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クエッタの色々(Pakistan)+@コミュのクエッタからそう遠くない土地で

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「6月16日(月)の朝刊各紙におけるイラン日本人誘拐事件報道所見」
Mixiにおける日記(gwarix) 6月17日の書き込みコメントより

 6月16日の朝刊各紙は昨年十月からイラン南東部のパキスタンとの国境地帯で武装集団に誘拐されていた横浜国立大学生:中村聡志さんが14日にパキスタンで解放され、15日イランの首都テヘランに到着したことを報じた。今日17日には帰国なさるそうだ。長い人質生活に耐え抜いた中村さんに祝福を。
 普段は日刊紙を読み比べることなどないのだけれど、事件の場所(バルーチスターン)が、そして犯人グループの所属する民族集団(バルーチ民族)が、私の長年の直接的興味対象であっただけに、今回に限っては知らない顔をする訳にはいかなかった。
 事件のあらましについての情報は、朝日、毎日、読売、東京各新聞を横読みすることでほぼ全体像を網羅することができる。一紙として完全な情報を伝え切っていないと言えるけれど、共通した基本情報はともかく、それでも各紙ごとに記者たちの個性や情報網を駆使した特徴が現れていて興味深い。
例えば、読売は「国境線転々 深追いせず」(4面)と銘打って、犯人グループと人質の足跡を他紙より詳しく書いている。パキスタン領バルーチスターン州のバラブチャという地名を出しているのは読売だけだ。ここは誘拐した「同月中に、誘拐場所から東へ約800キロ・メートル離れたアフガニスタンとパキスタンの国境付近」の地名。
 私も初めてきいた名前だが、地図から判断すると、外国人旅行者には開放されていないアフガニスタン国境へ通じるルート上に位置し、居住民族はバルーチ族だが、母語のバルーチー語と並んでペルシア語が大きく通用するアフガン的影響が強い地域だ。民族的伝統から商業を嫌うバルーチ族ではあるが、例外的にこの地域から南部にかけてのバルーチ族は商業を営む。主に運送(密輸も含め)、そして稀に鉱山経営などである。冬は大変寒く夏も大変暑い。春に雨が降れば砂漠は緑の絨毯と花園に一変するその地域は、外国人旅行者はもちろん、報道機関が入ることも容易ではない地域であり、不本意に連行された中村さんの胸中を思うと「よく頑張られた」としか言えない。
 毎日は、「パキスタンが協力 長年疎遠 一転、イランが要請」(7面)としてイランとパキスタンの外交的バランスをよく理解して微妙な地域での二国間の水面下の攻防がよく伝わる文章であった。確か記者の方の前任地はイスラマバードではなかったか?国境線を挟んで両国に跨るバルーチスターン地方は、ともに「辺境」に位置する最貧困地帯で中央政府への不満がくすぶることを記してあった。見事な見識である。
 けれども、パキスタン内に関していえば、確かにバルーチ族は中央政府に対して様々な民族的自由を守るための闘争(これを彼らは「ジハード(聖戦)」とよぶ)を続けてはきたが、ただバルーチ族であるというだけで密輸団シャハバフシュとパキスタン軍と戦ってきた民族主義闘士たちを同様に扱ってはならない、とも私は考える。
 言い方が悪いと承知の上で書くが、もしシャハバフシュがバルーチ民族の共通利益や民族的尊厳を守るために、それらの侵害者と闘っていたと言えるのであれば、私は前言を撤回しなければならない。密輸が必ずしも「悪」とは言い切れないけれど、己の利得のために汚い商売に手を出し、本来旅人を助け喜ばせるために見せなければならなかった客人歓待の美しい民族的伝統を、こういう形で発揮したのは不幸である。彼らシャフバフシュが悪党から義賊的英雄になるには、民族のために強大な敵に立ち向かい、勇ましく闘って死ぬことだ。部族慣習法のコードに則って、彼らをバルーチのみならずパシュトゥーン族までもが「シャヒード」、つまり殉教者とうたってくれることは疑いない。
 最もこの事件に紙面を割いていたのは朝日である。2面の「時時刻々」では「国境またぐ解放劇 イラン、貫いた強硬姿勢」として、現地の政府や当局のコメントを効果的に挟んだ臨場感溢れ、説得力に足る構成でこの事件を扱った。なかでも驚いたのは、「8ヶ月に及ぶ人質生活はどのようなものだったのか」と私は当然のこと、誰もが興味を抱き最も知りたい記事があったこと。「関係者によると、」から始まる本節は、あくまでも人質の境遇に配慮しながらも、犯行グループが人質に見せたであろう民族的伝統にまで筆が及ぶ。
 まず「犯行グループ」イコール「バルーチ族」と見られがちな表現をしなかった点は見事である。「グループの属するバルーチ族は」と書くことで、少数民族バルーチ族全体の名誉を守った。民族名の表記も他社はみなバルチ族であったのに対し、朝日だけは原語の綴りに忠実にバルーチ(バローチも可也)としてあった。報道の現場で、慣例となっている固有名詞や地名の読み方を、日本政府ですらできない正しい読み方で貫いた勇気ある記者魂には頭が下がる。
 今回の朝日の記事では特に、「犯行グループは、食事の際に羊肉のおいしいとされる部分を中村さんに与えるなど配慮をしていたようだ」「犯行グループが属するバルーチ族は客人を丁重にもてなすことで知られ、中村さんも客人に近い扱いをうけたとみられる」からなる文が光っていた。この文を読んで私の眼にも涙が光った(笑)。幹部とヒラの戦闘員とでは大きな違いがあるであろうが、犯行グループの彼らも「人間であること」、そして私にとって重要なことだったのが「バルーチ族としての誇りを忘れてはいなかったこと」、これらの情報をあますことなく伝えてくれた名文である。僭越だが、随分と勉強されたのではあるまいか。
 また「イランとの国交断絶」など荒唐無稽な要求を中村さんは電話で伝えさせられ戸惑った、とも記されていたが、非常にバルーチ族の特徴を表しているなぁと感じた。
 彼らの思考パターンは世界の大局を論じるには向いていない。目の前に見えている対象を獲得するために全力で行動し、終わったら命がけで退却する。半農半牧の中途半端な遊牧民体質であり、略奪もまた大儀ある経済活動だとつい最近まで実践していた人たちなのだ。血縁だけを重視することなく、族長に忠誠を誓えば原理的には私だってバルーチ族に加わることもできる。宗教的にはイスラーム・スンナ派であるが、特にイスラーム指導者に率いられて宗教的熱情が強いわけではなく、聖者や呪術師も大きな影響力をもっている。外務省の民族問題分析家の高橋博史氏は「バルーチ族の、貧困からイスラーム原理主義運動に走らない、しかも経済的にも積極的に発展していこうとしない性向は大変ユニークだ」と仰られたが、もっともな話である。
 この事件は、日本では理解し難い、辺境の中の辺境に住むユニークな民族と関わってしまったことで、政府的には「限定された日本の対応」(朝日)を余儀なくされたことになる。
 新聞から話がそれたけれど、この事件について思うことを書いてしめくくろう。
まず、テレビの映像でシャフバフシュを見たとき、いくら顔を隠してもあの服装と履物ではバルーチ族の一派に違いないと思った。それと同時に、もし彼らがバルーチ部族慣習法を守る旧態的なバルーチ族であれば、人質の命は絶対無事であると確信していた。形は違うが「客人」としてしまった人の命と財産は、命をかけて守らなければならないと定めたバルーチ的慣習法マヤール(mayar)/ リワージ(riwaj)がある。この点は、友人知人たちとこの話題になったとき再三言っていたことである。
反省しているのは、せめてその情報だけでも中村さんのご家族に伝えるなどして多少なりとも気を楽にしてさしあげられなかったことだ。あとの祭りで偉そうなことをほざいても全く意味は持たない。知っている者であるならば、相手が困っている非常の事態の場合、どんな手をつかってもできる限りの生きた情報を伝えるべきであった。好事家が困惑者の力になれる、社会の役に立てる機会と理解して意識的に生きていこうと思った次第である。
いずれにしても、テヘラン支局の新聞記者のみなさん、お疲れ様。よい記事をありがとうございました!今後も期待していますよ。

