タヒチ語のアルファベット タヒチ語の表記に用いられるアルファベットは13文字と「'('eta)」エタです。 そのうち、母音が日本語と同じで5文字 A, E, I, O, U 子音は8文字 F, H, M, N, P, R, T, V それから、母音の前にある「'('eta)」も子音ですが、辞書などの配列ではノーカウントになっています。この子音は、いったん声門を閉じて、急に開くようにして次の母音を発音します。日本語にはない発音ですが、概念的には「ッ(促音便)」に近いものです。 タヒチ語に無い英文字は B, D, G, K, S, Z, L, W ですが、外来語などの場合は、そのまま変化しないで使われる場合と、下記の法則に基いて置き換わる場合があります。 B→P D, G, K, S, Z→T L→R W→UA, V ですが、タヒチ以外の南の島国では「K」はよく使われます。 例えば、ハワイ語の定冠詞「Ke」は、タヒチ語の定冠詞「Te」と同じもの。 ハワイ語の「Kupuna(祖先、年配者)」は、タヒチ語では「Tupuna(祖先、年配者)」となる。同じく「kane(男)」は「tane(男)」になるなどです。 クック諸島マオリ語のK、Gは、タヒチ語ではエタ「'」に置き換わる場合があります。 例えば、マオリ語の「koe(あなた)」は、タヒチ語では「'oe(あなた)」。 「hogi(キッス)」は、タヒチ語では「ho'i(キッス)」 その他「kiau」が「'ia'u」(私を)、「kino」が「'ino」(悪い)、「vaka」が「va'a」(カヌー)などです。 従って、タヒチ語の歌詞と思っていても、KやGが出てくるようなら、他の地域の言語かもしれないと言うことで、「K」や「G」が出てきたら、「T」や「'」に置き換えればタヒチ語の辞書でヒットする場合もあります。またマオリ語によく出てくる「ng」は、鼻濁音の「g」に近いものですが、「ng」を無くしたり、「'」に置き換えるとタヒチ語になる場合があります。 例えば「tangata(人)」が「ta'ata(人)」、「ngaro(失う)」が「'aro(失う)」などです。
例 「Fa'aheihia 'oe i te purotu o te hura」(あなたは、ダンスの素晴らしさに対して冠をかぶせられた) 動詞(V)「Fa'aheihia」(冠をかぶせられた) 主語(S)「'oe」(あなた) 「'i 」オブジェクト・マーカー(〜に対して) 目的語(O)「te purotu o te hura」(ダンスのすばらしさ) 「purotu」(すばらしさ) 「o」前置詞「〜の(of)」 「te」冠詞(the) 「hura」名詞(ダンス) *「'i te」目的語が「人」でないので、「'i te」ですが、「i te」(iに' 無し)なら「〜を」、「'i te」( ' あり)なら「~に対して」と使い分ける(言い分ける)という説もあります。 ここで、動詞「Fa'aheihia」については、注意すべき点があります。それはこの動詞の末尾に「hia」が付いていることです。この「hia」は「動詞受動態接尾辞」などと言って、「その動詞を受動態にする」という役目を担っています。 「Fa'ahei」は「冠をかぶらせる」という意味ですが、末尾に「hia」があるので、この動詞が受身になり「冠をかぶせられる」になります。 主語は、あくまでも'oe(あなた)なので、「Fa'aheihia 'oe」は、(あなたは冠をかぶせられる)になります。もし、hiaがなくて「(E)Fa'ahei 'oe」なら(あなたは冠をかぶせる)になります。
【ここまでのまとめ】 タヒチ語の基本構文は、下記のとおりです。 V+S+(i te)+O、目的語が「人(人称代名詞)」のときは、V+S+(ia)+O 例えば「Aroha vau 'ia 'oe」なら 愛する+私は+(オブジェクトマーカー=前置詞)+あなたを という語順ですが 英語なら「I love you」なので、S+V+O 日本語なら「私はあなたを愛する」なので、S+O+V になりますね。 タヒチ語の文は独自の特徴的な構造を持っています。 文の中心は動詞ですが、この前後に「アスペクト マーカー(Aspect marker)」が付き、これにより、その動詞が完了形、現在形、未来形、進行形、命令形、受動態、使役であることなどが判ります。これが文頭に置かれ、まず「何があったのか」が示されます。その次に、その動詞の動作主が示され、最後に、動詞が他動詞ならば直接補語つまり直接目的語が来おかれます。 例えば、動詞が他動詞の場合 'Ua 'amu vau i te i'a(私は、その魚を食べた)この文章では直接目的語「te i'a」(魚)は前置詞「 i 」とともに「i te i'a」という形で現れている点に注目してください。この「 i 」は、先述したとおり、直後に目的語があることを示す「オブジェクト・マーカー」で、訳語は(〜を)となります。 「'Ua」(続く動詞が完了形であることを示すアスペクト・マーカー)、「'am」(食べる)、「vau」私は、「te」(定冠詞、その)、「i'a」(魚) 「'amu」は他動詞なので、直接目的語は必須となり、それが「i te i'a」(その魚を)ということになります
