芸術の日本　美術・評論を中心にコミュの千葉―美術―散歩／千葉市美術館

写真①左上

開館30周年を記念して、千葉という「場」をテーマとする展覧会

展示作品から印象に残った作品

(作品は一部を除いて撮影禁止のため、web画像を借用しました)

【参考】

写真①右上

ビゴー　「魚釣り遊び」1887

写真①右下

ジョルジュ・ビゴー(仏1860―1927)

ビゴーは、エミール・ゾラの小説「ナナ」(1881年)の挿絵を描くなど本国ではある程度有名だった。

日本への憧れが強く1882年に来日、絵画のお抱え外国人、中江兆民のフランス語塾の教師などで職を得たあと諷刺画家として日本の時事問題などを発信、カメラマンとして日清戦争(1894―95)にも従軍した。

1893年に千葉市の稲毛にアトリエを構える。1899年フランスに帰国。

写真①左下

ジョルジュ・ビゴー　「稲毛海岸」1903年

写真②右上

濱田清治「小憩(下図)」1939年頃

戦没画学生慰霊美術館無言館蔵

濱田清治(1914―1941) は、千葉市生まれ、東京美術学校を首席で卒業し、将来を嘱望されていたが太平洋戦争に出兵しマレー半島で戦死。

小憩の下図からも、確かな技量が感じれる。実物をみると3人の女性の着物とスチール椅子の光沢がみごと。生きていれば、菊池契月のような美人画も描いていたかもしれない。

写真②右中

従軍した仏領インドシナの風景のスケッチ(複製)

画像はありませんが、東京芸術大学所蔵の「枯紫陽花」は不思議な魅力のある作品です。若冲の「蓮図」を思わせる枯草の画ですが、季節を巡る不滅の生命力を感じる。

調べたら、戦前の展覧会で東山魁夷が第2席、濱田清治が第1席を取った事があったようです。

写真②右中

田岡春径　「秋晴」　1943年

手前は琳派風の草花、白いススキ、崖にはう松林が強風でなびいている。こんもりとした松林の青が鮮やか。南画のようで、そうとも言えない爽快さがある。

田岡春径(1887―1969)は、徳島生まれで、東京で青年時代を過ごし、近代南画の重鎮、小室翠雲に入門し南画風風景画を描いた。千葉生まれで橋本雅邦門下の石井林響を慕って、戦前に千葉の大網白里に移住、戦後は千葉市の稲毛に暮らした。

【参考】

写真②下中

石井林響　「童女の姿となりて」1906年(明治39)

写真②左上

田中一村　「仁戸名蒼天」1960年頃紙本着色1面

田中一村(1908―77)は、栃木市に生まれ、東京で育つ。東京美術学校を中退した後、1938年から千葉市に住み活動、1958年から奄美に移住する。「仁戸名蒼天」は、千葉市に戻った時に近所を描いた作品。岩絵具で描いたとは思えない深い濃淡の樹木と広い、広い蒼天が抜けている。

「仁戸名蒼天」の樹木の葉一枚一枚が「アダンの海辺」(1969年)の海岸の小石砂の一粒一粒と呼応しているようだ。

【参考】

写真②左下

田中一村　「アダンの海辺」1969年

常設展では、石井林響「伏姫」、須田悦弘作品が見られました

写真③左上

石井林響　「伏姫」1904年(明治37)

伏姫(ふせひめ)は『南総里見八犬伝』里見伏姫

《特集　須田悦弘》

写真③右上

展示室に黒いボックスがポツリ

靴を脱いで、このボックスに入ります

写真③右中

真っ暗な空間の奥の中央に須田悦弘の花があり、左右の鏡面に花が写っている

写真③右中

近づくと…

写真③下中

須田悦弘　「芙蓉」　ミクストメディア　2012年　作家蔵(寄託)

写真③左下

知られざる作家をまた発見しました

印象深かったのは、27歳で戦死した濱田清治です。

彼の作品をもっと見てみたいです。

★★★★★

田中一村の「仁戸名蒼天」は傑作