲から顔を出し、月明かりは女の横顔を照らした。その顔を見て才蔵は息を呑んだ。
「お国!」
思わず、駆け寄って声をかけた。
「お国!お前もここに来ていたのか!ああ、会えてよかった!お国!」
才蔵は女を抱きしめようとしたが、その女はその手を振り払い、いぶかしそうに才蔵の顔を見るだけだった。
「な、何をなさるのですか?あ、あなたさまはどちらさまですか?わ、私はお国という人ではありません」
「覚えてないのか?わしだ、才蔵だ!」
才蔵は、女の腕をつかんで激しく迫った。
「さ、才蔵?いいえ、私は、あなたのことは知りません」
そう言って女は才蔵の腕を振り払い、立ち去ってしまった。

才蔵は呆然として、その場に立ち尽くしていた。
「な、なんだって・・もう、何がなんだか、わけがわからん」
はたと気づくと、田吾作たちのことをすっかり見失っていた。
「しまった。抜かった。もう、いい。今夜は眠ることにしよう」
才蔵は、周辺をうろついていたが、小さな洞窟を見つけ、ほどなく、深い眠りについた。

才蔵は、目をさました。

洞窟を出ると、遠方で、騒がしい音がする。そちらの方へと、才蔵は急ぎ足でかけだした。胸騒ぎがする。本来なら、畑仕事に精出す村人たちがいても良さそうなのに、なぜか、誰も見当たらない。

騒がしい方角には城があった。しかし、周りの様子がおかしい。そこには傷つき、また、息をしていない人々の姿があった。
「戦だな!」
才蔵は、城への潜入を試みた。果たして、そこは戦場ではあった。武士対農民が、はげしい火花を散らしていた。

才蔵は人の少ない方へとまわり、ふわりと、屋根から飛び降りたつもりであったが。しかし、後ろから、槍をつきつけられそうになった。才蔵はそれをかわして刀を抜いた。しかし、槍を突きつけたのは、武士ではなかった。
「わしはお前らの敵ではない!」
しかし、その者には才蔵の言葉など耳には入ってなかった。
才蔵は、あらゆる者の鍬や鋤や、そして城内の者の刀を交わし、防戦一方で走った。そして、やっとのことで、田吾作をみつけた。

「こ、これは、一体、どういうことだ!」
「才蔵さん、なぜ、ここに?あんたには関係ない!島原を離れたと思っていたのに!」
田吾作もやみくもに、鍬を振り回している。
「そなたたちがこんなことをしても、勝ち目はないぞ」
「しかたがないのだ」
叫び声をあげて田吾作は城の武士たちに向かっていく。
「うひゃー」
田吾作が斬られそうになり、才蔵は、その刀を受け止め、その武士を斬る。その繰り返しが、永遠に続くかと思われた。

才蔵の前にひとりの男が立ちはだかった。
「久しぶりだな・・・才蔵!!」

「お、お前は・・・・」

「久しぶりだな・・才蔵!!」
「お・・お前は・・・」
才蔵は息を呑んだ・・
「お前は、ちゃぼーーーーーーー」

「やっと見つけた。才蔵。やっと見つけたと思ったら、なぜかしらんが、暗い闇夜にまぎれてしまった。そして、こんな所に来てしまっていた。しかし、とうとう見つけた」
「ちゃぼ、お前も同じか!わしと同じような目にあったのだな。こっちに来てしまったんだな」
才蔵は、なつかしさのあまり、笑顔で答えた。
しかし、ちゃぼの顔は才蔵の顔を睨みつけていた。
「才蔵、お前は、俺の敵だ!お前さえ現われなかったら、親父は死なずにすんだんだ。親父のカタキだ!覚悟しろ才蔵!!」
ちゃぼは才蔵を睨みつけた。

「ちゃ、ちゃぼ、な、何、言ってるんだ?」
「やーーー」
ちゃぼは才蔵に斬りかかった
「やめろ、よせ!」
好都合とばかりに、敵も才蔵に斬りかかる。

「仕方ない!田吾作、こっちだ!逃げるぞ!」
才蔵は目くらまし玉を投げつけ、煙幕とともに、田吾作と城を脱出した
妄想キャスト
ちゃぼ 宮田明
※イラスト のハハ
なんちゃって・続 風神の門11回〜激闘!島原の乱〜

田吾作と才蔵は戦火を逃れるようにして生きのびてきた。才蔵が田吾作と寝起きをともにする中で、一揆の仔細を田吾作や噂に聞いた。ここ島原の他、天草でも一揆が起きているようだった。 田吾作らの村の農民を先導しているのは太郎兵衛という庄屋であった。

「このまま戦が続けばみんな死んでしまう。早くやめさせなければ・・」
しかし、才蔵も田吾作も策がなかった。なすすべなく戦況を見守っていた。いや、見守るというよりは隠れ住んでいる状態であった。二人の願いもむなしく、一揆はますます激しさを増していた。

「もう一度、太郎兵衛さまに会って話してみる!」
「無駄だ、よせ!それにこの戦火の中だ。どこにいるかもわかるまい!それに、すでにもう・・・」
「亡くなっているかもしれない・・」その終わりの言葉を才蔵は飲み込んだ。
「いや、おらは、行く!探す!!城に行ってみる!」
田吾作はねぐらにしていた洞穴を飛び出した。才蔵は慌てて、田吾作を追いかけた。

