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半蔵門かきもの倶楽部コミュの第117回 文芸部A 大邦将猛作 母へのクロワッサン(3) Croissant pour mama(3) テーマ選択『第二ボタン』

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たった一晩のことだったのに
まるで3年も4年も夢中になった恋人のように
なじんで感じられる。

となりでゆうこちゃんは寝息を立てていた。

夕べはかなり遅くなってから
『化粧を落とすから自宅に行く、一緒に来て』
と言われそのまま西本家へ

食事も忘れてたが寝つきが悪いので一杯ずつの赤ワインと
チーズとありもののパンをかじらせてもらった。
ゆうこちゃんの部屋で寝ることになった。
深夜をとっくに過ぎてたのにまた就寝を遅らせて貪った。

もうすぐ明け方かというようなときに二人で眠りについてそのまま。

さすがにそろそろ起きなければというときに彼女は深い眠りについていた。愛らしい。

彼女がベッドにいるままで玄関を開けさせてもらい
向かいの実家に生地をとりにいった。
短い時間だが一人にするのが気が引けたが
寝かせておいてあげたかった。
生地はパンパンに膨らんでいた。きっとうまくいくと思えた。

手を洗いシリコーンのクッキング台に生地を置き
麺棒で圧し延べていく
すこしづつ長方形に生地は伸びていった。
打ち粉を打ちながら伸ばしていくが
動画のママさんより伸びがいい。

ジプロックの低脂肪マーガリンはゆうこちゃんの家に置かせてもらっていた
端を包丁いれて切って開いていく
A3くらいの生地は計算通りに4mmの厚さだった
取り出したマーガリンを乗せて織り込んで
畳んでは圧し延べてを繰り返す。

3つ折りを4回で81層の生地になる。
丁度いいのではないかと思う。やりすぎてボロボロになっても食えない

溶き卵もらっていいよな・・・買い忘れてた。
York(卵黄)だけを使うと決めてた。
複数の動画で焼け具合をみると
卵白が入るとコッペパンのようにすこし黒くなるように思えた。

そういうクロワッサンで評判の店もあるが
僕が追ってるクロワッサンはたぶん卵黄だけを溶き卵にしている。
卵黄と卵白を分けてそれぞれ泡立てた。
一応どちらも取っておく。卵白が正解かもしれない。

溶き卵はほんの少しでいいだろう。
キッチンペーパに湿らせてなぜるくらいでよかろう

長方形の81層生地を斜めフラッグに包丁で切り巻いていく
最後に軽く溶き卵を付けた。

オーブンを予熱しなきゃならないがどうするか・・・
使ったことないからわからない・・・

「シューちゃんずるい^^、起こしてくれればよかったのに」
「あ、ゆうこちゃん。ちょうどいいや240度予熱いける?
 使い方わかんないや・・・」
「あ、すごい。あと焼くだけじゃない。結局何も教えなかったね」
ゆうこちゃんは手慣れた操作でオーブンを温めてくれた。
「オーブン一人で使えないよ。高機能家電は手に負えないや」

予熱の後実際に焼く・・・。普段欧米の人たちが当たり前に作って食べてるものだ
やればなんでもないことなのかもしれない。

「できた・・・味見してくれる?」
「さすがにおなか減ったしね。私が最初でいいの?」
「もちろんさ」
焼けた香りは申し分ない。
見た目の感じもそっくりだ。
ゆうこちゃんは端をちぎってくずをぽろぽろさせながら
クロワッサンを口に入れた
「あ、おいしい。あったかいし・・・。シューちゃんが求めてる味かどうかわからないけど」
え?そうか自分がたべなきゃ
「僕もそこもらえる?」
ちぎって食べてみる。
「・・・・」
「どう?」
「いや、びっくりするほど思い出した味と同じ」
暖かさもあってたまらない
「溶き卵もらっちゃった。卵白はどうも不要なんだけどもう少しもらえる?」
「うん。朝わたしたちで二つ食べない?あまった卵白ともうすこし卵たしてオムレツつくるよ
 さすがにおなか減ったでしょ。あと軽くなんか作るから」
「うんありがとう。二つずつでもいいよ。母さんにも二つ持って行ってもまだもう一つ作れるし」

ゆうこちゃんのオムレツとサラダをつくる手際はいい。当たり前か^^
見たこともない高級そうなソーセージ(大きい輪切りのボローニャ)とチーズを出してくれた。

キッチンで焼き立てクロワッサンの朝食になった。
不思議な幸せだ。こんな時間を恋人(うん、恋人だ)と過ごすのは生まれて初めてだった。

「これほんとおいしい。そのホテルで毎朝食べてたんだね・・・シューちゃん太りそう^^」
「そのころかなりそうだったかも」
「何時ころでるの?」
「14時だからまだ余裕あるよ。保冷バックにホカロンと一緒にいれてもってくつもり
 自転車だと冷えちゃうから」
「あはは。車だすわよ。お母さんと話し終わるまで待ってるから。ホカロンと保冷バックは使ったほうがいいけど^^」

