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孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【孫崎享のつぶやき】 随想 69 蕪村 2021-11-08 07:14

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【孫崎享のつぶやき】
随想 69 蕪村
2021-11-08 07:14


私は蕪村の俳句が好きです。彼の自然を歌った句は、とてもスケールが大きい。
 ・菜の花や 月は東に 日は西に     ・春の海 ひねもすのたり のたりかな
 ・不二ひとつ うづみ残して 若葉かな  ・帰る雁 田ごとの月の 曇る夜に・
 ・山暮れて 紅葉の朱(あけ)を 奪いけり  ・稲妻や二折三折剣沢 
 ・畑うつや 動かぬ雲も なくなりぬ
 こうしたスケールの大きい俳句はなかなか他の人には描けないようです。
 しかし、豪快な描き方と共に、繊細な描写も行います。
 ・朝がほや 一輪深き 淵のいろ      ・白露や 茨の棘に ひとつづつ
 ・春雨や 小磯の小貝 ぬるるほど    ・山ありの あからさまなり 白牡丹
 ・夕風や 水青鷺の 脛をうつ      ・牡丹散りて 打ちかさなりぬ 二,三片
 ・柳散り 清水かれ石 ところどころ

 そして、自然と人間の関係も薄く読みます。
 ・片町に さらさ染むるや 春の風     ・春雨や くれなむとして けふもあり
 ・菜の花や 鯨もよらず 海暮れぬ     ・夏河を越すうれしさよ手に草履
 ・愁ひつつ 岡に登れば 花いばら     ・山は暮れて 野は黄昏の すすきかな
 ・春の夕 たえなんとする 香をつぐ     ・きのう暮れ けふ又くれて ゆく春や
 ただ蕪村の情は決して薄くなく、蕪村は『春泥句集』の序で「波すなはち余に俳諧を問。答曰。俳諧は俗語を用て俗を離るゝを尚(たつと)ぶ。俗を離れて俗を用ゆ、離俗ノ法最かたし。かの何がしの禅師が、隻手の声を聞ケといふもの、則俳諧禅にして離俗ノ則也。」「波問。自然に化して俗を離るゝの捷径ありや。答曰。あり。詩を語るべし」と述べてきます。「俗」を離れて「自然」というのは、上の句に遺憾なく発揮されています。
 だが、蕪村の句に「俗」を歌ったものに優れた句がないのか。あります。
 ・月天心 貧しき町を 通りけり     ・さみだれや仏の花を捨に出る 
・鮎くれて よらで 過ぎ行く 夜半の門 ・遅き日の つもりて遠き 昔かな
・逢ぬ恋 おもひ切ル夜や ふくと汁   ・いとはるゝ 身を恨寝や くれの春
・ゆく春や 美人おのれに 背くかな    ・葛水に うつらでうれし 老が顔
「御手打の夫婦なりしを衣更」にはドキッとします。遊女への眼差しにも温かいものを感じます。・ 傾城は のちの世かけて 花見哉    ・住吉の 雪にぬかずく 遊女哉
蕪村の「北寿老仙をいたむ」の惜別を歌うものにも凄いものを判じます
「君あしたに去ぬゆふべのこゝろ千々に 何ぞはるかなる。君をおもふて岡のべに行つ遊ぶ をかのべ何ぞかくかなしき。蒲公の黄に薺のしろう咲たる 見る人ぞなき(略)。我庵のあみだ仏ともし火もものせず。花もまいらせずすごすごと彳める今宵はことにたうとき」
蕪村は確かに「俗」を離れて「自然」を主張しました。しかし、「俗」を見る豊かな心情と繊細な描写能力を持って、それを乗り越えての主張と思います。

コメント(1)

大変、参考になります。ありがとうございます。

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