駆け出した二人の目の前に、女がうつろな目をして歩いてきた。そして小さくうめき、倒れた。二人は驚いて駆け寄り、抱き起こした。
「あっ、お、お国!」
「違う。こ、この人はお富久さんだ」
「お富久?」
「そう、太郎兵衛さんとこの娘さんだ。し、しっかりしなされ」
「田吾作、城に向かうのは後回しだ。まずは介抱が先だ」

二人の手厚い看病のおかげか、富久はなんとか峠を越し、目を覚ました。しかし、その目には精気が宿っておらず、うつろな目をしていた。
二人とも富久を放っておくこともできず、さりとて、城の中の様子も気になった。
「太郎兵衛さまは、無事か?」
あせって、そう問う田吾作を才蔵は制した。
「富久どの、まずはそなたの体を治すことが先決だ。何も考えなさるな。まずは、眠るが良い」
そう才蔵は言い、お富久はまた目を閉じるのであった。

数日が過ぎた。才蔵と田吾作はかわるがわる声をかけるが、富久の顔は能面のようであった。しかし、二人とも何度も声をかけた。この日も才蔵は富久に声をかけた。
「富久どの、今、田吾作が野草を取りに行ったからな。もうすぐしたら戻る。何も案ずることはないぞ。とはいえ、むさい男の顔ばかり見て見飽きたかのう。わしはともかく、田吾作は美男子とはほど遠いからのう。まぁ、カエルと比べるとむろん美男子かもしれんがのう。わはは!」

富久の目から涙が一筋こぼれ落ちた。かすかに顔に赤みがさし、口を開いた。その小さな声は次第に嗚咽となってこぼれた。
才蔵はそれに気づかないふりをして背伸びをした。
「さあてと、用足しでもしてくるかなぁ〜」
お富久は才蔵に背を向けて、しゃくりあげながら泣きだした。

ちょうどその時に田吾作が帰ってきた。
「さ、田吾作、もう一度、野草を取りに行くぞ」
「な、何を申されますか、お富久さん、どうしなすったか?お、お富久さん、だ、大丈夫か?なぜ?こんなにも泣いておるんだ?」
しかし、返事をせず、泣きじゃくるままのお富久を見ておろおろした田吾作は、はたと気づいた。
「ま、まさか、才蔵さん、あんた、え!ひどい人だ!なんということを!。お富久さん、才蔵さんに何か悪さをされたのか?」」
と、お富久に問う田吾作の背を押し、洞穴から追い出した。
「違う、違う、何もわしは何もしとらん。」
「本当か?」
「本当だ。目を見てくれ、わしがそんなような男に見えるか?」
「う〜〜ん、見・・・え・・・るっ!才蔵〜〜!!この野郎!!」
なんちゃって・続 風神の門12回〜激闘!島原の乱〜

「田吾作さん、取り乱してすみませぬ」
才蔵を殴ろうとする田吾作を止めたのは富久だった。
「な、何も悪さは、されてはいないんですね」
「はい」 そう告げる富久に田吾作は振り上げた手を下ろした。
「今までお二人の声は聞こえておりました。でも、耳の中を通り過ぎていくだけのようでした。体も動きませんでした。生きながら死んでいるようでした。でも、今日才蔵さんの言葉にはじめて涙が出たのです。そして声も出ました。ありがとうございます」
「して、太郎兵衛さまは無事か?」

田吾作の問いに富久は悲しげに目を伏せた。
「いえ、わかりませぬ。とても無事とは思えませぬ。わたくしは、皆が死んでいくのが恐ろしゅうて、あの場所から逃げることしか考えられなかった。私は卑怯者です。皆を焚きつけた父を止められなかった。皆とともに死ぬこともできず、自分はおめおめと逃げ出してくるだなんて」
富久は、声を絞り出すように話した。
「しかし、でもあのときの、おらたちにはもう、すでに生きる場所がなかった。おらも止めた。でも、どうしようもなかった。ぎりぎりだったんだ。いや、そんなことは今は考えんでええ。今はお富久さん、あんたが生きていてくれたこと。あんたの声を聞けて、わしは、わしは・・うれしい。あんたが今生きている、それで、それだけで、ええんじゃ」
田吾作は涙を流した。

「天草でも同じように戦が始まったと聞いた」
才蔵が口をはさんだ。
「ええ、そうです」
「父君はひょっとしたら、天草の連中と繋ぎを取っているのかもしれぬ。天草の農民も同じように戦っていると聞いた。そちらに加勢しているのかもしれぬ」
と、才蔵は考えを口にした。
「父が生きているのなら、見つけ出したい!生きていて欲しい。でも、これ以上、この戦に加担して欲しくはありませぬ。ああ、、これ以上人を死なせてはなりませぬ!もうこれ以上人が死ぬのを見たくはない!ああ、なんとしてもこの戦止めねば。ああ、でも、私に何ができましょう・・」
富久が体を震わせた。
「富久どの、今日は話はここまでにしよう。気持ちが一気に高ぶるのは体に良くない」
まだ話したそうにする富久を休ませた。
その夜、才蔵は一人で洞穴を出ようとした。しかし、二人に見つかってしまった。
「天草に行くつもりですか?才蔵さん?」
「用足しにというわけではないですよね」
「田吾作、富久どの、よく聞け。あんたたちは、ここで生きのびろ!まだ富久どのは体が回復してはおらぬ。田吾作は引き続き看病してやってくれ。それが、そななたちの生きる道だ。わしは、もう一度城に入ってみる。富久どのの父君を見つけ出してくる。もし、いないようであれば、また別の場所を探す。それまで辛抱してくれ!」
「いいえ、行きます!自分の父です。私も行きます」
「だめだ!死ぬぞ!戦うことあいならん!わかってくれ!ではさらばだ!」
と、駆け出す才蔵に田吾作も追いすがった。
「格好つけてもだめだよ、才蔵さん。城はともかくも、別の場所って天草に行くつもりかい?天草までの道のりは、おらの方がよく知っている」
「あ・・」
「あ、じゃないですよ。さあ、行きますよ」
こうして3人はまた戦火の中に飛び込むことになった。果たして3人の行く末に何が待ち構えているのだろうか、この暗い夜と同じ、誰も、何も見えない闇であった。
妄想キャスト
お富久 小野みゆきy
※イラスト のハハ
なんちゃって・続 風神の門13回〜激闘!島原の乱〜

