彩食酒家民コミュの民！３月の新メニュー！またしても遅れました…かたじけないですっ！残り１０日しかないけどどうか皆さんお役立ていただければ幸いっす！ｳｽｯ！

今宵、私と一緒にバーボンソーダで乾杯…

シュワシュワと上に昇る炭酸が、静かに音をたてながら次々に弾けていく。
傾きかけたグラスが斜めに重なる時、
キンッ…と、かん高い音が響く。
それは、私とあなたの出会いのゴング。

ここは場末のバー『再会』
私のへたな腕で作る酒と渇きものは、
喉ではなく、たまに心を潤すようだ。

「いらっしゃい。」

「マスター、酒…くれるかい。」

この男、ここ最近よく顔をだしてくれる。
一体何者なのか…。
気になる。実に気になるのだ最近。
ニットキャップからはみ出た強めの天然パーマ。
もみあげとひげとの境目がどこなのかわからないほどの髭の量。
腕に至っては、毛並みが崩れる度に手のひらで綺麗に揃えている。
どれどれ？胸毛はどうかな？
きっと生えているに違いない。
いや…意外と胸毛だけは薄いなんてこともありえるか…
どうしよう…
『胸毛生えてますか？』
なんていきなり聞くのは失礼か…
そうだ！
エアコンの温度を上げてもっと汗だ！
汗カキコキ大作戦だ！

『暑いよマスター…』

なんて言わせて男はシャツをパタパタする。する。
その瞬間、すかさず胸元から胸毛をチラ見。

『お客さん。沖縄出身ですか？』

いや、もし違った場合、この男なら今までの人生で何度も同じことを聞かれているはず、
もっと柔らかく、ごくごく自然に、ナチュラルに攻めなければ。
んん…？待てよ…この男確か…
前回は…酒のあと泡盛を飲んでいたな。
次だ…次の酒が泡盛なら、ごくごくナチュラルに沖縄の話ができる。
よし。とにかくエアコン作戦をまずは決行するしかない。
設定温度を…思い切って３０度じゃい！エイッ！
あとは次の注文までポーカーフェイスで…と…

「マスター…」

来た。

「泡盛…もらえるかい…。」

来た…来た！
しかも既に襟だらだらで胸毛見えとる。

「お客さん、沖縄出身？」

「いや。よく言われるんだが、違う。ここ美野島で生まれ育った。」

「それは失礼。それにしても君はまさに日本人顔の見本みたいないいツラだ。」

「ありがとう…どうだいマスター。褒めてくれたお礼に一杯おごらせてくれないか。」

「そりゃありがたい。それじゃ私はその粋なはからいに代金を払おう。私のおごりで一緒に乾杯してくれないか。」

「負けたよ…。伊達にこんなところで商売しちゃあいないってことか。」

「それじゃあ…バーボンソーダで乾杯だ。」

「あぁ…好きな酒だ。マスターの男心に…完敗。なんてな。」

キンッ…

男はここ美野島で生まれ育ち、
歌手を目指して上京したが、
夢破れて今は地元で流しをしていると言った。

「マスター。一曲歌わせてくれないか。」

「あぁ…お願いするよ。」

「聞いて下さい。民、３月の新メニュー。いつも遅れてごめんなさいのバラッド。」

～民！３月の新メニュー♪～

・のり巻菜の花ユッケ　　　　　　　　￥４２０
・豚バラと新じゃがの煮っころがし　　￥４５０
・生ささみの梅照り焼き　　　　　　　￥５８０
・子持ちししゃもフライ漬物タルタル　￥５８０
・生桜えびのかき揚げ　　　　　　　　￥６８０
・スナップえんどうえびそぼろソース　￥６５０
・新竹の子アンチョビバター　　　　　￥６８０
・まるごと新玉ねぎグラタン　　　　　￥４８０
・豚トロマスタードデミ　　　　　　　￥８４０
・鶏のねぎ味噌焼き　　　　　　　　　￥５８０

心地よい風になびく菜の花の香りは
ブッタの唄うバラッドにっころがし

君ささみ　きささみ　あおささみ梅照り焼き
あおたるたる　きたるたる　漬物たるたる

生桜えびかき揚げ！
スナップえんどうえびそぼろ！
えびえびはえびでもcrash or fly

とんとろマスタード…
サンキューマスター男心…

セイッ！ジャカジャン！

「いい歌だった。この町に響く魂の声だった。太陽の恵みと広大な大地のもとで育ったトウモロコシたちの叫びによって作り上げられたバーボンは、国境を越え、遠い美野島まで届いていたようだ。」

「ありがとう…マスター。俺はそろそろ行かなきゃならねぇ。」

「気をつけて行くんだぞ。」

「これ…酒代だ。つりはいらねえ…。」

少し汚れた千円札をカウンターに一枚置いて、
男は去った。

この店で、ひとつ傷を癒して去っていった…

バーボンソーダがシュワシュワと音をたてている。

ここは場末のバー『再会』
私のへたな腕で作る酒と渇きものは、
喉ではなく、たまに心を潤すようだ。

言い忘れていましたが…
うちの店、再会と書いて、
『めぐり会い』と読みます。

おっといけない…エアコンの消し忘れにはご注意を…