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投稿いただいたレノン・フルシアンテさんの作品
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=12264943&comm_id=492442
を再レイアウトさせていただきました。

本文に長い文章を空間のないレイアウトで入れてしまうと、どうしても読破できない印象になり、結果的にすばらしい作品も眠ったままになってしまいます。
ちょっとした工夫で読みやすくなるかと思います。

長文登録の参考にさせていただきたく、すてきな作品でしたので、改めてご紹介させていただきます。
作品へのコメントもいただければ幸いです。
(管理人)



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『夜の公園』

2006年11月09日17:55 レノン・フルシアンテさんの作品

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僕の大切な人が連れて行かれた。


理由はこうだ。

僕がその人を連れ戻しに行くというシナリオを作るためだ。それ以外の理由はいらない。そんなものは何の意味ももたないからだ。

僕は数々の苦難を乗り越え、彼女を奪い返す。そして、花びらが舞う中、大勢の人々に祝福されながら永遠の愛を誓う。

そんなところで目が覚める。僕は学校の机の上で眠っていたのだ。

そうか、全て夢だったんだ…そう思った瞬間、手に何かを握っているのに気付く。

手の中には、あの時舞っていた花びらが三枚。

よくありそうな話だ。

そんなことが本当に有り得るかという事を僕はその時、真剣に考えていた。



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http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=12318013&comm_id=492442&page=all

コメント(5)

                     ○



時刻は夜中の午前1時。

場所は夜の公園で。


子供達の元気な笑い声、親達の他愛のない話が去って、約半日弱、この場所には何か独特のものが感じられる。何か特別な、大事な場所のような気さえする。

僕はブランコの前にある柵に座っている。僕はベンチには座らない。

理由は自分でもよく分からないが、たまに公園に来るといつも決まってここに座る。

夜の公園は本当に静かだ。夜の静寂を切り裂くのは風でさえ十分な気がするほどだ。人通りもなく、たまに脇を車が通るぐらいだ。

しばらく、僕は考えこんでいた。まず大切な人が連れ去られる事があるのか。そして、僕はどうやって助けに行くのかと。

そう考えているうちに、ふと、少し遠くに何かが見えた。こちらに向かってきている。

あぁ、なんだ、猫かと僕は口にだして言った。

僕の足元まで来ると、猫は当たり前かのように眠りについた。どこにでもいるような見かけるような普通の猫だ。濃い茶色の毛に黒の縞模様。

ただ一つ違うのは表情だ。どう表現すればいいだろう、勇ましいとでも言うのだろうか。何か自分のすべき事を分かっているというような面持ちだ。

彼を一通り観察し終えると僕はまた自分の精神と向き合い、考えこんだ。

すると、ほどなく、僕の意識の中に、イメージというか映像というかそういうものが流れこんできた。このイメージの正体に気付いたのは、しばらくイメージを見続けてからだった。

それは、彼の、僕の傍で眠っている猫のものだった。

それが彼の夢なのか、それとも記憶なのかはその時は分からなかったが、そんなことはどうでもよくなるくらい鮮明なものだった。

意識に流れこんでくる映像というのは、見ているというよりは、自分もそこに存在しているかのように感じられた。



                     ○



彼にはパートナーがいた。パートナーであると同時に恋人同士だった。

彼らは常に一緒にいた。そんなことが分かるようなシーンから始まった。


彼らの一日は朝早くから始まる。

起きるとすぐに気の良いおじいさんの家に向かい食事をもらう。食べ終わると一言礼を言い、散歩に出かける。路地や土手、野原や商店街を一通り歩き、腹が減れば気の利く人間を探す。もし見つからなければごみ箱をあさることもあった。

夜になれば適当な寝床を探し、二人して眠る。雨が降れば川に架かる橋の下に住む、ホームレスの男性のダンボールハウスに泊めてもらった。

彼らは何年もこんな暮らしをしていた。これが日常だった。

彼らはそれで幸せだった。一緒にいられればどんな暮らしだって良かった。


しかし、ある日、日常は日常でなくなった。

彼がパン屋のゴミ箱をあさっている時だ。

彼は決して彼女にゴミをあさるような真似はさせなかったので、彼女はいつものように傍で待っていた。そのはずだった。めぼしい食べ物を見つけ、彼女に与えようと目を向けると、彼女は横たわっていた。呼吸はとても荒く、体は小刻みに震えていた。彼女は病に冒されていたのだ。