食事終えて身支度して、ゆうこちゃんはお化粧をしてた。
実家に戻って渡すはずの塗り絵ブックを持ってきた。ねずみの絵本みたいなのだ。
森の中の細かい情景があって癒される。
お手本がほしいというので塗り絵はいつも一見開きだけ僕が塗ってある。
塗り絵本は自由に色をつけるのが楽しいのに手本を欲しがる母が
そうやって生きてきたことを感じさせる。

出かける30分くらい前に最後のクロワッサンを焼いた。
ゆうこちゃんが道具の後片付けもすましてる。
クロワッサンが焼けて車に乗り込んだ。

「S園だよね。あたしたちの行ってた中学のそばの」
「うん、あそこにあんなもんができるなんてね」
「あそこに入ってる人多いよ。この辺一帯の都市は
 チェーンでたくさん施設あるしね」
「うん、知ってる。東京とはあまりに違うね」
「あたし、職場都内なんだ。リモート多いけど
 都内で会える?」
「うんもちろん」
「塗り絵かわいいね」
「うん、母は本屋で本も選べないから
 外れるかもしれないけど買ってる
 かわいいもんがすきだというからこれにした」

施設について、ゆうこちゃんはゆっくりしてきてといった
帰っててもいいよと歩ける距離だと。
すると待ってるからと

入り口には紫外線で常に消毒されるスリッパ入れと
検温機。アルコールはかならず手指消毒。
入所者たちがつくった折り紙やら、編み物の飾りがあちこちにある。

受付で名前を告げるとああいつものという感じで
「J様のご長男様です。面会室へ対応お願いします」とインターフォン。
ここのヘルパーさんは愛想がいい
ひょっとしたらよく訪れる僕にだけかもしれない。

保冷バックになんか入ってるのはわかっててなんとなく目こぼし
たまにくるときだからカロリー外れたって大丈夫だ
実際ここの入所者の中で母はかなり細い方だ

車いすに押されて母が現れる。
「シューイチまた来てくれたの。ありがとうね」
「ううん。休みだから」
ヘルパーさんがではまた来ますといってさっていく
面会室のドアがしまってから
「かあさん、ピザはむりだけどパンを焼いてみたんだ。よかったらどう?」
「え?パンを焼けるのかい?あ、いい匂いだねえ」
目が細くなった。クロワッサンという語は知らないと思った。
食べてから
「こういうパンよくみるけど、こんなおいしかったんだね。
 焼きたてだし・・・ありがとうね」
母の日々の愚痴以外から話題がはじまるのはうれしい
「あはは。結構苦労して(っても初挑戦だが)そんな味になったんだよ
 よかったら二つともたべて」
「シューイチはいらないのかい?」
「来る前に食べてきたよ。かあさんにつくったんだ。昔たべてうまかったものを
 どうしても再現したくて。おなか減るんでしょ。たべて。またコントロールされちゃうんだから」
「そうかい。おいしいねこれは」
塗り絵を見せたり、最近妹と自宅帰ったときの話を聞いたり。
しかしやはり認知症の声を荒げる人の愚痴がでる。
つらいんだろうな・・・
身がちぎれそうだ。

クロワッサンの皮のくずはたくさん出る。濡れナプキンを破いて掃除してすこしは服に着いたりしてるかもしれないが多めに見てくれるだろう。

面会はほんとは30分だが、いつも一時間くらいで迎えが来る
月に一回までなどと言われてるが2−3週に一度くらい来ている
ちょくちょく外出で家に連れて行ってあげられればいいのだが‥
とても体力持たない。

ヘルパーさんがきたら、母はありがとうを繰り返して僕を見送った。
なんのことない一時間。すこしだけ母においしいものをわたせた。
満足だ。と どうにもならない残念が交互に僕を捉える。

「シューちゃん。」
「ああ、ごめんね遅くなって」
「話せた?」
「うん。クロワッサンうまいって。愚痴じゃないことたくさん話してくれた
 今日は笑顔が多かった。」
「よかったじゃない」
うっすらと涙が出てきた。うれしいのかくやしいのかわからない
「シューちゃん」
ゆうこちゃんは頬にキスをしてくれた。
「ありがとう。ほんとによかった。」
中学のすぐそばだったがゆうこちゃんはS園でてすぐに
車を止めた。
「すこし入らない?」
「ああ、懐かしいね」