三人は島原から天草へと渡った。富久は才蔵のやさしさに触れ、才蔵への信頼はいつしか愛情へとかわっていった。才蔵も富久に優しかったが、しかし、富久はその目は自分を見ていないと気づいていた。
たびたび、才蔵は富久のことをお国と呼んだ。そのたびに富久は、
「富久です。今日の私は富久です」
とうるんだ瞳で才蔵をみつめたが、
「すまない。私には夫婦の約束をした女がおる」と才蔵にいつもかわされた。

天草に到着した3人は手分けして、太郎兵衛の消息を探ることにした。伊賀の忍び〜蘭〜に出会った才蔵は、太郎兵衛の捜索を頼んだが、その後は蘭との連絡もそれっきりで途絶えてしまった。仕方なく、また三人は島原へと戻ることとなった。

島原に戻ると、そこには父太郎兵衛が無事で家にいた。
「父上さま!」再会の喜びもつかぬまに、富久は太郎兵衛になんとかこの戦を止めて欲しい、終らせて欲しいと告げた。しかし、太郎兵衛は、首をふるばかりであった。
「大丈夫だ!わたしたちには四郎様がついておられるのだから!なんとしてもこの手で、勝ち取る太郎兵衛は十字架を握り締め続けた。
「島原と天草、今こそ、この二つが力をあわせて戦うときなのじゃ、わしはそれを伝えに天草に行っていたのだ。原城に立て篭もって戦うのだ」
「父上さま、なんという・・戦を終らせるどころか、火種を大きくなさろうとしているとは」
富久の再会の涙はうめきの涙へと変わった。

「天草四郎か」太郎兵衛から一揆を指揮しているのは自分よりも年若の青年だと知り、才蔵は天草四郎に会いたいという欲求がふつふつとわいていた。
「風雲に乗じて天下を取る・・・」
小さな声で才蔵はつぶやいた。
「会うてみたいな!まずは会って話がしたい」
「さ、才蔵さま」
顔を輝かせる才蔵にお富久は絶望した。

明日面会させようとの、太郎兵衛の言葉だったが、才蔵はたまらず夜更けに前に天草四郎の隠れている洞窟へと向かった。
洞窟からは、会合を終えた農民たちが散り散りに出てきた。はやる気持ちを抑え、才蔵は洞窟に入っていった。

何人かの取り巻きを従え、年若な青年がそこにいた。
あれが天草四郎か?才蔵はなぜか、声をかけるのがためらわれた。

「皆、出て行ったな?ではそれでは又、呼び寄せるとするか・・」
四郎は小さくつぶやいて、一人洞窟の奥へと消えていく。才蔵は取り巻きたちに気づかれぬよう、岩陰に身を忍ばせ四郎の後を追った。

洞窟の奥は海へと続いていた。
月明かりに照らされた四郎の横顔は、微笑みに満ちてはいたが、才蔵はぞくりとした冷たさを感じた。
四郎は海面に向かって、
「無念の気持ちで死んでいったものたちよ、我に力を貸したまえ!」
と、つぶやいた。
水面がさざめき、大きな渦を巻いた。海の水が干上がり、渦の中に大きな空洞ができた。その中から人影が現われた。

才蔵はその人影を見ようと目を見開いたが、視覚よりに先に嗅覚が反応した。
辺りに漂う甘い香り・・・・。

「な、なにぃ!、こ、この匂いは!」
妄想キャスト
太郎兵衛 平泉成
天草四郎 早乙女太一 

※続・風神の門第13回>伊賀の忍び〜蘭〜に出会った才蔵・・・時空忍者サキ第10回とシンクロしています。
なんちゃって・続 風神の門 第14回〜激闘!島原の乱〜

(お、隠岐・・ど・・の・・か?)
才蔵は声も出せず硬直していた。

「さすがでございます。四郎様」
女が横穴から姿を現した。
「いよいよ原の城にて決戦でございますね。この女は薙刀の使い手。そして、キリシタンなのでございます。この女もあなたさまの手足となって働くことでしょう」
「今は、幕府に対して、一人でも多くの手勢が欲しいのだ。もっともっと人を集めなければいけないのだ!お江、お前の助言で多くの剣豪が集まった。礼を申す。幕府に一泡ふかせる。この手で自治をつかむのだ!この戦、勝たねばならぬのだ」
「四郎様、力強いお言葉でござりますこと」
誉めていながら、お江の目は冷たく光っていた。
「礼?そんなものはいりませぬ。私は血が流さえすれば良いのでございまする。多くの民の血が欲しいのです。大量の血。それが私の所望するところ」