猫にだけ感染するウイルス性の病だった。

しかし、彼にそんなことは知る由もなかった。ただ、本能的に彼女が危険なことだけ理解できた。

彼はひどく混乱した。その結果、彼はパン屋の主人に助けを求めた。

それが大きな間違いだった。

主人が見たその猫は、ただでさえ店のゴミをあさっていたのに、ウイルス性の病に感染しているときた。猫にだけ感染するウイルスだが、いつ人間にも感染するようにウイルスが変化するか分からない。主人はすぐに保健所に連絡を入れ、彼女をゴミ箱の中に閉じ込めた。

彼はどうすることもできなかった。いや、何度も奪い返そうと試みた。しかし、どうにもならなかった。

駆け付けた保健所の人間達は、ウイルスから身を守る白い防護服を着ていた。それは、午後の太陽に照らされ輝いて見え、まるで神の使いのように思えた。しかし、彼はこの人間達がどういう存在かを知っていた。

彼女はいってしまった。



                     ○



それからの彼は、ほとんど動くことはなかった。もう彼には自分が生きてる意味すら分からなかった。

自分の生きてる意味を知っているものなんていないのかもしれないが、彼は自分が彼女のために存在していることを知っていた。

神や自然の摂理、人間にとってはどうあれ、彼と、そして彼女にとっては確かにそうだった。

彼はずっとどうすればいいか迷っていた。

助けに行くべきなのか、それとも奇跡を願い、彼女の帰りを待つか、諦めるか…。

後の二つは彼にとって選択できるはずもなかった。しかし、最初の一つも選択できない理由があった。

彼は彼女と出会った日からの記憶を思い出していた。その記憶の旅の中で一つの会話を見つけた。

お互いをパートナーと認めて間もなくの彼が彼女の会話。それはとてもありきたりな会話で、付き合い始めのカップルならほとんどがしそうなものだった。

彼はどんなことがあっても彼女を守ると言った。

ほとんどのカップルとの唯一の違いは彼女がそれを断ったことだ。

彼女はそんなことは絶対にやめてほしいと言った。彼が傷付くのは自分が傷付くことより辛いのだと言う。それが、彼女がたった一つ彼に望んだことだった。彼女はそれ以外、彼に何かを望んだことがなかった。

この彼女の望みが引っ掛かっていた。

もちろん彼も彼女に何も望まなかった。

あぁ、そうだ、俺も何も望んだことがない。

そう思った時、彼は立ち上がった。

そうだ、俺も一つだけ彼女に望もう。

彼女の望みを受け入れないという望みを。理不尽なことぐらい彼には分かっていた。だが、彼女を助けに行く理由をずっと探していた彼は、これに飛び付くしかなかったのだ。

すまない、これ以上は本当に何も望まない。だから、この望みだけは…これからも君といたいというこの望みだけは…。

彼の目には意思が漲った。体には力が戻り神経は緊張した。

          さぁ、行こう。



                     ○



僕が気がつくと、そこにはもう猫はいなかった。ただ確実にそこにいたという形跡だけは確認できた。

空気は澄んでいて、より冷たくなっている。

車が一台通った。エンジンの音が通り過ぎさってしまうと一段と静寂が強く感じられた。

そうか、彼は僕に伝えたかったんだ。彼の物語を。誰にも知られることはない勇敢な猫の話を。そして、最後の、いや、最期の決意表明をしにきたんだ。

僕は少しもありきたりだなんて思わなかった。この物語は、彼にとってたった一つの、彼だけの物語だ。ありきたりなわけがない。

彼のイメージは、僕に、前に見た映画の『ロード・オブ・ザ・リング』を思い出させた。

サウロン軍との最後の闘いの直前、敵と対峙した自軍に向かってアラゴルンはこう叫んだ。
「我々が闘いに負ければ世界は滅びるだろう。だが、今日ではない。恐れるな。立ち向かえ。」と。


そうか、そうだったんだ。分かったよ。

君がこの公園を、そして、僕を選んだことを。僕にはよく分かったよ。

僕はこの公園に考えごとをしにきたんじゃない。僕もこの公園に決意表明をしにきたんだ。

僕も、もう迷わない。逃げない。立ち向かうんだ。君のように。

ありがとう。本当にありがとう。


僕は決意した。



時刻は夜中の午前3時。

場所は夜の公園で。



                     ○
愛する彼女の真の願いは、彼が幸せになること。
助ける思いに奮い立つ勇気を得たなら、彼はすでに彼女の願いも叶えている。
彼自身の深い心が傷付かないという行動によって、彼女の願いも叶えたのではないでしょうか。
自分より、他を優先する。そんな深いエネルギーとつながる物語を感じました。

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