また、より抜本的な「非伝統的な」対策を、イギリスの経団連に当たるイギリス産業連盟(Confederation of British Industry)の元理事長で、『公正な資本』という非常に面白い本の著者であるアデール・ターナー(Adair Turner)氏が提案している。財政赤字は国債発行で埋めなければならないという、健全財政の基本的な原理を問う人はいないだろう。なぜ基本原理になっているかというと、そうしなければインフレになるからである。ところが、今はインフレを起こすこと自体が目的だからこれは進入すべき「聖域」ではないだろうか。彼は、財政赤字を国債ではなく、政府が支出拡大のため、無利子、償還不能の「空虚債」によって日銀から資金を調達すればいいと言う。金融政策というより、国債残高拡大を避けつつ財政赤字を増やすことによって、いわゆるヘリコプター・マネーを作る方法である(ロンドン日本商工会議所での講演。JCCI Review,no.22Winter 2002)。