(お江だと?・・・)
才蔵は自分の記憶をたどった。あれはいつだったか、蘭とともに野天の湯に浸かっているときに出会った女。生きのびていたのか?真田の最強の草、お江。しかし、蘭にしても、この女にしても若い。なぜだ・・。わしが、ここに来たことといい、わからないことだらけだ。

才蔵は隠岐殿を見つめた。あの戦火の中で散っていた隠岐殿。そして佐助。
お国は隠岐殿を思い出しては、こう繰り返していた。
「御方さまは、あのさなか、死ぬことならぬ・・と。お国は暇をとらすと・・私が御方さまのそばにいることを、お方様は許してはくださらなかった。佐助どのの刀を才蔵さまに届けるようにと・・それが最後の命令だと。ご自分は天守閣へと・・そして、それがお二人の最期・・」
才蔵は佐助の片見である刀の柄を握り締めた。

「お・・き・・」
思わず飛び出そうとした才蔵だったが、その腕を背中ではがいじめにされ、口はふさがれた。
「騒ぐな!」
女の低い声が響いた。
才蔵は、腰をおりかがめて体をねじり、女の腹に蹴りをいれた。女はうめいて手を離した。
「頼む、騒ぐな!」
才蔵は、頼むという一言に敵愾心のなさを感じた。
「ひとまずここは退散してくれ!」
女の瞳がまっすぐに才蔵の目を見返している。

「おや?幕府方のねずみではあるまいな」
お江が才蔵に気づいた。
「逃げるぞ!」
女は強い力で才蔵の腕をひっぱった。
才蔵はその手を振り払い、駆け出した。

「追え!」
お江が指図をし、数名の手下が才蔵たちを追ってきた。
「わしはその天草四郎どのに会うためにここに来たのだぞ!わしは、逃げる理由などないのだ!」
そう才蔵は叫んだが、女はただ黙って走るだけだった。洞窟を抜けたがそこは断崖絶壁であった。後ろには追手がすぐそこまできていた。
「泳げるか?」
「多少は」
「飛び込むぞ!」
「ええ?」
拒絶をする暇もなく、女は才蔵の背中を押した。
「うわー」
才蔵の叫びとともに二人は海に落ちていった。

「逃がしてしまった」追手たちは悔しげに戻っていったが、一人の男は少しの間海を見つめていた。
妄想キャスト
隠岐殿 多岐川裕美y
お江  若村麻由美
女   水野美紀

※イラスト のハハ 

※続・風神の門第14回、時空忍者サキ第11回とシンクロしています。
なんちゃって・続 風神の門 第15回〜激闘!島原の乱〜

才蔵は海に落ちるなり気を失った。才蔵が気がついたときには、そこは嵐の真っ只中の海だった。
「助けてくれ!」
そう叫んでもあたりは真っ暗な海。自分を突き落とした女の姿も近くにはいない。
「ちきしょう、こんな所で死んでたまるか!」
泳ごうと腕で水をかくが、それは徒労でしかなかった。流木を見つけ、しがみつき抱えるようにしていた才蔵ではあったが、もう体力も限界を通り越していた。才蔵の意識は遠のいていった。

小1時間、嵐にもまれ漂っていた才蔵の姿を見つけていたのは、一隻の舟だった。

「ああ、あそこに人が!」
舟には武士が数人乗っていた。島原の乱鎮圧のためにやってきた武士たちであった。
「そんな土左衛門など、ほおっておけ!」
「いや、ひょっとしたら、息があるかもしれません!今、腕がかすかに動いた気がします。舟を近づけてくだされ!」
「死んでる。生きていたとしても、どうせ、一揆に加担した農民であろう。ほおっておけ!」
「いや、私はたとえ、農民であっても、人の命を見過ごすことはできません!」
一人の若い侍が上役に直訴していた。しつこく熱い訴えにも上役は耳を貸す様子はなかった。
「わかりました。舟を近づけてくださらないというなら」
若い武士は立ち上がり、ざぶんと海に飛び込んだ。
才蔵に近づくと、口に顔を近づけた。
「息がある!ありますぞ!私は、この者を助けますぞ!」
武士はそういい、才蔵を舟まで連れてきた。
「一揆のことが聞けるかもしれません。捕虜にすればよいこと」
上役の返事も聞かず、武士は才蔵を蘇生するために、水を吐かせたり、さすったりしている。

「月之介・・お前という奴は・・」

その懸命な作業に、舟に乗っていた者たちは、何も反論はすることはできず、ただ唖然として見守るしかなかった。
なんちゃって・続 風神の門 第16回〜激闘!島原の乱〜

才蔵が意識を取り戻したのは、舟が陸地に着いた時であった。
「ふぅ〜助かった」才蔵は大声をあげたが、自分の手に縄がかけられてるのを見て驚いた。
「こ、これは、なんのまねでござるか?」
武士たちはみな、そ知らぬ顔であった。一人の武士だけが、少し悲しげに微笑んでいた。

