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半蔵門かきもの倶楽部コミュの第九十四回 ガラス窓作 「石垣の上の猫」 (三題噺『新年度』『猫』『坂道』)

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新年度の1日目は、始業式とホームルームだけだったので、お昼前に帰ってきた。
春休みの間、家から殆ど出なかった後の、イレギュラーな午前帰りだというのに、坂道を登りきったところにある家の、石垣の上で、いつも通り、猫はちょこんと座って待っていた。

私と目が合うと、猫は立ち上がって、無言のまま、私と速度を合わせて石垣の上を歩き出す。
その隣の家の塀は、手前の石垣より70cmくらい高くなっているのだけれど、猫はひらりと飛び移って、同じ速度のまま歩き続ける。
いくつかの塀や石垣に飛び移って、私の家の横に差し掛かると、猫はスルリと生垣を抜けて、私が門を開けるより先に内側で私を待ち構えている。
私が中に入って門を閉めると、ぴょんぴょんと跳ねるように庭に入って、じっとこちらを見てから、おもむろにコロンとひっくり返って、お腹を見せてくねくねと動く。
お腹を触ってほしいのかと手を伸ばすと、ハッと飛び起きて、掌に額をぐいぐいと押し付けてくる。
猫の額というと、狭い様の例えに使うけれど、この猫は顔の半分が額だ。
他の動物と比べて、むしろ額の広い生き物な気がするのだけれど、額の狭い猫というのもいるのだろうか?
額を撫でている反対側の左手で、猫の顎の辺りを掻いてやると、猫のゴロゴロいう音が一層大きくなり、左を下にこてっと横倒しになる。
と同時に、ザラザラの舌で、私の右手を舐め始める。
「そろそろ行かないと」と言うと、猫は大人しく起き上がる。
きちんと前足を綺麗に揃えて座って、じっとこちらを見つめている猫に、「ごめんね。また明日ね」と告げて、玄関の扉を閉めた。
洗面所で手を洗ってから、リビングの窓から庭を見ると、もう猫の姿は消えている。

猫がどこの猫なのか、私は知らない。
首輪をしていないので、野良猫だと思うのだけれど、毛艶も良く、痩せてはいない。
どこかの家でご飯を貰っているのだと思う。
あるいは、外に自由に出入りさせている飼い猫なのかもしれない。

半年ちょっと前くらいに、坂の上の家の石垣の上に猫が座っているのを見て、声をかけたら、にゃあと言って付いてきた。
その日以来、猫が鳴くのを聞いたことがない。
ご飯が欲しいのかと思って、家に着いた後に台所を探したけれど、猫が食べそうな物は見つからなかったので、また庭に戻ったら、もう姿は無かった。
それ以来、私が出掛けて帰る時には、雨の日や、あまり遅くならない限りは、大概石垣の上にいて、送ってくれるようになった。
朝もたまに途中から合流して、定位置の石垣まで付いてきて、見えなくなるまで見送ってくれることがある。
餌をあげることもなく、寝床もないのに、どうして毎日送ってくれるのか分からない。
私以外の人でも、猫に送られて帰る人がいるのだろうか?
どこで餌を貰って、どこで寝ているのだろう?

明日も雨が降らなければいいな。

コメント(2)

猫についての描写が正確で、猫を知っている人が読むと思わず頬が緩みます。自分の家の飼い猫でもない猫がこんなにも、なつくのが、本当だとしたら殆んど奇跡です。よほど好かれるなにかがあるのでしょう。うらやましいです。
>>[1]
コメントありがとうございます顔(笑)
そう。奇跡ですぴかぴか(新しい)
よって、猫好きの願望の妄想うっしっし(ネコ)
完全なフィクションですきりり(ネコ)

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