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eine kleine Miniaturgartenコミュのあるお祭りの夜。

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「そこのお姉ちゃん、リンゴ飴はいかが?」

ボーッと歩いていたところへ突然、威勢のいい声が割り込んでくる。

遠くの方でぼんやりしていた提灯の光や連なる出店の軒先にだんだんとピントが合ってくる。

繋いだ手の温もりも蘇ってきた。

「人の心って、リンゴ飴みたいだね。」
と君は言った。

どういうこと?ととっさに聞き返したけれど、すぐにその愚かさに気づく。


少年が吹いたシャボン玉が目の前をみるみる下降していってアスファルトに吸い込まれ弾けた。



リンゴ飴。

甘ったるいコーティング、そのなかにある本物の味は、噛んだ人にだけ分かる。
そのなかにあるものは、虚無。特に甘くも苦くもない、ただのクリーム色の密度の高い物質。
でも、それが本質というものだ。

恋する心で君を追いかけるときは、まるで金魚すくいのように、なかなかうまくいかないもの。
やっとのことで掬った一匹の金魚は忽ちリンゴ飴に姿を変え、私はその表面の甘い味を恍惚としながら舐めていく。

そしてある時ふと気づくのだ。
この甘いシロップの終焉に。

世界は終わりから始めることばかり。
時間は留まることを知らず、リンゴ飴も溶けていく。掬った金魚もだんだんと鮮度を奪われていく。朧気な世界の果てを知って、そこからまた新しい世界を形成していく。


思えば一年前の同じお祭りの夜、私はガードレールにもたれ掛かりながらボーッと阿波おどりを見つめていた。


その頃の私の心は綿飴みたいで、ふわふわと捉えどころのないものだった。
昔は、誰にも捕まりたくないと思っていた。厚みも重みも感じないで、ただひたすら自由に、気の赴くままに飛んでいたいと思っていた。

でも、今は少し違う。

溶けたザラメが白い雲のような綿飴の表面に金色の雨を降らす。

このまま全てが溶けきってしまったら、どうなるのだろう。
このままただ重力に従って墜ちていくのも、悪くない。
さっき見たシャボン玉のように無力にアスファルトに墜落していく様を想像した。

ううん、今は違う。
掴んでいる手が欲しいと思った。
綿飴を掴む手が欲しい。




私は君の手をぎゅっと握った。
君の熱い体温はきっと、リンゴ飴も綿飴も溶かしてしまうだろう。
その心地よさに虚栄の糸はほどかれていき、また紡がれていく。

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