才蔵に向かって上役らしい武士が叫んだ。
「そなた、一揆に加担している農民であろう。あの嵐の夜に海に出ているなどとてもあやしい。何を企んでおる?正直に白状せい!」
「わしは何も知らぬ!島原に来たばかりなのだ!」
「いや、その顔は何か企んでいる顔だ!」
「なにぃ〜、お主、顔で、人の考えがわかるのか?お主の顔は、犬に踏まれたような顔をしているくせに!」
数人の武士が声をあげて笑った。
「なにぃ〜、言わせておけば!即刻牢屋に放り込んでおけ!」

才蔵は牢屋に入れられてしまった。
見張りが離しているのが捕まっている才蔵の耳にも入ってきた
一揆軍は原城に集結している。とのことだった。

さて、忍びである才蔵のこと。脱獄などは造作もなかった。
腹が痛いと嘘を言い、いぶかしがった見張りが近づいてきた瞬間、腰にぶらさげている鍵を奪い、これまた、一瞬のうちに鍵を開け、見張りに一発くらわし、逃げ出した。

才蔵は原城に向い、街道を走った。
と、曲がり角で、これまた走ってくる武士とぶつかってしまった。
「すまぬ、先を急いでいたもので」
相手も素直に謝った。
「拙者隻眼ゆえ、そなたが死角に入ってしもうた。怪我はござらぬか?」
しかし、才蔵は倒れたまま動けなかった。
「おい、大丈夫か?」相手は才蔵の肩を抱いて起こした。
才蔵は眩暈がした。なぜこんなにふらつくのか自分でもよくわからなかった。
「ああ、大丈夫だ」と答えたものの、力が入らない。

才蔵の腹がぐぅーと鳴った。

ふふっと隻眼の侍の口元が緩んだ。

二人は茶店の先で休んでいた。
「馳走になった。かたじけない。礼を申す」
「いいや、これぐらいのこと」
二人は腹が満ちたこともあり、なごやかに笑みをうかべた。

その時だった。二人の前に影が射した。
「柳生十兵衛、勝負だ!」
刀の柄に手をかけ、身構えた男が現われた。
「待て、どうしてだ?そなたを斬るつもりはない!」
「お願いでござる。刀を抜いてくだされ、拙者と勝負してくだされ・・」
才蔵は、はっとして刀に手をかけた。
しかし、その才蔵の手を男の手がおさえた。
「加勢無用」
十兵衛は刀を抜いた。双方、どちらの瞳も悲しみに満ちていた。
その張り詰めた空気に加勢するどころか、才蔵は固まったまま動けないでいた。
勝負は一瞬でついた。
十兵衛は、相手が剣を振り下ろす前に、真一文字にその腹を斬っていた。
「また・・斬りたくもないのに、人を斬ってしまった」
十兵衛は膝をついた。
「大ニ郎、手厚く葬ってやってくれ」
配下の者であろうか、遺体をかついで去っていった。

「お騒がせした。では、ごめん」
十兵衛は才蔵に背を向け去っていった。

「柳生・・十兵衛・・」
その見事な剣裁きに才蔵は魅入ってしまった。
なんちゃって・続 風神の門 第17回〜激闘!島原の乱〜

「待って下さい、十兵衛殿!」
才蔵は十兵衛の後を追った。
「もう少し、話を聞かせてはもらえぬか?」
十兵衛は、話をしたくはない、と、拒んではいた。しかし、才蔵の不思議な話と、この島原で何が起きているのかを知りたい。と、切望する才蔵に負けた。先刻、斬った者のこともよほどこたえていたのだろう、十兵衛は重い口を開いた。

「拙者は、『一揆の首謀者を斬れ』と、父から命をうけているのでござる。多くの血を流さぬために、乱を鎮めるためにと、走り回っている。しかし、心を通わせた者を斬らねばならぬこの運命」
十兵衛は自分の手をみつめた。
「民を守りたい、人を救いたいと思っているのに、この手は、人を斬っているのでござる・・・」

才蔵は、お富久や田吾作のことを思った。彼らもまた一揆には反対していた。
才蔵は心に決めた。
「わしもどれくらいできるかわからぬが、みなが血を流さぬよう、何か手伝えることがあれば言ってくだされ!」

二人の背後から声が聞こえた。
「才蔵さま、ずいぶんと探しておりましたのよ!こんなところで、呑気に話などなさって!」
お富久は、嬉しさと悔しさをにじませた涙をこぼした。
「お富久、太郎兵衛殿と話をさせてくれ!十兵衛殿も一緒に来てくれ!」

才蔵は太郎兵衛を説き伏せた。逡巡して一揆に参加しているのを迷っている村があるならば、どうか、加わらないようにと呼びかけてくれと。
「才蔵さん・・そんな・・私は一気に参加してくれと言って回ったのです。四郎さまのためにも、戦わなければならないのです」
「あの天草四郎というやつは、アヤシイのだ!死人を呼び寄せているんだぞ!」
「そ、そんなはずはない!」
「そなたならできるはず!太郎兵衛殿、頼む!」
才蔵は頭を畳にこすりつけた。
「父上さま、お願いします」
お富久も頭を下げた。
「できぬ」
太郎兵衛もがんとして首をたてには振らない。

「そこまで言うなら、力づくでも」
才蔵は刀を抜き太郎兵衛の咽元に突きつけた。
「さ、才蔵様、おやめください。太郎兵衛は、私の父でございます」
部屋には張り詰めた空気広がった。

