ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

ウラジミールの文章置き場コミュの短編小説「プールサイドのアズミ」

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
(名島表現塾課題・テーマ「最近の事件を題材とした物語」)
2007年01月29日


「俺は亜美が好きだよ。」
「私も、お兄ちゃんが好きだよ。」
「どう好きなんだよ〜亜美〜」

借りてきた映画「くりいむレモン」のDVDを見る予備校生ユウキチの目は、まさに羨望の眼であった。
血のつながらない義妹との禁じられた恋。
そしてセックス。
彼にも妹は居たが、この映画のような虫の良いロマンスとは無縁だった。


ユウキチは決して美男子ではない。どちらかと言えば中の下といったところで、それは彼のコンプレックスの一部でもある。
それを妹から
「お兄ちゃんをかっこいいなんて言う人居ないよ」
等となじられれば、余計に腹が立つ。
妹よ、それではお前はどうなんだ。
自分のルックスに対してどういう認識を持っているのか。妹アズミは、同じ両親から発生した事がうなずける程には、兄と似ていた。
アズミは芸能界に憧れ、
タレント目指して事務所に登録したり、レッスンを受けたりしている。
もちろん彼女も特段顔の良い方ではない。
決して大成する事はないだろう。
いくら頑張ってもマイナーなVシネのヒロインすら難しかろう。
そういえば彼が今観ているDVDの続編シリーズの一本「くりいむレモン〜プールサイドの亜美」に彼女が出演した事をネットでいち早く知ったユウキチは、発売と同時にDVDを購入しているが、アズミの役は主人公亜美ではなく、「棒を振り回す不良少女」という端役であった。
ユウキチは妹を心の中で嘲笑した。
お前じゃその程度だよ、ハハっ。
しかし小さな落胆と、小さな安堵の気持ちも併せて生じている事に、兄は自分でも気付いてはいた。

ユウキチはアズミの活動をホームページやGoogle検索で逐一チェックしていた。
やはりブログにも、その横暴な態度が滲み出ている。
性格がキツく、よく面と向かって暴言を吐く妹。
親の後を継ぐ為に歯科医大を三浪している事は妹には格好の攻撃材料だ。
お兄ちゃんには夢がないね。
お兄ちゃんは勉強してないから成績悪いって言うけど、違うんじゃない。
ユウキチにとってそれらの言葉はそれぞれが全て、言ってはならぬ一言だった。
妹が憎かった。
近親なだけに一度憎しみの感情を抱けば、それは自分ではどうする事も出来ぬ程にたくさんの澱となって沈殿し、心の中は攻撃的な気持ちであふれかえる。
が、別な意味でも制御できない情動が、兄の中にハッキリと息づいていた。

くりいむレモンシリーズの妹ヒロインの名前は亜美。
アズミじゃ一文字多いだけなのに、どうしてこうも違うのだろうか。
妹のチョイ役出演作を購入して以来、ユウキチはこのシリーズにすっかりハマってしまった。

「お兄ちゃん、好きだよ。」
「亜美、俺もう我慢出来ない。」
ヒロイン亜美はユウキチの理想の女性像であった。
一つ屋根の下で、意識しあう思春期の男女。
たまたまそれが義兄と義妹という関係であっただけ。
許されないと知りつつも、
いつしか体を重ねあう義兄と義妹。
シリーズ全6作を購入やダビングで収集し、繰り返し観る内に、ユウキチは自らを映画の中の兄と重ねあわせていた。
或いは彼がそれ以前から内包していたモノが映像ソフトとして結晶化したのであったのかも知れない。
自分の妹がもっと優しくて、可愛いくて、俺に甘えて来たら…両親の居ない時に二人っきりで…。
妹の体は、果実の熟した甘い香り、それにも似た色香を漂わせ始めていた。
その胸は大きく膨らみ、
普段から露出度の高い服の隙間から谷間がのぞいていた。タレントとしてのプロフィールでは、B90W58とあった。
手を伸ばせば掴めるところにある乳。けれどもそれは禁断の乳。
許されぬ状況であればあるほど燃え上がるのが禁断の関係である。
お兄ちゃん。
亜美、亜美、亜美…アズミ〜。
アズミの下着は、手に取ると甘い香りがした。
夢中で握り締め、勉強机の引き出しに隠した。
それから何度か、勉強の合間に下着を嗅いだ。
アズミがくりいむレモンの亜美の様々なシチュエーションで「お兄ちゃん」と言ってくれた心地よいビジョンが、頭の中で何度も回った。

しかして現実はどうだろう。性悪な妹。
顔を合わせる度に悪意の言霊が飛んでくる。
その度にぶん殴ってしまいたくなる。

妹が家出をした。
帰って来たのは一週間後だった。
プチ家出というやつだ。
家を出て二日目までは、ユウキチの心中は穏やかだった。
静かな日々を過ごした。
三日目からは、気が気ではなかった。
あんなにも憎い妹だが、
その所在が気になる。
下着の匂いを嗅ぎながら心配して過ごした。
一週間後に妹は帰って来た。
両親と口論していたようだったが、妹に反省の色など無かった。

ある日、ネット上の会員制日記サイトに、妹を見つけた。本名芸名の記載はないが、
妹が端役で出演した映画や芝居の現場状況が、事細かに書いてある。
やはりアズミの日記だ。間違いない。
そしてプチ家出していた一週間の事も匂わせてあった。
知人の家に泊めてもらい、
「愛人してました」
だ、そうだ。

妹の乳が、尻が、そして性器が、、、
誰とも分からぬ男に揉みしだかれ舐め回されそしてそしてあああああああ。

また妹と口論になった。

妹が言ってはならぬ一言をまた言った。

お兄ちゃん夢がないね。
お兄ちゃんの夢はお父さんのマネだよ。

ユウキチの中で、何かがブチ切れた。


*この物語はフィクションですので実在の人物、実際の事件とはあんまし関係ありません。

コメント(1)

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

ウラジミールの文章置き場 更新情報

ウラジミールの文章置き場のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング