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政治の動きコミュの185、欧米に骨抜きにされた日本の援助哲学 「自らを助け、共に汗をかく」ことが理解されない

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 ODAは、その実態を正確に理解されぬまま悪者扱いされることが多い。その「悪玉論」がいつごろから、どのような経緯で形作られていったかについては、稿を改めて解説したいと思っている。その前段階として、まずは「ODAとは何か」という基本的なところから説明していきたい。

「先進国の援助クラブ」入りから始まった

 ODAとは「政府開発援助」を意味する英語の頭文字から取ったものである。日本がその活動に加わったのは1964年。アジアにある先進国として初めて、フランス・パリに本部があるOECD(経済協力開発機構)に加盟し、その下部組織で、“先進国の援助クラブ”と称されるDAC(開発援助委員会)に仲間入りした時からである。日本はこの時から一種の紳士協定とも言えるDACの規範に従うことになった。

 OECDによると、途上国援助を先進国からの資金の流れと見て、その全体を「経済協力」としてとらえ、3つに大別している。

1. ODA
2. OOF(その他の政府資金の流れ。例えば国際協力銀行の民間への投融資など)
3. PF(民間資金の流れ。途上国への民間投融資からNPO=非営利団体、NGO=非政府組織などのボランティア活動まで含まれる)。
 その中でODAはしっかりと定義されている。

(1)政府ないし政府機関(JICA=国際協力機構など)の予算であること
(2)開発途上国の経済開発や福祉の向上に寄与すること
(3)資金協力の場合、援助の贈与度を示すグラント・エレメントが25%以上であること
 もう少し説明しよう。

 (1)の「政府予算である」ということは、「ODAはチャリティー事業ではなく、国の事業である」ということを意味している。
 (3)の「贈与度25%」とは、お金を貸す援助のうち25%は贈与にしなければならない、ということだ。

日本にしびれを切らした欧米勢

 円を貸し出すことで援助する日本の「円借款協力」が、ある意味、狙い撃ちされているとも言える。その定めに従うと、円借款協力は援助条件として金利を市中金利よりもかなり安くし、返済期間を25年以上と長くし、返済の据置き期間も長目にしなければならない。

 さらに、そのプロジェクトの施工者は国際入札で決めなければならない。つまり、日本の円借款協力はタイド(日本企業が施工したり、日本製機材を購入したりするヒモ付き)でなく、ヒモの付かないアンタイド(国際入札)にしなければならないという条件がついた。

 このアンタイド条件は1960年代から70年代の日本の輸出振興時代では痛手であった。

2011年6月20日(月)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110616/220831/?top

 当時、商社はODAを「円クレ(クレジットのこと)」と呼んで、東南アジアへのプラント輸出など大型ビジネスに利用していた。政府もこうした経済開発を重視する経済協力を輸出振興政策に組み込んでいた。政府の総合経済対策会議では、内需拡充の一環として経済協力の強化が必ず登場していたくらいだ。

 タイド援助は、確かに日本経済に寄与するという意味で効き目があった。日本は東南アジアを初めとして世界中の途上国市場で欧米の輸出競争力を弱めさせたからだ。これが引き金になって「先進国援助クラブ」の仲間割れが起こったのである。

日本の立ち位置を規定するDAC

 欧米勢は、なかなか援助からヒモを外そうとしない日本にしびれを切らして、「日本の援助は商業的援助だ」と悪評をまき散らかし、国際世論を盛り上げて、日本にヒモ付きでない援助を迫った。

 日本は1980年代に入って、まず「LDCアンタイド」(日本と途上国の業者だけが入札に参加し、欧米勢は排除する方式)に移行し、次のステップとなる「100%のヒモなし援助」へと進んだ。その頃の日本は、西ドイツと外貨保有高で1、2位を争うまでに成長していた。

 次にもう1つ、世界のODAにおける日本の立ち位置を決める「DACの決めごと」に触れておこう。繰り返しになるが、DACとは、OECDの下部組織で、「先進国の援助クラブ」と言えるものである。

 少し専門的になるが、DACは、各国の「援助実績を示す基準」を規定する。これによって、援助する国としての日本の見え方は大きく変わってしまうのである。

ネットベースで評価を下げた日本

 例えば、2009年における日本のODA実績は、日本政府がよく使う「グロスベース」で見ると164億4000万ドルで、世界2位になる。ところが、「ネットベース」で計算するDAC基準に従うと、94億5700万ドルにとどまる。その結果、世界ランキングも米国、フランス、ドイツ、英国に次ぐ第5位まで落ちる。

 これは、援助される途上国の実質的な受取額から計算されるからだ。途上国が過去に借りた円借款から、同年度の返済金と利子(毎年平均約6000〜8000億円)を差し引いたものが2009年度の実績となるのである。