と、田吾作も駆け込んできた
「お富久さん、大変だ!おお、才蔵さんもいる。よかった。探したんですよ!」
しかし、才蔵が太郎兵衛に刀を突きつけるのを見てぎょっとした。
「な、何をばかなことしてるんですか!原のお城が大変です。みな、城に立て篭もろうとしてるんです!このままじゃ、みんな死んじまう!」
田吾作が絶叫し、才蔵にぶつかって刀をもぎ取った。

「わかった。才蔵どの、一揆をやめろと説得できるのは一つの村か二つの村かもしれん。でも、なんとかやってみよう。お富久、田吾作、一緒に説得に回ろう」
「はい」
お富久と田吾作の二人は、うれしそうに、だが、力強く返事をした。
「そういうことなら、微力ながら、私もお手伝いさせていただこう」」
十兵衛も立ち上がった。
「天草四郎を崇拝しているのなら、その天草四郎が一揆をやめろといえば、一揆を食い止めることができるはずだ!」
才蔵が叫んだ。
「そうだ。私は四郎を説得するつもりでいたのだ。しかし、そんなに怪しい術を使うとなると・・やはり・・」
十兵衛は言いよどんだ。
才蔵は十兵衛の目を見て強くうなづいた。

「才蔵さま・・これを」
お富久が差し出したのは小さなクルスだった
「これを・・神のご加護がありますように」
「お富久どの、かたじけない」
才蔵はクルスを首から下げた。そして、着物の袂に隠すように忍ばせた。
二人は城に向かって走った。
なんちゃって・続 風神の門 第18回〜激闘!島原の乱〜

原城では、決起した農民とそれを鎮圧しようとする幕府軍の、最後の戦いの火蓋が斬って落とされた。
「くっ、遅かったか・・」
才蔵は唇を噛んだ!
「やめろ〜、戦いをやめろ〜」
「天草四郎、どこにいる!教えてくれ!」
二人がどんなに叫んだとしても、誰も聞く者はいない。

「四郎様は大事なお方だ!お前のような奴に斬らせはしない!」
農民が斬りかかってきた。
「やめろ!我々は、そなたたちの敵ではないのだ!」
「うるさい!刀を持っているではないか!幕府の手先め!」
「違う!」
才蔵はよろけながら、農民の攻撃を避ける。
「こ、これを見てくれ」
才蔵は懐から取り出してクルスをかざした。
「おお!」
農民たちは頭を下げ、才蔵から離れた。

才蔵はクルスをぶらぶらさせながら突進する。
「あ、お前は脱獄したやつだな!。やはり、一揆を企てていたのだな!キリシタンめ!邪教め!くたばれ!」
武士たちも斬りかかってきた。
「邪教?邪とは何だ?」
才蔵は武士の刀を受け止め、胴を足で蹴飛ばした。

二人は、防戦一方であった。
爆薬が破裂した音が聞こえ、あちこちで火の手があがった。
(くっそう、このままでは埒があかん!どこだ?どこだ?天草四郎!)
一足先に十兵衛が駆け出した。才蔵は甘い香りを嗅いだ。才蔵は思わず立ち止まった。

「才蔵、久しぶりですね」
「隠岐殿!」
「城とともに朽ち果てたとおもったが、何故かは知らぬがこのように戦える。キリシタンとして戦えるなら本望じゃ」
「隠岐殿!やめてくれ!」
「才蔵、ほほぅ、そなたわらわを止めようというのじゃな。なら、こちらから参る!」
隠岐殿の長い槍が才蔵のわき腹をかすめる。才蔵はよけるも刃先がかちりとあたり鎖が切れた。
「あっ」
才蔵がクルスに気を取られた瞬間、隠岐殿の刃が才蔵の腕を切り裂いた。
才蔵は刀を取り落とす。
「才蔵、覚悟!」
才蔵は胸を貫かれた。と、思った。
しかし、隠岐殿は口から血を流し前のめりに倒れた。
十兵衛の剣が隠岐殿を斬ったのだった。

「危なかったでござるな」
「ああ」
倒れた隠岐殿の体が、ふっ、と消えた。
「き、消えた!」

と思ったのもつかのま、駆け出す才蔵の前にまたしても隠岐殿が現われた。
「ど、どういうことだ?」
辺りを見回してみると、一旦倒れて消え、そして、また現われる者たちがいた。
「やはり妖術でござるな、四郎を探さないと」
十兵衛の言葉に才蔵は大きくうなづいた。
なんちゃって・続・風神の門 第19回〜激闘!島原の乱〜

ようやく、火の手の向こうに天草四郎の姿がちらりと見えた
「いた!あそこだ!」
「よし、才蔵殿、行こう!」
草四郎を追って、十兵衛と才蔵は城の中を探し回った。
「よし、二手に別れよう!」
しばらく後、才蔵は隠し扉をあけて、その中に入っていく四郎の姿を見つけた
「くそ、今度こそは逃さん!」
才蔵も一足後れて、隠し扉に入りこんだ。

