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意味不明小説(ショートショート)コミュのインソムニア 第六幕

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◯山手線列車内
山手線の駅の看板が、ルーレットのように、めまぐるしく視界を通り過ぎてゆく。

アナウンス「次わあ、高田馬場ァ、高田馬場ァ…」

アナウンス「次わあ、目白ォ、目白ォ…」

両側の座席に対面して座っているAとエイリアン9。
駅に着いた列車が扉をひらき、女がするりとふたりの間に割って入る。

女「わたしは生まれて28年、いちども眠ったことのない女。夜の暗闇は知れども、未だ己の裡の漆黒を知らず、」

列車、静かに動き出す。

アナウンス「次わあ、代々木ィ、代々木ィ…」

女「私を知る人間は私のことを『インソムニア』と呼ぶの」

うとうとと眠りに入ろうとするAとエイリアン9。
蕩けた視線をかろうじてインソムニアの方へと向けている。

インソムニア「眠っているときって、どんな気分がするものなのか、想像しながら長い夜を過ごす」

アナウンス「次わあ、渋谷ァ、渋谷ァ…だったっけ?」

インソムニア「私は魚が好き。魚はけして瞼を閉じることがないもの」

アナウンス「あれ?あれ?…次わあ、秋葉原ァ…ってどこだっけ?」

インソムニア「夜になればみんな私を置き去りにしてどこかへ行ってしまう」

アナウンス「えと、えと、次わあ、品川の3駅前ェ?」

インソムニア「眠ることが繰り返される死と再生というなら、私は恐ろしい。日ごと更新されていく人間達からみれば、私は28年と2ヶ月と14日前に捨てられた記憶の残滓のようなものなのかも知れず、これから先も、私に眠りが訪れないとするなら、わたしはどんどん過去を遡行して、やがて時間の彼方に置き去りにされてしまうのではないでしょうか?」

虚ろな目をしていた車内の乗客達、一斉に立ち上がって踊りだす。


『肉体の中の古生代』

天体時代 原始の海洋 浸食 堆積
三十億年 生命誕生 地質時代
カンブリア オルドビス シルル デボン
ストロス トライト バクテリア コレニア 三畳 ジュラ紀 白亜紀

ヒカゲノカズラ イワヒバ プレウロメイア
カイトニア ベンネチテス アンモナイト
ウミノバラ ウミノユリ ウミリンゴ ウミツボミ
ウミテンシ ウミカガミ ウミトビラ ウミカゲロウ
石炭 二畳紀 古生代

ウミノアナタ
ウミノワタシ
肉体の中の古生代
生き続ける
死に続ける
語りかける古生代

クジラのように
イルカのように
アザラシのように
海の底へウミワタシ
海の底の大歴史
ぼくがぼくする海の底

アンモナイト!

(詞:J.A.Seazer 作曲:J.A.Seazer)

静寂。

乗客達、何事も無かったかのように再びシートに腰をおろし、無気力に電車に揺られる。

アナウンス「次わあ、次ぎわあ!もうわかんねえよ、俺ァ知らねえよもう、ぐるぐるぐるぐる毎日毎日おんなじこと繰り返してんじゃねえよ、山手線はぐるぐる回り、人はぐうぐう眠るが、もういいじゃねえか!そろそろすっぱりいきてえもんだ!こんな有様になったのは全部あいつのせいだ!」

窓の外で踏切が降りようとしている。次第にボリュームを増す警戒音。

かんかんかんかんかんかんかんかんかん

アナウンス「地球よとまれ!」

かんかんかんかんかんかんかんかんかん

インソムニア「眠らないで。私を置いていかないで」

かんかんかんかんかんかんかんかんかん

インソムニアがふと気づくと、先ほどまでシートに座っていたはずのAとエイリアン9の姿が無い。

窓の外に目線をやると、通過した駅のベンチで眠りこけているAとエイリアン9の姿。

アナウンス「くそ、また明日も明後日も同じことの繰り返しだ!いつまで同じことさせる気なんだ!」

寂しそうな目で窓の外のふたりをながめるインソムニアを乗せたまま、山手線が走り去る。

コメント(4)

大友克洋のアニメにメーテルが迷い込んだようなめまいを覚えます
パパレモンさん

コメントありがとうございます。
オトナの女性のかけなさに自分でびっくりの回…

とりあえず踊っておきたいと思います。
ほにいさん

あけましておめでとうございます。
レッツ万有引力!

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