コメント(1)

>gwarixさん

各新聞の詳しい内容どうも有り難うございました!顔(願)

我が家は、新聞も取ってない上にパソコンは壊れたままなので、このニュースはTVでちらっと見ただけで、一体この8ヶ月はどうだったんだろう?と知りたかったんですょ。

実は、彼が拉致されてから度々インターネットカフェに行った際に、その後の動きを知りたくて調べていたのですが、何も出てなくて…、だからいつの間にか帰って来ているのかも…?とか思ってたんですょ。

ところが、日本国内ですっかり忘れられていたところに、いきなり「解放!」とニュース速報で見て会見を楽しみにしていたら、やっぱり口止めされてたみたいで、周りの顔色伺いながら喋っていた感じですね。

私も、この件だけに関わらず、イラクで日本人3人が拉致されたのも、彼等は殺される事はない!と当時滞在していたパキスタンから両親にメールを送っていましたし、残念ながら殺されてしまった香田さんの時には、今回のは危ない!とも送りました。

だから今回のもすぐ、多分彼はパキスタンの部族地区にいて、これは殺される事はない!と両親に話していたんですよ。
長い間、あの環境にいると何となく読めるんですよね。

ただ、場所がはっきりしていなかったので私はパシュトゥーンかな?と思ってました。

パシュトゥーンも、初めてのお客様をすごく大切にもてなしますし、クエッタの辺のルールでは初めてのお客様を大切にもてなすのは当然の事として、そのお客様の要望はそれが少々彼等の流儀を破る事であっても聞いてくれます。

だから、今回のケースも手荒な事はされてないだろうとは想像がついていました。

クエッタの町の中でも、外国人は入れないエリアがありますが私は何回か行ってました。(笑)

大体、どこから何処までがよくて、どこからダメか?なんて分からないし、まぁ何も情報とか盗むつもりもないしねぇ。
パキスタンの在日本大使館や領事館の人も、かなり大袈裟にビビって物事やったり話したりしてたけど、所詮いい加減な国だし人々も単純なので、その環境に慣れてしまえば日本で暮らすより遥かに簡単だとは思います。(ただし、簡単だけど楽ではない)

事件や事故のニュースは歓迎できる事ではありませんが、あの地域の人々が見られるのでニュースがある度食い入るようにTVを見てしまいます。(笑)

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