(あ!ここはあの洞窟だ!)
隠岐殿がよみがえっていたあの洞窟だった。

「四郎!この戦いをやめるんだ!今からでも遅くはない」
「もう、遅い。もうどうすることもできない」
四郎は冷たく笑った。
「そんなことより、死者を蘇らす貴様のその妖しげな術はなんなのだ?どうせ、妖術でもって、みなをたぶらかしたのであろう」
「さあ、海をみつめて、この世に思いを残しているものはおるのか?と考えていたら出てきただけのことだ。私は何も知らぬ」
四郎はうそぶく。
「なにぃーー」
「そんなことより、才蔵。そなたも、私に力を貸してくれ!私と一緒に戦おう」
四郎は笑みさえうかべ、手を差し出した。

「南無三!話していても埒があかぬな・・この上はそなたを斬る。そなたを斬ることが、この乱を終らせる道・・・」
才蔵は四郎を斬った。四郎は霞むように消えた。しかし、また不意に現われた。

「私を斬ったとて、この戦は治まらぬ。人の心が戦いを求める限り、安らかなものは得られぬのだ」
「四郎・・・お主、もうすでに死んだ身なのか?じゃあ、一体誰が、この変な妖術を使っているんだ?」
才蔵は辺りを見回した。

「ふふふ・・」

「お、お前はお江!」
才蔵が叫び声をあげた。
「お、思い出した!お主の妖術だな」
「いいえ、この人の妖術ですよ。ただ、私はそれを利用させてもらっただけのこと。でも、このお方は死んでしまったのですよ。でも、私もここで、祈ってたんですよ。そうしたら、また、ここから出てきただけのこと」

「なにぃーーー、意味がわからんーーーー」

ふと気づくと、才蔵たちは周りを囲まれていた。
才蔵は、やみくもに刀を振り回すが、倒れても消え、消えたと思えば、また復活する死者の群れにどうしようもなかった。
「くっ、どうすればいいんだ?」
「あはははは、愉快、愉快!」
(そ、そうだった。お江、あいつは、血が流れれば流れるほど、あいつは喜ぶのだった)

「くらえ、才蔵!」
「ま、まさか?佐助?やめろ!」
佐助の刃が才蔵の足を斬った。
「覚悟しなされ」
「ゆ、幸村?」
幸村の上段に構えた刀が才蔵に向かって振って降ろされた。
(だめだ、殺られる!)
なんちゃって・続 風神の門 第20回〜激闘!島原の乱〜

がちり。
その刀を受け止めた者がいた。才蔵は難を逃れた。
「・・・才蔵」
「お、お前は・・・・・・獅子王院!」
才蔵は驚いた。
「お前も・・お前も黄泉の国から戻ってきたと言うのか?」

「馬鹿な。俺は生きている。俺はあの時、貴様の後をつけていた。気がついたら、ここに来ていた。それだけのことだ」
(そういえば、後をつけられている気配がしていたが、それは一人ではなく二人だった。一人はちゃぼだったが。ちゃぼ・・。あいつ、今ごろどうしているのだろうか?)
「それより、お主、助けてくれたのだな。礼を言うぞ。」
「勘違いしてくれては困るな、才蔵」
「なに?」
「才蔵、そなたの命を他には渡さん。お前を殺るのは俺だ。俺の獲物は俺の手で。ということだ。構えろ才蔵!」
「なにぃーーー」
才蔵は四方を囲まれ、その輪がだんだん狭くなっていく。
「う、うわーーー」
才蔵は、その輪を飛び出して、駆け出した。
獅子王院も才蔵の後を追う。

城内に戻ると、あちこちで火の手があがり、火と煙の勢いも増していた。

「刀を抜け、才蔵」
「いや、獅子王院、お主とは戦うつもりはない。いや、誰とも戦いたくはないのだ。このまま戦っても、待っているのは死だけだ。そこには何もない」
「戦いたくないだと。貴様は俺と戦う運命なのだ。『俺とお前が出会ったこと』それが戦う理由のすべてだ。何か大きな力がお前と俺を戦わせようとしているのだ。抜け!俺と戦え!」

獅子王院は刀を振り上げて才蔵に向かってきた。
やもうえず、才蔵は刀を抜いてうけとめた。
獅子王院は力まかせに刀を押し付けてくる。
二人は刃を交えて睨みあった。

「なら、問う。獅子王院。お主は何のために戦う?お主の戦いは、侍になりたいという自分の野心のためだけであろう。それがお前の正義だとしても、この戦いのどこに正義があるのだ?」
「正義だと?どこまでも格好をつけるやつだな」
才蔵の刀が獅子の体を跳ね飛ばし、二人は数歩離れた。

「勝てばそれが正義だ」
「違う!断じて違う!」
「ふっ、正義などくそくらえだ。正義と悪は表裏一体!野心が悪というのなら、悪にまみれても俺はかまわぬ」
のハハさん、腕とか刀とかも描いてみたかったのですが、挫折しました。
顔も難しいけど、手もほんと難しいね〜。
※続・風神の門第19回は、時空忍者サキ第14回とシンクロしています。
なんちゃって・続 風神の門 第21回〜激闘!島原の乱〜

獅子王院の向かって来る刃を才蔵は押さえつけた。
何度も何度もかわす。決して自分からは攻撃しない。
のらりくらりとかわすが、決して隙をあたえない。
「才蔵、その太刀捌き、どこで覚えた?」
「どこでもいいだろう」

その時、二人の視界に子供が現われた。
「お兄ちゃん」
「おみよ?」
「獅子王院?そなたの妹か?」
「なぜ、こんなところに。おみよは死んだはずだ」
よたよたと歩く幼子。しかしその背後に近づく者がいた。