 グロスベースとネットベースで金額や順位が大きく変わるのは、援助額の40%以上を円借款が占める日本だけである。DACのトリックとも言える仕掛けに泣かされていると言ってもいい。

 それは、無償援助を原則とする欧米と、借款による自助努力での援助効果を重視している日本の考え方の違いから生まれた結果だ。それにより、日本は痛い目に遭ったことがある。

 1999年末、欧米の意向を中心とした途上国借金の棒引きが行われた。その際、日本は借款の貸し倒れが響いて世界最大の借金帳消しを余儀なくされ、その規模は1兆円近くに達した。「借りたものは必ず返す」という自立の精神を育てるという厳しい日本の援助哲学は欧米には通用しなかったのである。

中国は「紳士協定」などどこ吹く風

 では実際のところ、日本を外から見ると、日本のODAはどう見えているのだろうか。

 日本のODAを見る目には、2つの視点がある。1つは先進国の視点。もう1つは途上国の視点だ。まず欧米など先進国が日本を見る目は、率直に言って、中国を見る目よりも熱くないし、警戒もされていない。それは、彼らの国益を害するものがないからである。

 1960年代から80年代の日本は、欧米など先進国にとって脅威的であった。彼らが脅威を感じていたのはヒモ付き援助(タイド)だったからだ。ヒモ付き援助による商談は、日本の商品や機材の飛躍的な技術的向上もあって、ことごとく成功し、かつて欧米が幅を利かせていたアジア市場を席捲していった。

 これに脅威を感じた欧米諸国は、先にも述べたように、彼らが支配するDACの場でアンタイド(ヒモ付き撤廃)の援助原則を日本に押し付けて、日本のODAを骨抜きにした。

 彼らの敵ではなくなった日本に代わり、今、猛威を振るっているのが中国である。DACに加盟していない中国は「紳士協定」などどこ吹く風。植民地時代から欧米の伝統的な牙城だったアフリカなどを“荒し回っている”状況だ。中国の振る舞いについても、機会を改めて解説したい。

ノンポリシーがポリシーなのか

 一方、援助される途上国が日本を見る目はどうか。まず、第1は「安心感」であろう。

 日本の経済協力は、まず国の根幹をなす経済・社会インフラ建設から始まり、それに民間の貿易と投資が加わる段階へと移っていく。これによって、東南アジアの国造りはかなりスピードアップされた。政治的枠組みを強めたASEAN(東南アジア諸国連合)が誕生した際も、日本はその経済的基盤づくりに協力した。

 それに対し、例えば米国は、ベトナム戦争に見られるように巨大な軍事力を投入して、米国の援助の旗印である「議会制民主主義」と「自由主義」の浸透に力を入れた。冷戦崩壊後も、米国は一貫して「議会制民主主義」を押し通し、アジアの独裁国家に民主化の圧力を強めた。

 時には露骨な政治的介入も行った。その民主化運動には欧州も同調した。その運動は政治的圧力となって多くの途上国の民主化を実現し、援助を増やすきっかけになった。しかし、日本の援助はその領域に踏み込まなかった。

 良くも悪くも、日本はイデオロギーを伴う援助には荷担しないのである。時に「ノンポリシー(無策)がポリシー(政策)なのか」などと揶揄されたが、それでも日本は内政に干渉しない。その結果、途上国側から「安心感」を持たれたわけだ。

現場型とも言える日本の援助方式に親しみ

 第2の目は、日本の援助が「要請型」であったために相手国の「信頼感」を高めたことである。

 日本の基本的スタンスは「押し付けない援助」である。日本は相手の要望をよく聞き、その上で具体的な方法を提案する援助スタイルに徹してきた。時には、「国益面で無策だ」と批判されることもあったが、それは相手国の主権を尊重することに通じていた。それが日本への「信頼感」を高めたのである。

 例えば、日本が道路などのインフラ建設に協力する場合、担当する業者のリーダー格の人までもが現場に入って泥まみれになりながら指導することが珍しくない。これは、モノ作りの工場指導でも同じである。

 新しい国を造る時はトップダウンが必要である。しかし、その国の人たちに自信を持ってもらうためには、ボトムアップを促すアプローチも必要だ。それこそが日本の援助スタイルになっている。途上国の人々は、そんな現場型とも言える日本の援助方式に親しみを感じている。日本が援助先の国と同じ視点に立って物事を考えているからであろう。

◇   ◇   ◇

 日本では「経済協力が国益の追求の道具になっている」という批判も聞かれたが、途上国側から、そうした声を聞くことはほとんどない。自国の経済発展を促してくれたという意識が大半で、言うならばWin-Win(互恵)の関係を築くことに成功したからであろう。

 では、日本国内でODAを悪者扱いする論調がなぜここまで根強いのか。次回は、この点について話を展開していこう。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110616/220831/?top

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