第二ボタンを欲しいと言われたことはあるか?と聞かれた
あやちゃんは言わなかったかと?
いやと否定した。事実だから。
誰かのをねだった?と聞いた。内緒と返された。

黒いユニクロのシャツを着てたんだけど
ゆうこちゃんは第二ボタンをつまんで
「もらうね」と引きちぎった
「うん、でも思い出じゃないよ
 また会うんだから」
「ほんとに大丈夫?私歯止めが利かなくなりそう」
「僕・・・初めてじゃないし、たぶんうまくいくよ
 僕も相手に執着する方なんだ。でもルールはわかってるつもり」
ルールってとは聞いてこない
しかし男女の自由な恋愛は相手が望まなくなったらそこで終わりだとわかってる
ということは伝えたつもりだ。

僕らはラインを交換した。家に帰り僕は実家を軽く片付けて東京に帰る身支度をした。
なんども経験したこの感じ。
西本のおばさんの目を盗んでゆうこちゃんと逢瀬を重ねられるか?
今度の恋人は長く続くといいなと思わざるを得ない。

「じゃあ」
「うん、ラインするね。なるべく話して・・さみしくなりそうだから」
玄関先でキスはできないからしめた玄関をもう一度あけて中に入れた
コロンのような香りと柔らかい体は官能を呼び起こす

「好きだよ。こんな風になれると思わなかった」
「おばさんのこといろいろ考えてるシューちゃんみたら
 気になって仕方なくなってしまったの。
 昨日ああやって訪ねてくれなかったらこうならなかったかも」

車をまた駅までだしてくれた。あまり乗ってると近所でも目立つが離れがたかったから
お願いした。
駅では言葉を交わさなかった。目で見つめながらお別れした。

電車の中 Line
(ありがとう 昨日はすごかったし
 シューちゃんのいろんなとこ知れてよかった)
                 (すごいって(笑) ゆうこちゃんこそだよ
                  あんな女の子はじめてだ・・・
                  すごくかわいかった)
(バカ。 でもおかあさんよかったね)
                 (うん、ほんとよかった・・・うれしかった)
(次いつ会える?)
                 (再来週休めればくる。またなんかつくる?
                  それとも食べに行く?)
(つくろ?シューちゃん家でいい。長く居られるし
 母には都内で泊るっていっておく)
                 (ばれるだろフツーに。
                  家にいることにしてどっかホテルでもいいけど・・・)
(頼まれたこと全部やっておくよ
 なるべく長く一緒にいて)
                  (ありがと 楽しみにしてる)

疲労が襲ってきて電車の中で寝てしまったが
彼女はとくに言葉をつないでいなかった。

僕は生きていけると思った。なにを喜びに生きればいいのかとおもうほどに孤独ややるせなさを感じてた。
次、何作ろう。すこしだけ楽しみができた。


              

コメント(14)

いいですねぇ。大人の物語ですねぇ。空腹で疲れた時に飲む丁寧に作られた味噌汁のように、腹の中に染みわたり温かくジーンと来ます。若い頃の派手な血の滴るレアのステーキのような恋物語もいいですが、今の自分にはこういうティストが好みです。
挿絵も素敵です。
彼女の絵を生成AIではにかみながら微笑んでいる動画とかにしてみたいですね。
>>[1]
ありがとうございます
なんとなくなにかがはじまるとしても
自分位の歳になると抱えてしまってる問題をすっとばしても
リアリティないなと思って
ちょっと重いかもですがこんな展開に・・・もちろんファンタシーですけど^^

あ、生成AIすごいですよね、画像系はやらないんですけど
作ってみようかな・・・自分の絵はコンピュータにいじられたくないので
ロイヤーさんみたいに作ってもらうのがいいかも・・・
設定が50歳超えだからどんな絵にされるかびくびくしてますが・・・
>>[2]
では、私のやり方でPV作ってみてもいいですか?
>>[3] わーうれしいです
今度おあいしたときやり方軽くおしえてくださいー
>>[6] うおおお
ありがとうございます
移動中なのですが
目的地ついたら
すぐに拝聴させていただきますー

整いー正月の芸人みたいで流行らせたいです笑
>>[6] すごすぎてす
巨匠ーなんだか申し訳ないですが
ほんとありがとうございます

うれしくなっちゃいました
>>[9]
よろこんでもらえてよかったです!
>>[10]
はい。ロイヤーさんのやってみたいなーと思ってたので
まさかでできてしまってうれしすぎますーー^^
シナリオもいい感じに要約されててすごいです。
(要約はロイヤーさんが作ってくれたのかもですが・・・
 もしGenAIが読んで要約したならなお驚きです)
>>[11]
AIは3枚のイラストだけで、あとは私の手作業です(笑)。
>>[12]
うわああ これは申し訳ない なんかご馳走しなきゃーー
あーりがとうございます。
要約力高い・・さすがです
いえいえ、喜んでもらえただけで、十分です。

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