「危ない!」
隠岐殿の槍がおみよを貫いた。
おみよは、ばたりと倒れた。
「おみよーーーー!」
獅子王院は絶叫した。
しかし、おみよは、一度消え、そして、また姿を現した。そして、何事もなかったように立ち上がった。
「お兄ちゃん」
血だらけでよたよたと歩いてくる。
「見ろ、獅子王院、そなたの妹は、妹にあらず!もう人ではないのだ!」
「うるさい!才蔵!!」
獅子王院はおみよをしっかりと抱きしめた。

おみよを抱きしめる獅子王院に数人の刃が振り下ろされた。
だが、今度はその刃を才蔵がはねのけた。

「わしは、風雲に乗じて天下に踊り出て」
がちり。才蔵が刀を叩き落とす。

「何かどでかいものをつかみたい。そう思っていた」
がちり。獅子王院をかばい、才蔵は刀をはじきとばす。

「これからもそうだ!獅子王院お主もそうであろう。この手に何か掴むまで、それをずっと探し求め続けていくのだ」
才蔵は、獅子王院の襟首を掴んだ。
「だからお主とは戦わん。誰とも戦わん。こんなところで、わしは、死ぬわけにはいかんのだ」
才蔵はすさまじい形相で獅子を睨んだが、獅子王院も同様な眼差しを向けた。
「生きて、生きて、生き抜くのだ!」
才蔵は叫び、また城内の奥で火の手があがった。

どかーん。
大きな地響きのような音がした。城内の庭先でとてつもなく大きな火柱があがったのだ。それは地面から空の彼方にまっすぐに伸びていた。

「な、なにーーーーーーーーーー?」
「一体、何なのだーー?」
「爆薬が破裂したか?」

火柱と思ったのはまばゆい光であった。それは上に向かってむかってのびていく。才蔵はその光の柱に向かって近づいていき、しばし呆けたように、その光の柱を見つめていた。
「ああ、隠岐殿!佐助!」
その光の渦に死者たちが吸い込まれていくのが見えた。

と、才蔵は背中をぐいと押された。
「う、うわー」
つんのめって光の中に入ってしまった。
「ちょ、ちょっと待て〜、わしは死んではおらぬぞ!」
その光の中で才蔵は、一人の女が自分に向かって微笑むのを見た。
「ああ、お、お前は、わしを崖から突き落とした女!一体、お前は何者だ、なにものだ?なにものだあああーーー?」

才蔵は光の中で、体が突っ立ったまま回転し、空へ空へと登っていくのを感じることしかできなかった。
なんちゃって・続 風神の門 第22回〜激闘!島原の乱〜

どすん。
才蔵は地面に落ちた。
「痛っ・・・・おい、獅子王院?」
そう問いかけてみても返事はなかった。
なぜだか様子が違う。辺りを見回してみても人影はない。どこにも戦の様相はなかった。

その時、遠くから走り寄って来る女がいた。
「さ、才蔵さまーーー」
「お、お富久どの!」
「・・・お富久?お富久とは、一体誰のことですか?」
「そ、そなたのことではないか!」
「な、何を言ってるんですか?」

「ま、まさか、お、お国か?」
「まさかも、なにも、お国です」
「お国ーーーーー」
才蔵は思わず、お国を抱きしめようとしたが、跳ね飛ばされた。

「知らない。才蔵さまなど、知らない!不意にいなくなったと思ったら・・そう・・そうなんですね。女がいたんですね?お富久っていう女のところに行ってたんですね」

「ああ、お富久という女がいたが・・」
才蔵は、考え込んだ。
「ひどい!」
「違う、違うんだ!」
「何が違うんですか?もう知らない!」
「お国・・何はともあれ、わしは戻ってきた。戻ってきたんだ」
「才蔵・・さま・・」
二人は、しっかりと抱きしめあった。
「さあ、屋敷に戻ろうか」

立ち上がった才蔵の懐から小さなクルスがこぼれ落ちた。
二人の様子を獅子王院が木陰から見ていたが、ほどなく獅子王院の姿も木立の奥に消えていった。


誰にも気づかれずに地面に落ちた小さなクルス。
それは、地面に溶けるかのように形を失い、砂と同化した。
一陣の風が宙に舞い上げ、それは不意に消えた。



おわり。。。
主な妄想キャスト


霧隠才蔵      三浦浩一y
お国・お富久    小野みゆきy 
獅子王院      磯部勉y
青子        樋口可南子y
八重        小川眞由美
俊岳        佐藤慶y
桔梗        鈴木京香 森口瑤子
田吾作       不破万作
太郎兵衛      平泉成
ちゃぼ       宮田明
隠岐殿       多岐川裕美y
真田幸村      竹脇無我
猿飛佐助      渡辺篤史y
葵月之介      草刈正雄y
天草四郎      早乙女太一
お江        若村麻由美
謎の女(サキ)   水野美紀

 
柳生十兵衛     村上弘明


原作 風神の門 柳生十兵衛七番勝負 真田太平記 日本巌窟王 少年ドラマシリーズなど多数

コラボレーション作品 時空忍者サキ 忍びの蘭 



なんちゃって・続・風神の門
           
           

           完

ログインすると、残り17件のコメントが見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

パロディー部屋(時代劇など) 更新情報

パロディー部屋(時代劇など)のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング