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犬小屋Run About!!コミュのCrystal Heart 最終章 「Happy!Happy!Happy!」

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 小鳥のさえずりが聞こえてくる。カーテン越しに漏れてくる朝日が眩しくて寝返りをうつ。カチャリとドアの開く音がして優しい声で呼びかけられた。
「浩之さん、起きて下さい。このままでは大学の講義に遅れてしまうと思われますが。」
セリオが浩之を起こしに来たようだ。あの一大イベントから早や二年の時が経ち、今や浩之も大学生になっていた。
「浩之さん?早く起きられませんと遅刻なさいますよ?」
「うん・・・・・。」
季節は春。穏やかな朝の陽気に意識の覚醒が阻害され、またウトウトと眠りに落ちそうになる。セリオの呼びかけに中途半端な生返事を返し、またゴロリと寝返りをうつ。
「もう・・・浩之さんたら・・・。」
呆れたようなセリオの声が聞こえたと思った途端、閉じた視界にフッと影が降りる。
「浩之さん、起きて下さいな。」
  チュッ
頬にやわらかい唇の感触。余りに予想外のハプニングにベッドから跳ね起きる。ベッドの脇を見ると、セリオがイタズラっぽく微笑んでいた。
「おはようございます浩之さん。目は覚められましたか?」
クスクスと小さく笑いながら話し掛けてくるセリオ。最近ではこういった表情を見せる事も珍しくない。
「まったく・・・。どこでこんな小技を覚えてくるんだか・・・。」
浩之は苦笑する。まあ、おそらくは綾香あたりが犯人なのだろうが。そんな浩之を見やり、セリオが言葉を続ける。
「それに浩之さん、今日は途中まで御一緒する約束でしょう?」
はたと思い出す。確か今日は一ヶ月に一度あるセリオの定期メンテナンスの日だった。だから途中まで二人で行こうと昨日約束したのだ。
「悪いセリオ!直ぐに支度するから待っててくれ!」
「はい。朝食は出来ていますので、冷めないうちに召し上がってください。」
セリオは浩之にそう告げて階段をトタトタと降りていく。浩之はベッドから起き上がると急いで身支度を整えた。鞄に教科書を放り込み、階段を駆け下りる。鏡の前で軽く髪を整えて台所に向かった。テーブルには既に朝食が用意されているが、残念ながら味わって食
べている余裕は無い。かき込むように朝食を平らげて居間に行く。
「浩之さん、もう準備は宜しいのですか?」
セリオは既に支度を済ませ、悠然と待っていた。
「ああ!遅くなって済まないセリオ!じゃあ急ぐぞ!」
「はい、浩之さん。」
玄関で靴をはくと、勢い良くドアを開け放つ。セリオの手を取って駆け出そうとした瞬間、ザアッと風が吹いた。その風にふと足を止め、遠くを見る。空は抜けるように青く、雲ひとつ無い。遥か遠くには桜並木が見えた。遠くの風景を眺めたまま立ち尽くす浩之にセリオが声をかける。
「浩之さん?」
浩之はセリオにゆっくりと向き直り、優しく声をかける。
「セリオ、やっぱり・・・ゆっくり行こうか?」
「宜しいのですか?浩之さん。」
言葉とは裏腹に、セリオの声はとても嬉しそうだった。
 二年の間、色々な事があった。誕生日、クリスマス、正月、バレンタイン、どんなイベントも二人で過ごした。この先どんな所へ何回いこうが、飽きる事など無いだろう。きっとその度に彼女は新しい姿を見せてくれるに違いない。ひょっとしたらケンカする事もあ
るかもしれないが、きっとこの気持ちは変わらないと思う。大切なこの少女の手を離す事は決して無いと確信できる。きっとこの笑顔の側に居ると。
 手を繋ぎ、二人で道を歩いて行く。彼女の胸には銀色に光る星のペンダント。夢のように穏やかな二人の時間。セリオが浩之を見つめる。とても、とても幸せそうな顔で。
「ねえ、浩之さん・・・・」
「ん?」



 
 生まれ、目覚め、出会い、そして機械仕掛けの少女は恋をする。生まれ得ざる想いに戸惑いながら、それでも手探りで進みながら。想いは雪のように降り積もり、水のように澄んでいく。それは透きとおった水晶のように。そして澄み切った想いは言葉を紡ぐ。   
優しく、確かな声で。
 

「貴方のことを、愛しています。」




                        ―END―

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