【動詞が自動詞の場合】 'Ua hopu vau i te miti「私は、その海で泳いだ」。この文では、動詞「hopu」(泳ぐ)は自動詞なので、直接目的語は不要です。しかし、文章としては不可欠な、場所(どこで?)を補足説明する補語が、タヒチ語では間接目的語となり、直接目的語のときと同様にオブジェクトマーカーによって引導されます。 「'Ua」(続く動詞が完了形であることを示すアスペクト・マーカー)、「hopu」(泳ぐ)、vau(私は)、 同じく動詞が自動詞の場合 'Ua moe au i te fare「私はその家の中で眠った」 「'Ua」(続く動詞が完了形であることを示すアスペクト・マーカー) 「moe」(眠る) 「au」(私は) 「 i 」(オブジェクトマーカー)この場合は、続くのが間接目的語なので、訳語としては「〜で」または「〜の中で」となります。「te」(定冠詞、その)、「fare」(家) 「i te fare」(その家で、または、その家の中で) 以上の説明で、オブジェクトマーカー「 i 」については、ご理解頂けたことと思います。 辞書を引くと「 i 」の訳語として、(〜で、〜を、〜の中で)などの訳語がありますが、直接目的語なら(〜を)、間接目的語の場合は、日本語として成り立つ訳語をあてはめます。 「 i 」に対して、(〜に)と訳される場合は、目的語がふたつあるときです。 例えば 'Ua moe au i te fare i te po「私は、その夜にその家の中で眠った」 「'Ua moe i te fare」(私は、その家の中で眠った) 「i te po」(その夜に) 「 i 」オブジェクトマーカー「〜に」 「te po」その夜 間接目的語は、そのときの状態、状況をより詳しく説明する補語なので、いくつでも追加することができますが、翻訳するときには、より後ろから訳していきます。 「i te fare i te po」なら、より後ろの「その夜に」を先に「その家で」をあとに訳します。「その夜にその家で」ということです。 もし、最初の文章が'Ua moe au i te po i te fareなら、原則としては 「私は、その家の中でその夜に眠った」と翻訳されるのです。これは間接目的語が二つある例ですが、一方が直接目的語の場合は、それが先に置かれます。 例えば、下のような文章の場合です。 'Ua 'amu vau i te i'a i te fare(私は、その魚をその家で食べた) 'Ua(動詞完了マーカー) 'amu食べる vau私は i〜を(オブジェクトマーカー) teその(冠詞) i'a魚 i〜の中で teその(冠詞) fare家 自動詞とは、他のものに影響を与えない自分の動作・行為のことです。 「泳ぐ」「眠る」「目覚める」「立つ」など、相手が無くても成り立つので自動詞です。 他動詞とは、自分の動作・行為が他のものに影響を与える場合の動詞のことです。 「殴る」「食べる」「愛する」「与える」などで、この場合は、その動作・行為の相手・対象を示すことが必須となり、それが「直接目的語」となります。 自動詞は、自分だけのことなので、相手を示すことはできません。目的語があるとすれば、それは補足説明になるので、それを「間接目的語」と呼びます。 直接目的語であっても、間接目的語であっても目的語(オブジェクト)であることは違いないので、その前にはオブジェクトマーカー「 i 」が置かれるということです。 オブジェクトが人の場合は、オブジェクトマーカーが「 i 」ではなく「ia」になります。 例えば 'Ua here au ia 'oe(私はあなたを愛しています) 「here」は(愛する)という他動詞なので、直接目的語が必須です。 その相手は「'oe」(あなた)になります。「あなた」は、人間なので、オブジェクトマーカーは「 i 」でなく「ia」になるということです。 またオブジェクトが物であれば、その直前には「名詞マーカー」になる冠詞「te」が付くので、見かけ上は「i te ○○○」になります。